BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

「結局いるんですよね。白馬に」──美谷島慎が語る、世界に誇る山の奥深さ。【創刊10周年特別企画】ISSUE 11『JAPOW PRIDE』

2026.10.22

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長野 / 白馬

※2020年に綴った言葉を一部編集して掲載
 
 

100年の歴史を誇るバックカントリーと世界的リゾートの融合

北アルプスの北部、日本海に面した親不知から白馬岳、五竜岳、鹿島槍岳などが連なる後立山連峰の北の代表格、白馬連峰。白馬三山と呼ばれる先述の白馬岳(2,932m)、杓子岳(2,812m)、白馬鑓ヶ岳(2,903m)が白馬のシンボルとしてそびえており、大町市、白馬村、小谷村と南北にわたってゲレンデが点在している。山々の標高差も地形も異なるため、それぞれに個性を放つ10のリゾートが連携してHAKUBA VALLEYを形成。大型スノーリゾートとして新たなる価値を提案しているのだ。
 
1998年の長野五輪開催地として世界中にその名が知れ渡り、こうしたブランディングが功を奏し、近年は訪日外国人で溢れていることは周知の事実だろう。良質のパウダースノーがスティープな斜面に降り積もり、ハイクオリティを誇るスノーパークを有し、横幅が1,000m超の大緩斜面があるなど、その懐の深さが魅力だ。
 
また、日本のバックカントリーシーンを牽引しているガイドを多数輩出してきたエリアであるという事実からもわかるとおり、白馬の山々では幅広いバックカントリーユーザーを受け入れている。さらに、3,000m級の北アルプスが織り成すスティープラインは、多くの外国人スノーボーダーの憧れの地であり、世界トップクラスのプロスノーボーダーたちをも魅了するポテンシャルを秘める。ジェレミー・ジョーンズ主演『DEEPER』やトラビス・ライス主演『THE FOURTH PHASE』の舞台のひとつとして白馬が選ばれていることが、それを証明している。
 
その歴史を紐解けば、1919年(大正8年)に細野(現在の八方)山案内人25人で「白馬岳登山案内者組合」が設立され、その後、1929年(昭和4年)に12人の山案内人で「細野山岳スキークラブ」を結成。当時からバックカントリースキーが盛んに行われていたわけだ。
 
戦後、交通事情や食料事情に苦しめられていた白馬の人々は、起死回生とばかりに地域の人々が汗を流してコース造りに励み、八方尾根にゲレンデを完成させた。これを契機に白馬の名が全国区となることに。
 
100年の歴史を誇る白馬のバックカントリー、そして、オリンピックを経て世界的なスノーリゾートへと発展を遂げたHAKUBA VALLEY。この地を長きにわたり滑り込んできたスノーボーダーにしか語れない白馬の本質、少しだけ覗いてみたい。
 
 

“世界”を股にかける男
美谷島 慎

日本屈指のマウンテンフリースタイラーという称号がふさわしい。かのトラビス・ライスが認める男、美谷島慎。その卓越した滑りは、地元・長野が誇る雄大なアルプス・白馬で磨き上げられてきたことは言うまでもない。今、世界中から注目されるビッグマウンテンエリアについて、彼のこれまでのスノーライフから紐解いていきたい。
 

 

地球の気候に感覚を研ぎ澄ませ、仲間と楽しく。

「住んでいるのは長野市で、滑り始めたのは長野市界隈のゲレンデ。そこからいろんな場所を滑ってきて、最終的にというか、一番ハマってるのが白馬です」
 
海外の雪山を飛び回っているイメージだが、美谷島は24年ものシーズンを白馬で滑り続けている。この地は美谷島にとっての最終目的地だと、以前インタビュー記事で読んだことがあった。
 
あれから10年近く経った今も、彼の欲望は白馬で満たされているのだろうか。
 
「ほかの山にも行くんですけど、メインは白馬ですね。やっぱり山が大きいから、奥が深くて広い。海外ライダーが来て撮る機会も多いし。自分が滑りたい場所として白馬が一番というのが続いてますね」
 
毎年滑り続けていても飽きないそう。白馬の山の表も裏も知り尽くしている美谷島だが、まだまだ開拓の楽しみがあるのだと話す。
 
「やっぱり標高差が大きい山々だからですよね。一本のランの長さ、そして選べるラインの数がハンパじゃない」
 
南から五竜、八方、栂池の順にゲレンデが連なっている。さらに、山頂から山麓までの標高差が大きいため、雪質や地形が変化する面白さが詰まっているのだ。
 
「バリエーションが豊富だから味わえる自由さ、がいいです」
 
標高差があるからこそ山頂から山麓をつなぐラインのバリエーションは多い。それは、その時々により変化する美谷島の趣味嗜好を満たしてくれるのだ。
 
「長い沢を滑りたい、とか最近あの辺が好き、とか。自由に滑るところを選んでいます」
 
美谷島が求める多様なニーズに応えられるポテンシャルを持ち合わせているということだ。
 
また雪質においても、小谷から大町にかけて大きな違いがあるそうだ。
 
「コルチナや栂池高原のゲレンデは標高が低く海がより近いということもあって湿気が多い雪だし、鹿島槍や八方の上に行けば寒くてキュッと音が鳴るような雪質だったり。ひとつの谷の中で湿気た雪がたくさん積もるエリアから、内陸のドライな雪の急斜面まで選べるっていうのは、すごくいいところ」
 
そのうえで標高差が大きいため、より多様な雪質を楽しめるのも大きな魅力なのだ。
 
「白馬にしてもどこにしても、風の影響は大きく受けるし、雪崩については慎重にならないといけないですね。無茶してケガした場合の搬送方法も頭に入れておかないといけない」
 
雪質のみならず、ゲレンデごとに変わる地形や雰囲気を「味が違う」と美谷島は表現する。
 
「コルチナはチェアリフトだけでも独特の世界観があって、栂池はゴンドラで長い距離が滑れるなど、すべての山に個性があるから」
 
だからこそ、こうだ。
 
「コルチナから栂池、岩岳、乗鞍、それに八方、五竜、47、鹿島槍と全部のゲレンデに行きますね」
 
「同じ山脈の南北にかけてゲレンデが立ち並んでいるのが、白馬最大の特徴じゃないかな」
 
海外クルーとの撮影も多く、時にガイドとしても活躍する。
 
「自分も頻繁に海外へ行く分、日本に来るゲストの気持ちがよくわかるから。面白いですね、おもてなしするのも」
 
そのおもてなしについて「オレの味で」と説明する美谷島のガイドは、海外ライダーにとって重要な役割だ。その時の雪次第で標高を選び、彼らが求める場所を選び案内するのだ。
 
「春になって雪が安定してくると、真冬ではリスクが高すぎるラインにも行けるようになる」
 
時期によって変化する山の状況をよく把握している美谷島は、季節によっての危険性も考えながら行動に移している。若手ライダーにはジャンプポイントを、スティープな斜面を望むライダーには白馬ならではの壮大なロケーションへと、彼が各ライダーの嗜好に合わせて対応できるのは、これまで培ってきた自身のライディングスタイルが影響している。
 
ビッグマウンテンライダーとしての存在感の大きさに影を潜めているが、美谷島はかつてスノーボードクロスの世界でも名を馳せていた。ストリートレールをはじめ、フリースタイル色が強い独特の雰囲気を持つオールラウンドスノーボーダーだったのだ。
 
「今は自分たち日本人スノーボーダー全体の経験値が上がってきて、バックカントリーはより身近になってきていますよね。それで八方でBCデビュー!とはいきなりリスクがデカいと思います。まずはローカルマウンテンで、リスクの少ないところから。急いで取り合うものでもないし、自分たちの時間でじっくりやれたほうが、全然質のいい時間が過ごせると思います」
 
様々な時代を白馬で経験してきたからこその歴史が、今の美谷島を作っているのだと改めて気づいた。
 
彼のスノーボードライフにとって、白馬は以前より変わらず重要なエリア。
 
「結局いるんですよね。白馬に」
 
シーズン中はいい雪を求めて海外へ遠征することも多いが、ここ10年以上、もっともいい時期である1月の白馬は外さないという。そうした考えの根底には、世界中の降雪のメカニズムがある。海外のようにピーク時期が数ヶ月間と長いと、当然その間にはコンディションの波がある。
 
「日本の旬は短いけど、その分確実に当てやすい」
 
海外の大手プロダクションが次々と白馬を舞台のひとつとして選ぶようになり、日本のパウダーシーンが世界で大流行するキッカケとなったようにも感じられるが。
 
「JAPOWブームはムービーだけの影響じゃない。あくまでもムーブメントのひとつ」だと、美谷島は言い切る。
 
「世界のホットスポットとして、ラストフロンティアじゃないけど……実は日本ってすごいんだよという時代の流れがありましたから。トラビスのようにいろんな情報を持ってリサーチするライダーは、日本はもちろんもっとマニアックなところの情報も共有している。自分もまだ行きたいところがたくさんある」
 
「地球の気候に感覚を研ぎ澄ませている」──北米、南米、北欧と滑ってきた美谷島がずっとハマっている山が、白馬である。それでも本人は。
 
「いい調子で、いい仲間と、楽しく滑れることが何よりも大切だと思う」
 
世界的にその地位を確立したのには確たる根拠があるのだと、美谷島の言葉と歴史により改めて実感することとなった。

edit + text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
interview + text: Yukie Ueda

 
 
CONTENTS
▶INTRODUCTION|はじめに
▶01|北海道 / 札幌 安藤健次インタビュー
▶02|北海道 / 道北 佐藤秀平インタビュー
▶03|北海道 / ニセコ 渡辺大介インタビュー
▶04|東北 / 北東北 杉本幸士インタビュー
▶05|東北 / 南東北 松浦広樹インタビュー
▶06|群馬 / 利根沼田 中山悠也インタビュー
▶07|新潟 / 魚沼 関口 敬インタビュー
▶08|新潟 / 妙高 小西隆文インタビュー
▶09|長野 / 白馬 美谷島 慎インタビュー
▷10|長野 / 北信 中山二郎インタビュー
▷11|岐阜 / 飛騨 太田宜孝インタビュー
▷12|西日本 / 近畿・中国 中尾正明インタビュー
▷OUTRO|JAPOW PRIDEからJAPOW FROM___へ。
 
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 11 「JAPOW PRIDE ──ニッポンの雪と山と文化を知る──」

 
北海道・ニセコや長野・白馬を中心に大挙して押し寄せている外国人は、なぜ日本の雪山にこだわり続けているのか。それは、ここまで多くの人々が日常生活しているエリアに雪が大量に降る国がないから。米アラスカの僻地やカナダBC州の山奥には、もちろん大量に極上パウダースノーが降り注ぐ。しかし、それとはワケが違う。街があり、その近くに多くのゲレンデが点在し、ハイクオリティなパウダースノーが堪能できる。しかも、食事も温泉も人も最高。さらに言えば、リフト券が格安だ。これらが日本が世界に誇るべき価値なのである。これを言い換えれば、僕たちは世界中の雪を愛する人々が羨む環境に住んでいるということ。だからこそ、ニッポンの雪と山と文化を改めて知ってほしく、この一冊を編むことにした。世界一の豪雪大国に住むスノーボーダーの胸に、“JAPOW PRIDE”を刻みこんでもらいたい。
 

 
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