BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

なぜ、国内外の雪山を巡った中山悠也は群馬を選んだのか。川を知る男が語る、雪山を冒険する楽しさ【創刊10周年特別企画】ISSUE 11「JAPOW PRIDE」

2026.10.16

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06
群馬 / 利根沼田

※2020年に綴った言葉をそのまま掲載
※本文に登場する「谷川岳天神平」は、2024-25シーズンより「Mt. T by 星野リゾート」として運営されています
 
 

マウンテン&パークライディングが密接に絡み合う地

関越自動車道・練馬ICから車を走らせること約2時間。国境の長いトンネルを抜けなくても、関東地方とは思えないほどの降雪に恵まれたスノーエリアが群馬にある。東京方面から見て関越トンネル手前の最後の下り口である水上IC周辺と、その15kmほど手前の沼田IC周辺の2つの地域だ。
 
群馬と新潟の県境にある三国山脈の中心である谷川岳。日本百名山のひとつであり、まさに水上のシンボルとしてそびえ立つ。標高1,977mを誇り、周囲の万太郎山、仙ノ倉山などを含めた谷川連峰はバックカントリーエリアとして周知されている。
 
天神平のリフトを利用してバックカントリーへのアクセスが可能。しかし、一般スノーボーダーと区別するために所定のゲートからボードを脱いだ状態で出入りすることを原則とするなど、事故を未然に防ぐための様々なローカルルールが制定されているのだ。
 
と、谷川岳の話が中心になってしまったが、宝台樹や奥利根スノーパークなど、水上エリアのほとんどのローカルゲレンデが良質な雪の恩恵にあずかっているのだ。
 
そして、より首都圏に近いにも関わらず多くのゲレンデを有することから、沼田ICで下車するスノーボーダーは多い。インターからもっとも近い川場や、やや距離はあるものの片品エリアにまで足を伸ばせばその選択肢も広がる。さらに言えば、内陸に位置するため標高が高い山間部の雪は想像以上にいいのだ。
 
その昔、尾瀬戸倉で国際大会が開催されるなど、このエリアはフリースタイルの聖地だった。余談だが、2000年に同ゲレンデで開催されたアマチュアのハーフパイプ大会には男子だけで約800人のエントリーがあり、4日間もかけて行われた。それほど熱狂していた時代であり、その受け皿が群馬にあったわけだ。
 
現在ではハーフパイプは姿を消したが、これまでの潮流を踏襲してか丸沼高原など、このエリアはスノーパークも人気である。
 
かつて、前出の国際大会に出場していた故クレイグ・ケリーやテリエ・ハーカンセンは大会を終えると尾瀬を後にして、谷川岳のバックカントリーを滑っていた。このように、それぞれのエリアが密接に関わり、バックカントリーシーンとフリースタイルシーンとが有機的に交わるエリアなのである。
 
 

“山”と“川”を知る男
中山悠也

かつては SAJ(全日本スキー連盟)に所属してハーフパイプのW杯を転戦し、現在は群馬に拠点を移してフリーライディングを中心に活動している中山悠也。右も左もわからないまま群馬・沼田に定住して5年。ローカルの教えをこうむり、コンディションに合わせて水上から片品まで動き回る様は、まさに首都圏スノーボーダーの鏡と言える。
 

 

移住者だからこそ、冒険して得たリアルな情報。

冬は新潟でスノーボーディング、夏は静岡でラフティングガイドと、ふたつの土地を往来するデュアルライフを続けてきた中山悠也は5年前、双方を実現できる水上エリアに移住した。ラフティングガイドを生業としている中山は静岡出身なのだが、スノーボードにのめり込むことになったキッカケが一風変わっている。
 
「父親が人工降雪機の会社で働いていて」
 
その人工雪を利用して、なんとゴルフ場のスロープにパークを造っていたそうだ。そのゴルフ場とは、中山の地元にある朝霧ジャンボリー。「親父も働いていたし庭みたいなところだった」とそこは彼の練習場となり、夢中になってライディングに明け暮れていた。以前、水上エリアの空き地にDIYパークを造っていたことがあったが、こうした経験が原点にあったからなのかもしれない。
 
「高校を卒業してからずっとパイプをやってて、オリンピックに出たいなと思って。ナショナルチームに入りW杯を転戦してたんだけど、トリノ五輪に出れなくて(オリンピックを)目指すのはやめました」
 
そこから滑るフィールドを変え、ライディングの幅を広げた。妙高の地で仲間たちと滑り込み、そして、地元でラフティングガイドを始め、二足のわらじで数シーズンを過ごした。
 
その後子宝に恵まれ、家族で半年ごとに引っ越すという生活を繰り返していたのだが、拠点をひとつにするべく選んだ地が群馬だった。パウダーライディングをメインに活動していた中山にとって、名峰・谷川岳を筆頭にハードな山々が点在する群馬は理想の地でもあった。
 
「移住してみたら、練習でスイスに行ったときに出会ったメンバーが尾瀬戸倉や丸沼高原にいたり、昔パイプをやってた人がいて繋がったりして」
 
「水上方面の山は全然知らなかったんですが、人づてにいろんなことを教えてもらって自分でも開拓できるようになり、今はその魅力にハマっています」
 
誰かに連れて行ってもらったポイントには、後にひとりで何度も足を運び、その特徴や地形を調べあげた。
 
「今までやってきたことの集大成として、オールジャンルで楽しめる最高の場所を見つけたなと思います」
 
想像していた以上に深い魅力が、群馬にはあったということだ。このエリアは首都圏からのアクセスがよく、谷川岳のような上級者を熱狂させる山もあれば、初心者や家族連れが安心して楽しめるゲレンデもある。幅広いバリエーションが魅力なのだが、中山はどのようにフィールドを選んでいるのだろう。
 
「水上方面と片品方面でそれぞれいいときがあるので、天気図を見ながらまずはどっち方面に行くか決めますね」
 
「一番狙いたいのは天神平から谷川岳。魅力的でヤバいところなので、天神は常に頭に入れています」
 
標高1,500mを誇る谷川岳天神平は、降り積もるその上質なパウダースノーはもちろんのこと、斜度のある開けたバーンにアクセスしやすいため、コアなスノーボーダーからの根強い人気を持つ。
 
「その手前にあるホワイトバレーは裏山も面白いし、ちょっとハイクすればラフティングのベースがあるほうに滑り下りれるんです」
 
知る人ぞ知るラインなのだろう。特に谷川岳は風の影響を受けるため、目的地を急遽変更できる選択肢がある点もこのエリアの懐の深さである。
 
「ロングランをしたいときは宝台樹。ゲレンデ内の地形が沢状になっていて面白く、まだ穴場なので競争率がそれほどでもない」
 
水上宝台樹の地形の面白さは、この地を知るプロスノーボーダーたちの間でも定評がある。
 
「奥利根はナイターでパウダーが当たれば最高」
 
首都圏から訪れるスノーボーダーが多い奥利根スノーパークでは、ナイターだけでなく早朝営業も行っているので、朝晩に湿気の飛んだ軽いパウダーを堪能することができるのだ。
 
沼田から見て北に天神平や宝台樹、奥利根などがある水上エリアと、東に丸沼高原や尾瀬戸倉、オグナほたかなどがある片品エリアへと分かれている。冬型の気圧配置では双方のエリアにまとまった雪を降らせるが、南岸低気圧が入ってくると特に片品方面の山が影響を受けるそうだ。
 
「太平洋側から低気圧が入ってくると丸沼に行きますね。標高が高いので、けっこうドライなパウダーが味わえます」
 
丸沼高原は充実したパークを完備していて、フリーライディングをするにも地形がすごく面白いのだそうだ。
 
「午前中は丸沼で滑って、沼田へ戻る途中に尾瀬戸倉に寄って仲間とセッションしてから帰る、なんてことも日常的にあります」
 
それぞれのエリアには近距離でいくつものゲレンデがあるため、双方からコンディションのいいエリアを選んだうえで、さらに選択肢があるということである。
 
「尾瀬岩鞍は急斜面が豊富なのに、パウダーの競争率が低い穴場です。武尊方面に行くときはバックカントリーが中心ですね。オグナほたかから上がって、武尊山の裏を滑ったり」
 
標高2,000mを超える武尊山の山麓には複数のゲレンデがあり、川場もそのひとつである。
 
「川場のゲレンデからアクセスできる剣ヶ峰からは360°見渡せて、尾瀬や水上のほうまで見えるんです。群馬は山全体が繋がっているような入り組んだ地形なので、冒険するには最高ですね」
 
アクセスするゲレンデの選択肢がありすぎて困るのだと、嬉しそうに話してくれた。
 
「北海道だと軽すぎるので、踏んでいなくても雪が舞い上がるんですよ。妙高の雪は水分を含んでるうえに、量が多い分さらに重く感じるという特徴があります。群馬エリアの場合、量はさほど多くはないけど、雪質がよくて踏み応えもあるんです」
 
「水上も片品も内陸で日本海側からの距離が同じくらいだと思うので、どちらのエリアも雪の軽さがちょうどいいのかもしれませんね」
 
軽すぎず重すぎず、ターンしていて気持ちいい雪なのだと中山は分析する。
 
家族が住みやすく、首都圏や実家にも移動しやすい場所。春夏秋冬で山に関わる仕事ができることがいいそうだ。夏のラフティングの仕事が冬の雪山に活かされることもあり、山と川の位置を知ることでいろんな地理を把握できるそうだ。
 
「水脈を知ることで、この川はあの山から流れていて、あの山は滑れるんだって人に伝えることもできて」
 
川の知識があれば山がさらに面白くなるのだと、地図を指差しながら話す中山の目は、間違いなく群馬という地に魅了されていた。

edit + text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
interview + text: Yukie Ueda

 
 
CONTENTS
▶INTRODUCTION|はじめに
▶01|北海道 / 札幌 安藤健次インタビュー
▶02|北海道 / 道北 佐藤秀平インタビュー
▶03|北海道 / ニセコ 渡辺大介インタビュー
▶04|東北 / 北東北 杉本幸士インタビュー
▶05|東北 / 南東北 松浦広樹インタビュー
▶06|群馬 / 利根沼田 中山悠也インタビュー
▷07|新潟 / 魚沼 関口 敬インタビュー
▷08|新潟 / 妙高 小西隆文インタビュー
▷09|長野 / 白馬 美谷島 慎インタビュー
▷10|長野 / 北信 中山二郎インタビュー
▷11|岐阜 / 飛騨 太田宜孝インタビュー
▷12|西日本 / 近畿・中国 中尾正明インタビュー
▷OUTRO|JAPOW PRIDEからJAPOW FROM___へ。
 
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 11 「JAPOW PRIDE ──ニッポンの雪と山と文化を知る──」

 
北海道・ニセコや長野・白馬を中心に大挙して押し寄せている外国人は、なぜ日本の雪山にこだわり続けているのか。それは、ここまで多くの人々が日常生活しているエリアに雪が大量に降る国がないから。米アラスカの僻地やカナダBC州の山奥には、もちろん大量に極上パウダースノーが降り注ぐ。しかし、それとはワケが違う。街があり、その近くに多くのゲレンデが点在し、ハイクオリティなパウダースノーが堪能できる。しかも、食事も温泉も人も最高。さらに言えば、リフト券が格安だ。これらが日本が世界に誇るべき価値なのである。これを言い換えれば、僕たちは世界中の雪を愛する人々が羨む環境に住んでいるということ。だからこそ、ニッポンの雪と山と文化を改めて知ってほしく、この一冊を編むことにした。世界一の豪雪大国に住むスノーボーダーの胸に、“JAPOW PRIDE”を刻みこんでもらいたい。
 

 
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