FEATURE
カッコいいだけじゃ、シーンは動かせない。戸田真人が目指すムービースターのその先【創刊10周年特別企画】ISSUE 10「國母和宏が命を捧げる映像表現の世界」
2026.09.30
※2019年に綴った言葉をそのまま掲載
生粋のムービースター
戸田真人
プロスノーボーダーとして映像表現の世界に生きる兄を持ち、その仲間たちに囲まれた少年時代を過ごす。類まれなるライディングセンスとスノーボードに対する情熱を持ちながらも、それが競技に注がれることはなく、常に“カッコつける”ために滑り続けてきた。そこで形成された価値観は、自己表現の世界で生きていくスノーボーダーにとってはかけがえのないもの。カズのお眼鏡にかない出演を果たしたSTONPの作品を契機に、ムービースター・戸田真人が誕生した。
幼い頃から夢見たムービースターへの一歩
もちろん聖輝(真人の兄)の存在は大きいんですけど、(島田)聡くん(SCLOVER結成メンバーのひとり)の影響が強いですね。7歳くらいから(スノーヴァ)溝の口に通ってて、その頃から「こういうのがカッケーんだよ」っていろいろ教えてもらってました。それから数年後、溝の口で行われたジブの大会で(小川)凌稀と出会ったんです。
それこそ、聡くんの教えが自分のライディングスタイルの礎になってます。「手が肩よりも上がったらダセー」って教えられてて、当時はよくわからないままそれを意識しながらずっとやってたんですよね。もう意識はしてないですけど、それが今でもブレないスタイルに対する価値観です。
そして小学校の高学年くらいからCK4(VIDEO MAGAZINE)に、中学1年か2年くらいのときにはSCLOVERのキッズとしてビデオに出させてもらうようになったんです。スノーボード以外も楽しんでいる聡くんたちのライフスタイルがとにかくカッコよかったから、ああいう風になりたいって気持ちはありましたね。すでに聖輝はプロとしてやってたので、まだ全然技術はなかったんですけど「カッコよさじゃ負けていない。聖輝を超えてやる!」ってずっと言ってました(笑)。プロになりたいとか有名になるぞっていうよりも、聖輝の周りにはライダーが多かったから、自然とその輪に入りたいっていう気持ちと、その人たちに追いつくぞって感じでした。
ずっと(新潟)石打丸山にコモってパークを中心に滑ってる頃からDIRTY PIMP(以下DP)にも出させてもらうようになってたんですけど、『STONP OR DIE 2』のときになぜかカズくんが試写会に連れ回してくれたんです。オレ出てないんですけど(笑)
『STONP OR DIE 2』のエンディングでテレビをボコボコにするシーンがあるじゃないですか。実家が鉄筋屋なので、カズくんが鉄の棒を取りに来るって話になったんですけど、そのときに家の前で話してたときに「オレたちは次のシーズン休むから任せた」って声をかけてもらったんです。
すでにSTONPに出てた聖輝に対して、実のところ心のなかでは「スゲー」って思ってて。もともと聖輝を超えたいと思ってやってたし、DPとCK4で活動してたので、STONPに出るなんて考えたこともなかったんですけど、迷いはありませんでした。「オレ出れるんだ」って。うれしかったですね。
『STONP OR DIE 3』の撮影が初参加だったんですけど、それがキッカケでストリートで滑るようになったんです。CK4のときに1回だけストリートのダウンレールをやったことがあっただけで。1シーズン丸々かけてストリートで撮影するようになって、環境が一気にガラッと変わりました。
その当時は自分の滑りを魅せるというよりも、どこまでやれるのか手探りでした。表現するというよりも挑戦する感じ。でもそれがカタチになると、メディアへの露出も増えていきました。ほかのプロダクションがどうこうって意味ではなくて、やっぱりカズくんのようなビッグネームがいると観てもらえる機会が多いじゃないですか。それがキッカケでライダーとしての活動がしっかりできるようになりましたね。
STONPに参加してすぐに、カズくんは人を惹きつける力がある人だなって感じました。そして、カズくんの行動に業界がついてくるんだなって。自分も最終的には海外のムービーにしっかり出るのが小さい頃からの目標だし、カッコいいライダーとして世界でも名前が挙がるようなライダーを目指してるから、それができてるカズくんのすごさをリアルに実感しました。
シーンを動かせる存在になりたい
2015年の『STONP OR DIE』から凌稀も加わって、それで一旦STONPとしての撮影活動は休止するんですけど、その後はDPでストリートをメインに動いていました。2016-17シーズンには、凌稀と一緒にADIDASの海外クルーと撮影する機会があって、彼らに比べると時間的にルーズな撮影をしてる部分があったことに気づかされたりと、いろいろ学ぶことができたような気がします。
でも、スノーボードは技術よりもカッコよさが大事だと思っているので、自分の滑りが海外のヤツらに負けてるつもりはなかったですね。本音を言っちゃえば自分のスタイルはあまり好きじゃないけど(笑)、カッコつけてる部分では負けない自信がある。それは海外のライダーに限らず、小さい頃から聖輝に対してもそう思ってやってきました。ただ日本人は世界のシーンで見てもらえる機会が少ないだけで、海外にはないスタイルを持ってる。だから、見てもらえさえすればその舞台に上がっていけるって昔から思ってました。
それで、2017-18シーズンに『OG CHEESE』の話をもらって。最初は仲間を入れようかって話も出たんですけど、最終的には凌稀とふたりでやることにしました。DPとは別で1ヶ月間撮影して、それぞれでパートを残すというシーズンだったから大変だったんですけど、ADIDASクルーとの撮影経験を活かしてスケジュールは詰め込みましたね。
そのなかでも、凌稀とオレは常にいろんな場面で勝負してるんですよ。今のレベルだとカッコよさだけでメディアに出ていけるような甘い世界じゃないと思っているので、やっぱり技術も磨かないといけない。そうした部分で競い合えるレベルにずっといるのが凌稀だし、そのうえでカッコいいライダーだと思えるのも彼なんです。もちろん、凌稀よりもいいパートを残すぞって気持ちは常にあります。あからさまにそうした気持ちを出したりはしないけど、きっと向こうにもあるだろうし、お互いに向上心は強いので、ずっといい関係でできてると思います。その集大成が『OG CHEESE』ですね。
そして今作の『HIDANE』では、凌稀とオレのパートになってます。今回の撮影は3月半ばくらいから始まったんですけど、4月前半にケガしちゃって……。シーズン前半にずっとロケハンをしてて、デカいスポットは後半に残してたのに、そこに突っ込めなかったのは悔いてますね。でも、DPの撮影中に何日か来てもらったカットも入ってるので、自分の滑り自体に納得はいってないけど、いいパートを作ってもらいました。これも経験ですね。
繰り返しになっちゃうけど、世界レベルで好きなライダーやカッコいいライダーとして名前を挙げてもらえる存在になりたいんです。それを明確にするためにも、カズくんみたいに結果を残して影響力を持たないと意味がないと思ってます。小さい頃からスノーボードしかやってなくて、それしか知らないからこそ、それで家族に恩返しがしたいから。だからこそ、ネクストステージを目指しています。
それは、シーンを動かせる存在になること。それくらいにならないとすぐに消えちゃうと思うから。カズくんを見ていると、なおさらそう感じます。
以前までは日本の業界で取り上げられなくても、自分たちのスタイルを貫いてるほうがカッコいいと思ってる時期もあったけど、それだけじゃダメだって気づいたんです。だからこそ、スノーボード業界にとどまらずに、ほかのメディアにも出て注目してもらえるような動きもしていきたいと思ってます。もちろん、滑りでも魅せて有名になりたいですね。
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
CONTENTS
▶EPISODE 1 燃えるような何かを求めて
▶EPISODE 2 KAMIKAZUが胸に刻んだ新たな決意
▶EPISODE 3 世界一のスノーボーダーとして後世に伝えていく文化
▶EPISODE 4 夢や希望にあふれた新しいシーンに塗り替える
▶短編インタビュー 吉田啓介 遅咲きのムービースター
▶短編インタビュー 高橋龍正 孤高のムービースター
▶EPISODE 5 “立つかヤラれるか”の精神を再び燃え上がらせる火種
▶短編インタビュー 工藤洸平 センスが光るムービースター
▶短編インタビュー 小川凌稀 本場仕込みのムービースター
▶短編インタビュー 戸田真人 生粋のムービースター
▷短編インタビュー 長谷川 篤 絶対的な記録にこだわるムービースター
▷EPISODE 6 國母和宏という生き様
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 10 「KAZU KOKUBO, THE MOVIE STAR ──國母和宏が命を捧げる映像表現の世界──」
2016年、スノーボード界のアカデミー賞に位置づけられる授賞式において最優秀ビデオパート賞を獲得。2018年には、自身が主演・監督を務めた作品が最優秀ムービー賞に選ばれ、さらに最優秀ライダー賞の栄冠に輝いた。弊誌創刊号で綴った強すぎる信念を貫き通した結果、世界一に登り詰めたのだ。「すごいロケーションのラインを滑るとき、人生がかかってると感じる。死ぬかもしれないわけだし」。雪に覆われた急峻な山々を華麗に舞い、大雪原を自由自在に滑り倒す。死と隣り合わせの状況に身を置いてまで伝えたいものとは──。國母和宏が命を捧げる映像表現の世界には、私たちの心を奮い立たせる想いが込められていた。

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