BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

カズ自らが手がける映像作品で感じた、リアルスノーボードのさらなる広がり【創刊10周年特別企画】ISSUE 10「國母和宏が命を捧げる映像表現の世界」〈第2章〉

2026.09.15

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前章では、VIDEO PART OF THE YEARを日本人として初めて受賞した國母和宏が、それでも立ち止まることなく、“燃えるような何か”を求め続ける姿を追った。
 
そのカズのもとに舞い込んできたのが、米TRANSWORLD SNOWBOARDINGからのシグネチャームービー制作のオファーだった。主演だけではない。カメラマンも、出演ライダーも、ムービーの構成もすべて自由。自らがカッコいいと思うスノーボードの映像だけで一本の作品を創る。
 
こうして動き出した『KAMIKAZU』は、やがてカズ自身のスノーボーダーとしてのあり方をも変えることになる。

 
※2019年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 
EPISODE 2

KAMIKAZUが胸に刻んだ新たな決意

2004年2月から2016年3月まで12年以上に渡り、筆者はTRANSWORLD SNOWBOARDING誌の日本版(現在は日米ともに休刊)に従事していたため、その映像プロダクションからシグネチャー作品が出せることの偉大さを誰よりも理解しているつもりだ。
 
「カズでやりたいって話をもらったんです。カメラマンもムービーの構成もすべて自由にやっていいからって。すぐにアメリカへ渡り、TRANSWORLDのスタッフと話し合って方向性を決めました。そこからライダーへのオファーを始めて、(2017年の)お盆過ぎにはギギ(ラフ)と(布施)忠くんとやり取りしてましたね。ほかのライダーたちもスケジュールを埋められてたらどうしようもないからすぐに連絡をして、ロケーションを探していく流れでした。とにかく時間がなかった」
 
世界最大手メディアからの熱烈なラブコールである。主演であり監督まで務めるシグネチャームービーを出せるということは、Kazu Kokuboという名前があれば世界中で売れるという確信がプロダクションサイドにあったからこそ。『THESE DAYS』『GET REAL』『IN COLOR』『NATION』『ORIGINS』『INSIGHT』『ARCADIA』『THE FUTURE OF YESTERDAY』と数々の名作を発信してきたTRANSWORLD SNOWBOARDING PRODUCTIONから初となるシグネチャー作品である。“燃えるような何か”の主題は変えることなく、全面サポートという好条件でプロジェクトは動き出したのだ。
 
ちなみに『KAMIKAZU』というタイトルは、ギギ・ラフと布施忠と撮影を行ったファーストトリップ、岐阜・白川郷で決まったそうだ。
 
「みんなでメシを食いながら“インスタのハッシュタグどうする?”って話になって。ADIDASに移籍して2年目のときにシグネチャーモデルでカモフラージュのウエアを出したんですけど、そのときにキーガン(バライカ)がオレのことを“CAMO KAZU(カモカズ)”って呼んでたんです。それで語呂合わせじゃないけど、神風からKAMIKAZUっていうのがひらめいて」
 
この瞬間、大きすぎる重圧を自らに課したのかもしれない。世界中に神風を巻き起こすために。
 
カズが表現したいスノーボードは、今も昔も変わらない。誰も見たことがないロケーションで繰り出される、世界最高峰のバックカントリーフリースタイル。ビッグマウンテンに降り注いだ大量の雪が織りなす幾多のヒットポイントにアジャストさせながら、まるでパークを滑るかのようにトリックを操り、さらには常軌を逸した攻撃的なラインで攻める。気持ちよさや楽しさは二の次。上手さやカッコよさ、そしてヤバさ──フリースタイルスノーボーディングの未知なる可能性を表現したいのだ。150cmあまりの一本の板にま
たがるだけで、手つかずの大雪原を人間はこれほどまで自由に滑れるのだということを。
 
そして、ラインどりからトリックの選定に至るまで、こうした状況下でも個性を放つことができる精鋭を集めた。そのうえで、VIDEO PART OF THE YEARを獲得した男が滑りたいロケーションを厳選し、カズ自身がそれらの舞台で観たいと思う滑りを体現できるライダーたちを当てはめていく作業。
 
こうして2018年1月、一世一代とも言えるビッグプロジェクトの撮影が幕を下ろした。
 
「めっちゃ楽しいシーズンでした。滑りたいライダーたちと撮ってもらいたいカメラマンらと一緒にできたから。自分とカメラマンが常にコンディションのいい場所を探しながら動いていて、そこに2、3人のライダーが入れ替わり立ち替わり加わってくるという流れだったので、クルーがコンパクトで動きやすかったですね。ロケーションごとにビデオパートを作る構成が決まってたから、限られた日数で画を残さなきゃいけないプレッシャーは大きかった。カメラマンとずっと一緒だから何度もケンカしたり大変なこともあったけど、これまで培ってきた人と人とのつながりがあったからこそ、このプロジェクトは成功したと思ってます。本当にいろんな人たちが協力してくれた」
 
フィルマーやエディター、ライダーに至るまで、すべて自ら声をかけて実現したプロジェクト。小誌創刊号の80ページで紹介しているのだが、カズの滑りや好みを知り尽くしているフィルマーのジャスティン・ヘア氏がメインのシネマトグラファー兼アソシエイトディレクターを務めた。カズがムービースターとして頭角を現したBURTON作『STANDING SIDEWAYS』のエディターであるジェレミー・ペティット氏に編集を依頼。滑り手、撮り手、作り手の三拍子が揃っていないと納得のいく映像作品は生み出せない。これまでも熟知していたことだが、『STRONGER.』を経験して痛烈に感じたからこそ、最強の布陣としたのだ。
 
そして、先述したギギと忠、ダスティン・クレイブン、ブレア・ハベニット、キーガン・バライカ、ケビン・バックストロム、ジェイク・ブラウベルト、工藤洸平、マックス・ブリ、チャールズ・リード、吉田啓介、フォレスト・ベイリー、佐藤秀平、平野歩夢ら、超多忙を極めるビッグネームたちがカズに賛同し、撮影に参加。
 
「だいたいみんな、2週間くらいのサイクルで順々に撮影に加わってもらいました。ロケーションごとにスケジュールを決めてたから、その間にみんながいいカットを残さなきゃいけない。オレはすべてのパートに出るから常にたくさんのカットを残す必要はなかったし、何よりオレ自身がみんなの滑りを観たかったから、撮影では優先的に滑ってもらいました。そういうライダーたちを呼んでるわけだから」
 
6時前に起床。7時に出発して山に上がり、すでに撮影内容が決まってることもあるが、大抵の場合はロケーションを見てから撮影方法を判断するようだ。そして日が暮れるまで撮影に精を出し、片づけや夕食など数時間かけて家路に着く。ボードのメンテナンスなどする時間もなく就寝。スノーボード漬けの毎日が半年近く続いた。
 
そして2018年10月4日。米オレゴン州ポートランドの街中にあるリビングルームシアターには、300名近くの業界関係者が一堂に会していた。世界初となる『KAMIKAZU』の試写会だ。弊サイトでは「國母和宏が世界中に巻き起こす『KAMIKAZU』初のポートランド試写会に密着」という記事を公開しているので興味のある読者諸兄姉はご一読いただきたいが、大盛況のうちに幕を下ろした。
 
一部抜粋すると、出演ライダーのブレアは「カズのこのプロジェクトに参加できたことをうれしく誇りに思うよ」と何かを思い返すような目で語り、TRANSWORLD SNOWBOARDINGのコンテンツディレクターを務めていたニック・ハミルトン氏は次のように述べている。
 
「カズが日本人かどうかということは関係ないんだ。オレたちは彼が紛れもないベストスノーボーダーであり、世界的なライダーだと見ている。(一部割愛)だから、カズにこのプロジェクトを一緒にやろうと話したのさ」
 
「初めて試写会をしたときも業界人がすごい喜んでくれてオレにいろんな言葉をかけてくれたし、ほかの会場でもスノーボーダーたちは最高の反応をしてくれた。結果的に(RIDERS POLLの)この作品がMOVIE OF THE YEARにも選ばれたしめっちゃうれしかったけど、それ以上に、近所の人や一般の人たちがニュースに出てたのを見てくれたみたいで声をかけてくれることがものすごく多かった。大会の映像とは別物だし、こういうムービーが一般の人たちの目に触れられることはほとんどないのに、それを観てすごいって感じてもらえたことがうれしかったですね。だからこそ、この文化を残していかなきゃならないと強く思ったんです。それと同時に、もっと観られるようになってもいいんじゃないかなって。自分が観たいと思えるカッコいいヤツらだけを集めて、自分がカッコいいと思うライディングのみで作ったムービーが、スノーボードをやらない人にも超カッコよかったって言ってもらえたんだから。これからもこういうスノーボードを残していきたい」
 
プロスノーボーダーとして、表現者として、日本スノーボード界の牽引者として、新たな決意を胸に刻んだ。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

 
 
CONTENTS
▶EPISODE 1 燃えるような何かを求めて
▶EPISODE 2 KAMIKAZUが胸に刻んだ新たな決意
▷EPISODE 3 世界一のスノーボーダーとして後世に伝えていく文化
▷EPISODE 4 夢や希望にあふれた新しいシーンに塗り替える
▷短編インタビュー 吉田啓介 遅咲きのムービースター
▷短編インタビュー 高橋龍正 孤高のムービースター
▷EPISODE 5 “立つかヤラれるか”の精神を再び燃え上がらせる火種
▷短編インタビュー 工藤洸平 センスが光るムービースター
▷短編インタビュー 小川凌稀 本場仕込みのムービースター
▷短編インタビュー 戸田真人 生粋のムービースター
▷短編インタビュー 長谷川 篤 絶対的な記録にこだわるムービースター
▷EPISODE 6 國母和宏という生き様
 
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 10 「KAZU KOKUBO, THE MOVIE STAR ──國母和宏が命を捧げる映像表現の世界──」

 
2016年、スノーボード界のアカデミー賞に位置づけられる授賞式において最優秀ビデオパート賞を獲得。2018年には、自身が主演・監督を務めた作品が最優秀ムービー賞に選ばれ、さらに最優秀ライダー賞の栄冠に輝いた。弊誌創刊号で綴った強すぎる信念を貫き通した結果、世界一に登り詰めたのだ。「すごいロケーションのラインを滑るとき、人生がかかってると感じる。死ぬかもしれないわけだし」。雪に覆われた急峻な山々を華麗に舞い、大雪原を自由自在に滑り倒す。死と隣り合わせの状況に身を置いてまで伝えたいものとは──。國母和宏が命を捧げる映像表現の世界には、私たちの心を奮い立たせる想いが込められていた。
 

 
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