BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

「自分がやらなきゃ」──工藤洸平が守り続けるスノーボードの映像文化【創刊10周年特別企画】ISSUE 10「國母和宏が命を捧げる映像表現の世界」

2026.09.25

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※2019年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 

センスが光るムービースター
工藤洸平

幼少期からコンテストを中心に活躍し、バンクーバー五輪ハーフパイプでは準決勝までコマを進めるも惜敗。競技生活にピリオドを打つと、自ら動画制作・配信をスタートする傍らでSTONPクルーとしての活動もスタートした。さらに、ライダー業だけにとどまらずアパレル制作にも従事。クリエイターとしての視点が滑りにも反映されるようになり、そのスタイルは年々研ぎ澄まされているように映る。センスが光る工藤洸平が語る、ムービースターとしての生き方とは。
 

プロスノーボーダー × 映像作家=工藤洸平

「自分がやらなきゃ」って感覚が強いですね。2010年にK FILMSを立ち上げて、最初の頃はYouTubeをメインに遊びの延長線上として配信してたんですけど、徐々に日本のシーンからムービープロダクションが減っていったじゃないですか。でも、自分の周りには日本のトップライダーたちがいるわけで、そこから映像が出てこないなんてもったいないと思って。
 
それで、自分で作ることができれば、もっと仲間たちの雰囲気とかスノーボードのカルチャーを伝えていけるんじゃないかという考えから方向性をシフトしたんです。2016年にリリースした『KANIDOURAKU』から映像作品の制作を始めました。
 
そして2017年に『YADOKARI』、2018年には『EN』を出したんですけど、K FILMSをやってるとどうしても裏方に入る時間が長いんです。みんながハイクして滑ろうとしているときに、僕はカメラアングルを探さないといけない。誰かが飛んだのを撮影したらカメラを渡して、次は僕が撮ってもらうような流れを毎日のように繰り返していました。
 
最後の『EN』のシーズンは編集もやり切って、試写会も大盛況でした。みんなに「よかった!」って言われてうれしい反面、もっとライディングにフォーカスしたいっていう気持ちも芽生えてきたんです。もちろん、K FILMSは続けていきたいんですけど、試写会が終わって落ち着いたタイミングにカズと話をしているときに、来年はちょっと休みたいって相談したんですよね。そうしたらカズから「ディレクションしていいからSTONPやらないか」って誘いがあったんです。
 
STONPって存在は永遠になくなってはいけないものだと思ってたし、2015年で一度映像制作を休止した理由は「ここからは世界に散らばっていくタイミングだから各々で行け」っていうメッセージが込められていたので、自分もK FILMSをやりながらアメリカのクルーと撮影したりしてました。でも、またSTONPとして活動できるなら全力でやりたいっていう気持ちは常にあったので、率直に面白そうだなと思いましたね。滑りに集中したかったことも踏まえて、STONPとして動くことに決めたんです。
 
あと、STONPとして活動するにあたって面白いと思うのは、カズと僕のスタイルって真逆じゃないですか。僕はカズのようなパワフルな滑りはできないし、『KAMIKAZU』を観てもわかるように昔ながらのビデオみたいな雰囲気で、アグレッシブなライディングが満載なので、スノーボード本来のカルチャーが存分に味わえる作風だと思うんです。
 
そういうロックやパンクが合うようなカッコよさは僕も大好きなんですけど、それにニュースクールを少し加えたい気持ちがあって。人に何かを考えさせるような作品に興味があるので、そういう部分でオリジナリティを出していきたいし、自分にしか作れないものにこだわりたいと思っています。例えばピアノの音楽を使ったらカッコいいんじゃないかとか、ちょっと人と違った目線で作って、インパクトを残すことで作品として覚えてもらえるようなイメージですね。
 
今回の『HIDANE』ではカズにお願いして8mmフィルムをSTONPで買ってもらって、それをずっと回してたんですよね。けっこう不安だったんですけど、フィルムの現像があがってきてチェックしたら、すごいよかったんですよ。INKは4Kの映像だったりするので、STONPとしてはその逆をいきたいというイメージがありました。そういう部分でもこだわりは強いかもしれないですね。
 

表現者としての使命

『HIDANE』の撮影では自分の滑りに集中することができたし、個人的にはめっちゃいい経験ができました。初めてカナダのレベルストークでモービル撮影をやったんですけど、かなり足を引っ張っちゃって……。モービルの運転にだいぶ苦戦して、カズには助けてもらってばっかりでした。マジでごめん!って感じで(笑)。その代わり滑りの面でも、かなりスキルアップできたと感じています。
 
北海道ではノリさん(フィルマー・渡邉徳彦氏)がメインのカメラマンとしてうちに泊まり込みでついてくれてたので、こういうカットがほしいとか、街を歩いてるポートレートを撮りに行ったりとか、ずっと話し合ってましたね。キヨくん(STONPムービーディレクター・川崎清正氏)ともシーズン中にやりとりしながら、提案したり相談しながら進行できました。
 
INKの若手と一緒に撮影する機会があって、(今井)郁海とか(片山)來夢、(大久保)勇利たちと滑ったのは面白かったですね。若手のイケイケな感じが伝わってくるし、勢いがすごかった。吹雪いてる日に休もうと思ってたのに「山上がりましょうよ」とか、リスクの高いセクションでの撮影でも「ファースト行っていいですか?」って言ってくるんですよ。いい世代だなと思いましたね。自分を魅せたい、表現したい若いライダーが出てきたんだなって。
 
「めっちゃ楽しかったです」ってみんな言ってたし、大会回ってる連中も「超楽しかったし、いい刺激をもらった」って言ってたよって大輔くん(全日本スキー連盟コーチ・村上大輔氏)から聞いて。そう思ってくれたのはうれしいですね。
 
今作ではロゴのデザインもやらせてもらいました。自分のパート以外の内容はまったく知らないから完全にディレクションってわけじゃないんですけど、タイトルも考えさせてもらったんです。映像制作の活動は休止してたけど、火が消えきらずに残ってるようなイメージがSTONPにはずっとありました。爆発するのを待ってる状態というか、終わったわけじゃないし、何かが燻っていてここから新しいことが起こるかもしれないという前兆みたいな。そういう意味合いを込めて『HIDANE(火種)』にしました。
 
こういう映像作品はもっと観られるべきだと思うし、残していきたい気持ちが強いですね。でも、一番観られるのはYouTubeだったりインスタに変わってきてて、そっちの数字をスポンサーも気にするようになってきてる。でも、そういった映像は記憶に残らず、早く忘れ去られる傾向が強いと思うんですよね。
 
インスタとかは自己プロデュースしていくなかでもすごく重要なツールだと思ってるし、一般的には見られるコンテンツはそれじゃないですか。そこでも見せていかないといけないし、それをやらないと試写会にも来てもらえないと思うんですよね。だから、上手いバランスでやらないといけない。
 
僕たちがなんで試写会ツアーをやってるのかといえば、ファンの人たちに直接自分たちがやってることを伝えたかったり、同じ気持ちでムービーを観てもらいたいから。そこは例え赤字になったとしても、プロスノーボーダーとしてやるべきだと思ってます。ビジネスだけやろうと思ったら、スポンサーを集めてYouTubeだけで配信するやり方のほうが、原価もかからないしいいですよね。
 
でもそうじゃなくて、やっぱりみんながいる場所に出向いて(ムービーを)見せたいなって。毎年試写会やるのを楽しみに待っていてもらえるような。これがなくなったらスノーボード業界も終わっちゃうんじゃないかって(笑)。だから、僕たちはやり続けますよ。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

 
 
CONTENTS
▶EPISODE 1 燃えるような何かを求めて
▶EPISODE 2 KAMIKAZUが胸に刻んだ新たな決意
▶EPISODE 3 世界一のスノーボーダーとして後世に伝えていく文化
▶EPISODE 4 夢や希望にあふれた新しいシーンに塗り替える
▶短編インタビュー 吉田啓介 遅咲きのムービースター
▶短編インタビュー 高橋龍正 孤高のムービースター
▶EPISODE 5 “立つかヤラれるか”の精神を再び燃え上がらせる火種
▶短編インタビュー 工藤洸平 センスが光るムービースター
▷短編インタビュー 小川凌稀 本場仕込みのムービースター
▷短編インタビュー 戸田真人 生粋のムービースター
▷短編インタビュー 長谷川 篤 絶対的な記録にこだわるムービースター
▷EPISODE 6 國母和宏という生き様
 
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 10 「KAZU KOKUBO, THE MOVIE STAR ──國母和宏が命を捧げる映像表現の世界──」

 
2016年、スノーボード界のアカデミー賞に位置づけられる授賞式において最優秀ビデオパート賞を獲得。2018年には、自身が主演・監督を務めた作品が最優秀ムービー賞に選ばれ、さらに最優秀ライダー賞の栄冠に輝いた。弊誌創刊号で綴った強すぎる信念を貫き通した結果、世界一に登り詰めたのだ。「すごいロケーションのラインを滑るとき、人生がかかってると感じる。死ぬかもしれないわけだし」。雪に覆われた急峻な山々を華麗に舞い、大雪原を自由自在に滑り倒す。死と隣り合わせの状況に身を置いてまで伝えたいものとは──。國母和宏が命を捧げる映像表現の世界には、私たちの心を奮い立たせる想いが込められていた。
 

 
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