BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

どこにも属さず自分の“色”を磨いてきた高橋龍正が語る、映像表現の醍醐味【創刊10周年特別企画】ISSUE 10「國母和宏が命を捧げる映像表現の世界」

2026.09.22

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※2019年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 

孤高のムービースター
高橋龍正

人と争うことが得意ではなかった。けれど、ジャンプもジビングも大好きだった。スロープスタイル競技でのオリンピック出場という目標を断念し、幼い頃から憧れていた映像表現の世界に身を投じることに。しかし、どこかのクルーに属することもなく、自らの確固たる意思で様々な映像プロダクションを渡り歩くライダー生活を過ごしてきた。誰よりも多くのライダーたちとのセッションを通じて様々な経験を積んできた孤高のムービースター・高橋龍正に迫る。
 

一匹狼で培ってきたムービースターとしての才覚

子供の頃から当たり前のように大会に出ていて、中学生くらいのときにはJSBA(日本スノーボード協会)でスロープスタイルのジュニア大会が始まったのでパイプから転向しました。それで、オリンピックを目指していろんな大会を回ったり、ワールドカップに出られるようになったんですけど、人に勝ちたいっていう欲求が強くないことに自分で気がついて。スロープスタイル自体は好きで、ジャンプしたりジブするのは面白かったんですけど、なんか「オレは違うんだな」って感じたんです。
 
子供の頃からビデオを観るのが好きで、僕が小学生か中学生だった頃にRESPECTっていうビデオクルーで初めて撮影を経験させてもらいました。バックカントリーでのジャンプとか、特設のセクションで滑ることに特別な感情を抱いたり、興奮したのを覚えてます。撮影している環境がすごく刺激的で、気持ちも入るし、すごく楽しかったですね。
 
それからCK4(VIDEO MAGAZINE)で(小川)凌稀と(戸田)真人と撮ってもらったり、地元のビデオクルーで活動したりと、大会に出ながら撮影をさせてもらえるような環境もあったのでどっちつかずな活動内容でした。でも、最終的には撮影活動のほうに行きたい気持ちはあって。大会で結果を残してからシフトしようと思ってたんですけど、19歳でワールドカップに出るのはやめました。
 
その後はHOTDOGGやDIRTY PIMPの作品に出させてもらってたんですけど、特にどこかのビデオクルーに属することはしないでマルチに動いてたんです。なぜかと言えば、どこのクルーもフィルマーに余裕がないのにライダーはたくさんいるじゃないですか。まとまってクルーとして動くのもいいんですけど、動けるときに動かないとチャンスを逃しちゃうし、そうしたほうがロケーションもほかとかぶらないから絶対にいいと思ってました。チャンスがあるかぎりは、いろんなライダーとセッションしたいという考えでしたね。
 
そのひとつとして、オーストラリアのODD FOLKSっていうクルーが毎年日本に撮影しに来てたんですけど、彼らと一緒に動くようになったんです。彼らと行動をともにして感じたことは、上手いのは当たり前なんですけど、ストリートだとそのセクションでどう魅せるか、そのためにはどうセッティングすれば効果的なのかっていう部分が一番勉強になりましたね。
 
あとは、オンとオフのメリハリがすごい。ダラけるときはひどくて、欧米のライダーたちよりもラフだった気がします。基本的にずっと飲んでるし(笑)。でも、締めるときには締める。そういう調子でやってるんだなっていうのが見えて、個人的にはすごく刺激的でした。
 
ODD FOLKSにかぎらず、いろんなライダーを見てきて勉強になったことがたくさんあります。特に外国人ライダーたちのセクションの使い方とか、そこで描きたい理想のラインが人それぞれにあるんだってことが理解できて。それが、いろんなクルーと動いてきた一番の収穫かもしれない。マネするわけじゃないけど、それらを見てきたことで自分の引き出しや価値観が広がりました。
 
それで、2018-19シーズンは自分でやろうと思っていたプロジェクトがあったんですけど、去年の秋くらいにカズくんから話をいただいたんです。そのときにINKの説明を聞いて、カズくんの気持ちが伝わったので、それだったら絶対にやりたいと思いました。このプロジェクトはデカくなるっていうのもわかったし、これに参加することは間違いなく価値のあるものになるって。自分にとってもチャンスだと思いました。
 

それぞれの “色”を出していく映像表現の世界

INKでは僕も含めて4人がストリートの撮影クルーだったので、みんなでアイデアを出しながら話し合って動いてました。基本的な撮影ではフラットな関係性が多くて、個人事業主じゃないけどある程度のクルーになると個々で動くパターンが多いじゃないですか。STONPはまさにそれだと思うんですけど、今回はクルーとしての動きがメインになってくるので、スケジュールを細かく出したりとか、積極的に動かないとダメなんだっていう空気を作るとか、そういう部分はしっかりやりました。
 
ロケーションがかぶらないように(佐藤)正和くんと(五十嵐)顕司、玉ちゃん(玉村隆)と僕の2班に分かれて撮影する流れでした。それ以外でも、各々が個人で撮影したりとフレキシブルに動いてましたね。玉ちゃんは本格的なストリートでは撮影経験がなかったけど、ほかのふたりは経験もあったので、僕の役割としては滑りどうこう細かく言うのではなく、カメラマンの時間など撮影でロスが出ないように調整したり、スポット選びなども含めてクルー全体としての動きが上手くいくように調整する役目でした。
 
玉ちゃんの場合は、どうしていいかわからずに困ってるような状況もありました。トリックに関しては自分で決めるべきだと思うからまったく触らないですけど、このセクションだったらこういう使い方ができるとか、ちょっとアイデアを提供したりとか、そういう部分でのサポートはしましたね。そうすることで、自分自身が撮影を俯瞰で見れたのがよかった。「こうするとできないんだな」とか、ストリート撮影の流れっていうものを復習じゃないけど、改めて理解できました。なおかつアイデアを考える時間がけっこうあったので、それは自分的にもプラスになりましたね。
 
INKの撮影では、自分がやりたいスポットに関してはカメラマンが入ってくる前にほとんどのロケハンを終えていて、1週間くらい前から遊びがてらトライしてました。北海道では5年くらい毎年撮影を行ってるのでスポットに関してはほぼ把握していて、あとは新しいスポットを開拓していく感じでしたね。それらのスポットを彼らに紹介して、雪の状態を見たうえで、やるかやらないかで次のスポットに移動してという流れでした。INKのテーマが“上塗り”だから、これまでやってきたスポットをガイドするけど、やるやらないを決めるのは各個人にまかせたうえで、一日フルに使って動いてました。
 
映像プロダクションが少なくなってる今、クルーとして、しかも若手だけじゃなく様々な色を持ってる人たちがひとつになって作品を作ることができたのは本当によかったですね。一人ひとりにいろんな挑戦や苦労があって、それぞれに想いの詰まったスポットがあったり。これから撮影活動で生きていこうってメンツだからこそ刺激がある作品になったと思うので、そういうところを少しでも感じてもらいたいし、それによってスノーボードをもっと好きになってもらいたい。共感できるところがきっとあると思います。
 
近年では珍しくいい環境を用意してもらって、撮影期間も十分あって、いろんなスポットに行って、みんなが縛られない環境で好きなことができた。バックカントリーの撮影には参加してないからわからないけど、各々がスノーボーダーとしてどう表現したいのかが伝わってくるはずなので、それを少しでも感じてもらえたらいいですね。
 
僕にとってはやはりカッコよさ……どれだけ自分の色を出せるかっていうのが表現だと思ってます。決まりはないし、自分のカッコいいと思うものが出せる。それが映像表現の醍醐味です。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

 
 
CONTENTS
EPISODE 1 燃えるような何かを求めて
EPISODE 2 KAMIKAZUが胸に刻んだ新たな決意
EPISODE 3 世界一のスノーボーダーとして後世に伝えていく文化
EPISODE 4 夢や希望にあふれた新しいシーンに塗り替える
短編インタビュー 吉田啓介 遅咲きのムービースター
▶短編インタビュー 高橋龍正 孤高のムービースター
▷EPISODE 5 “立つかヤラれるか”の精神を再び燃え上がらせる火種
▷短編インタビュー 工藤洸平 センスが光るムービースター
▷短編インタビュー 小川凌稀 本場仕込みのムービースター
▷短編インタビュー 戸田真人 生粋のムービースター
▷短編インタビュー 長谷川 篤 絶対的な記録にこだわるムービースター
▷EPISODE 6 國母和宏という生き様
 
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 10 「KAZU KOKUBO, THE MOVIE STAR ──國母和宏が命を捧げる映像表現の世界──」

 
2016年、スノーボード界のアカデミー賞に位置づけられる授賞式において最優秀ビデオパート賞を獲得。2018年には、自身が主演・監督を務めた作品が最優秀ムービー賞に選ばれ、さらに最優秀ライダー賞の栄冠に輝いた。弊誌創刊号で綴った強すぎる信念を貫き通した結果、世界一に登り詰めたのだ。「すごいロケーションのラインを滑るとき、人生がかかってると感じる。死ぬかもしれないわけだし」。雪に覆われた急峻な山々を華麗に舞い、大雪原を自由自在に滑り倒す。死と隣り合わせの状況に身を置いてまで伝えたいものとは──。國母和宏が命を捧げる映像表現の世界には、私たちの心を奮い立たせる想いが込められていた。
 

 
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