BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

【創刊10周年特別企画】ISSUE 3「スノーボードと仲間と絆」平野歩夢×平岡卓〈第4章〉“逆境から羽ばたく戦友同士の絆”

2026.07.16

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ソチ五輪以降、平野歩夢と平岡卓は栄光の裏側でそれぞれの逆境と向き合っていた。
多くを語らずとも互いを認め合い、絶対に負けたくないふたりは、再びオリンピックの舞台で金メダルを目指す。

 
※以下、2017年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 
EPISODE 4

逆境から羽ばたく戦友同士の絆

歩夢は2015-16シーズンまでプロ活動を優先するため、SAJ(全日本スキー連盟)のナショナルチーム入りを辞退していた。ピョンチャン五輪の日本代表に選出されるためにはFISが主催するワールドカップで付与されるポイントが指針となり、ワールドカップに出場するにはSAJからの派遣が必要。そのため、当然ながらナショナルチームに入ることが前提のシーズンだったのだが、2016年7月に行われたSAJ理事会の発表によると、歩夢は例年どおりプロ活動を優先するために辞退したと報道された。
 
この報道が腑に落ちなかったのだが、その理由として、歩夢は2015-16シーズン、北海道・札幌で開催されたFISワールドカップとSAJ北海道スキー選手権に出場している。これは、翌シーズンからナショナルチーム入りを目指すという意思表示の表れだからだ。
 
卓に関しては、前シーズンまでSAJの強化指定選手として活動していたにも関わらず、なぜかこの大切なシーズンにナショナルチームから外れるという釈然としないニュースだった。一部の報道では自ら辞退したという情報も含まれていたのだが、それについては「平岡卓後援会」のSNSで断固否定。さらに、成田収平競技本部長は「プロとして強化に励む選手に、(連盟の)強化費を使う必要はない」と説明しているというニュースに、強烈な違和感を覚えた。
 
その後、歩夢や卓に対する救済措置ともとれる情報が舞い込んでくることに。SAJの強化指定選手以外でも、一定の基準をクリアしている場合はワールドカップへの参戦資格が与えられるという内容だった。これによると、2015-16シーズンにWORLD SNOWBOARD TOURが管轄するX GAMESやBURTON US OPENなど、国際大会のエリート(最上位)レベルで3位以内に入賞した者が対象。加えて、SAJ競技本部の意向や指示に従うこと、SAJ強化指定選手に出場の優先権があることなどが記されている。歩夢はX GAMESオスロ大会で優勝、卓はBURTON US OPENで3位と、ともに基準をクリアしていた。
 
しかし、事態は一転。2017年1月上旬に報道された内容によると、ハーフパイプチームの未成年飲酒問題を受けて、その対象者たちの強化指定を解除。これにより、ワールドカップ派遣を強化指定選手に限るという決定がなされ、歩夢と卓が強化指定に追加されたというニュースだった。
 
そして1月中旬、LAAX OPENがFISとの共同開催となったためワールドカップに位置づけられており、歩夢と卓は現地入りしていた。SNSを通じてその事実は知っていたのだが、なぜか、彼らが出場することはなかった。SAJから派遣されてスイス・ラークスまで足を運んだのだろうが、なぜ出場しなかったのか? SAJからその理由については公表されていない。
 
その後のワールドカップにふたりが派遣されることはなく、彼らに出場が許された国際大会はX GAMESとBURTON US OPENのみとなってしまった。これら2大会は世界のトップランカーのみが招聘されるビッグコンテストなのだが、オリンピックのスノーボード競技を統括しているFISと直接的な関係はない。ピョンチャン五輪を翌年に控えた大切なシーズンにも関わらず、代表選考の指針となるFISポイントを獲得することが許されなかったということである。
 
こうした不安定な環境に身を置きながら臨んだ2016-17シーズン、両名はこの2大会で納得のいく結果を残すことはできなかった。卓は2大会とも出走前にボードが折れるというハプニングに見舞われてしまい、抑えたルーティンでミスを犯してしまった。歩夢はさらなる可能性を示し、バックサイド・ダブルコーク1260やフロントサイド・ダブルコーク1260という高難度な新技を披露したものの、転倒こそなかったが着地でバランスを崩してしまった。
 
「ソチ五輪を目指してた頃は、金メダルを獲ることだけを考えて練習に打ち込めてたから、今考えると羨ましくなるくらい楽しかったですね。そこから、銀から金への壁があって、それを越えるためには考えて練習しないといけなくて……。高く飛ぶのは当たり前で、それにプラスアルファしていかなければと考えるようになって、フロントサイド540にジャパングラブを入れるシグネチャートリックを生み出しました。でも、何回もやってると飽きられるのがパイプの世界だと思ってるから、また新しい何かを考えないといけない。そういうクリエイティブな部分と、技の難易度や高さの技術的な部分、両方向から追求しないといけなくなってました。考えることが多くなりすぎて、楽しむっていう単純な思いだけじゃ滑れなくなってたんですよ。でも、今はだいぶそのプレッシャーからも解放されてきて、滑りだけに集中できるようになりました。身体のケアや普段からの生活などのいいところも悪いところもわかってきて、必要ない部分を削ぎ落としたスノーボードをするうえでのルーティンが安定してきたから、あとは滑りの内容だけですね」
 
銀メダリストとしてのプライドであり、パイプシーンを牽引するトップライダーとしての自覚である。「大会に出られなかったことは屈辱」と本音をこぼしながらも、19歳で挑むピョンチャン五輪での金メダルに向けて心身ともに準備は万全だ。
 
また、BURTON US OPENの取材で現地入りしている最中、その翌週に控えているFIS世界選手権に両名とも出場できるという情報が舞い込んできた。歩夢はUS OPENで負傷してしまったため出場は叶わなかったが、卓は急遽参戦。結果は4位だったものの、フロントサイド1260をクリーンに成功させ、高さのあるバックサイド900を決めるなど、本来の持ち味を取り戻しているように映った。「今の時点でできる滑りを出し切れました。次につながる大会になりましたね」と直後のインタビューで語っていたが、納得のいく滑りができなかったシーズンの締めくくりとして自分らしさを出せたこと、それを糧にピョンチャン五輪に向けて最後の追い込みをかけるのだろう。
 
こうして彼らの競技生活を振り返ってきたわけだが、両者ともに万全の状態を期して挑めたシーズンは少ない。さらに、コンテスト単位(レベル格差が大きいワールドカップや国内大会は除く)で見てみても、ふたりが同時に表彰台に上がった大会は、卓が優勝を飾り、歩夢は納得のいく滑りができずに3位に終わった2015年のBURTON US OPENしかない。あとは、ソチ五輪だけ。
 
「オレがよかった年は歩夢が悪かったり、その逆もあったり。どっちも決められた大会はソチだけですね」
 
卓も実感しているこの事実。これが何を意味しているのかはわからないが、ピョンチャン五輪に向けてのカウントダウンは、すでに始まっている。多くを語り合うことはしないが、お互いを認め合い、それでいて絶対に負けたくないふたり。進化する過程において刺激を与え合う戦友同士が再び、オリンピックの舞台で金メダルを目指す。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

 

 
 
CONTENTS
はじめに
 

STONP 世界に挑んだ男たちの絆

EPISODE 1 STONPが変えた男の人生
EPISODE 2 “STONP OR DIE”が育んだ絆
EPISODE 3 世界一への道のりを支えた仲間の存在
EPISODE 4 仲間とともに生きる道
 

Keiji Okamoto × Yuki Kadono 時空と世代を越えたふたりの絆

EPISODE 1 憧れのお兄ちゃんからライバルに
EPISODE 2 ふたりの想いが起こした奇跡
EPISODE 3 絶望から救ったアイツの存在
EPISODE 4 親子のように強い絆
 

Ayumu Hirano × Taku Hiraoka 滑りで夢を語り合うメダリストたちの絆

EPISODE 1 同じ夢を目指して交わった人生
EPISODE 2 メダリスト誕生秘話
EPISODE 3 認め合いながらしのぎを削る葛藤
▶EPISODE 4 逆境から羽ばたく戦友同士の絆
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本記事は、2017年発行『BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE ISSUE 3「SNOWBOARDING, FRIENDS, AND THE BOND ──スノーボードと仲間と絆──」』より抜粋掲載。創刊10周年特別企画では、本号の中核を成す3つのストーリーを全14回にわたり公開していく。紙媒体ならではの写真表現や誌面デザインとともに、2017年当時の日本のスノーボードシーンの空気感も感じとってもらえれば幸いだ。
 

 
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