FEATURE
【創刊10周年特別企画】ISSUE 3「スノーボードと仲間と絆」STONP編〈第2章〉“『STONP OR DIE』 が育んだ絆”
2026.07.01
“STONP OR DIE”──立つか、ヤラれるか。
世界を目指すために集ったクルーは、遊びでありながら、滑りに対して一切の妥協を許さなかった。
その精神が育んだ絆を、EPISODE 2から読み解いていく。
※以下、2017年に綴った言葉をそのまま掲載
EPISODE 2
“STONP OR DIE”が育んだ絆
「ムービーのタイトルを決めた明確な理由はないんですけど、“2作目はどうしようか?”って話をしてたら優作くんが、“STONP OR DIEにしよう”って言ったんですよね。それがしっくりきたんです」
2012年9月、2作目となる『STONP OR DIE』をリリース。1作目とは趣向が異なり、セッションパートもあれば個人パートもあり、個人パートに別クルーの仲間が参加するなど、ライダーたちの個性が前面に打ち出された臨場感あふれるアクションムービーだった。カズを筆頭に、優作、上村好太朗、清原勇太、中井孝治、工藤洸平、戸田聖輝、阿部祐麻、テディ・クー、中尾正明、高尾翔馬らが名を連ね、彼らはこの作品からレギュラーメンバーとしてクルーに定着することになる。
「ストンプできるか、はたまたデスるか。まさにタイトルどおりのことをしている自負があります。今のように全力の活動を続けていけば、おそらく長い目で見たら身体がもたないと思うし、それだけの気持ちで取り組んでいるつもり。クルーとして海外のムービーシーンに名を残そうと思ったら、生半可なことでは達成できないから。それこそ、日本人だったらなおさらのことです」
当時、カズはこのように語っていた。優作が命名したSTONPとしてのスローガンを胸に、カズ自身が肌で感じてきた世界レベルにおける日本人スノーボーダーの立ち位置を理解したうえで、それらに賛同する仲間たちとともに実質的なSTONPとしての活動がスタートしたのだ。
先述したように、この作品を契機として世界の舞台へと躍り出た優作。
「とにかく地元でフッテージを残したかった。やりたいことがあるんやったらやったほうがいいと思うタイプなので、カズに相談してOKをもらいました。さらに、地元のヤツらをフックアップしたいって気持ちがかなり強かったんです。くすぶってるヤツらはたくさんいたので、彼らに“もしSTONPの作品に出ることができたら、オマエらのスノーボードを多くの人に観てもらえて、今まで以上に理解してもらえるはずやで”って話して。自分にとって大切な地元の仲間たちと一緒に這い上がっていきたいという気持ちが、かなり強かったですね」
野村和平、石原寛規、菅沼宙史、そして弟の良輔らによる攻撃的なライディングが地元のストリートで繰り出され、優作のパートで共演。これまでフォーカスされることが少なかった兵庫エリアでのフッテージが多かったことに加え、彼らの魂が宿った数々のライディングがシーンに多大なるインパクトを与えた。
さらに、この作品における優作のパートは2部構成になっており、兵庫編が終わるやいなや、アメリカ中西部、ミッドウエストと称されるミネソタ編へと橋渡しされている。
「SIGNALを通じてつながったアメリカと日本、このふたつのホームをSTONPの一員として表現したかったんです。SIGNALのジェイク・オルソン・エルムら、ミネソタのクルーはとてもフランクなので、“オマエのホームなんだから、いつ来てもいいんだぜ”って言ってくれるんですけど、あのとき彼らが招いてくれたことが本当に心に響きました。自分ひとりのパートではなく、みんなのパートにしたかった。そういう仲間意識は強かったですね」
「すごくシンプルなことなんですけど、セッションの大切さを伝えたかったんです。実際に会って一緒に滑ることはもちろんやけど、ただ一緒に飲むだけでもセッションやと思うし。そういう仲間同士の絆や力みたいなものをすごく感じてました。カズがいろんなライダーたちとセッションさせてくれたんです」
優作の才能や魅力をいち早く見抜き、全面的にサポートすることで世界の舞台へと羽ばたかせたカズ。そして、その表現方法として自身のライディングスタイルはもちろん、地元や旅を愛する唯一無二のライフスタイルをテーマとすることで、自らだけでなく仲間たちとともに世界中から喝采を浴びた優作。

このように順風満帆かのように映っていたSTONPだが、3作目となる『STONP OR DIE 2』は、納得できる作品を制作することができなかった。2013年2月、カズは撮影中に大ケガを負ってしまい(ISSUE 1、87ページ参照)戦線離脱を余儀なくされることに。『STONP OR DIE 2』をご覧になった方は記憶にあるだろうが、エンドロールが終わった直後、同作品を観ているという設定のカズが登場し、鉄製のパイプらしきものでモニターを破壊するという過激なシーンが収録されている。作品に対する自らの評価だったのだろう。さらに、DVDのジャケットに採用された写真は病院のベッドの上で不敵な笑みを浮かべているものだったが、映像内では同じシチュエーションで中指を立てているシーンが連発する。これは、ケガをしてしまった自分に対する怒りの表れだったに違いない。
これを機に、次作でカズは思い切ったハンドリングをすることになる。
「クルー全員のベストなフッテージを残すことが理想だったけど、それぞれのライダーがSTONP以外でも活発に動いていることもあって、状況的に難しい面もありました。だったら思い切って一度、若手中心で自由にやってみるのもいいと思ったんです。優作くんや中井くんは海外での撮影だったり、オレもCAPiTAのムービー撮影が入ってたこともあったから、映像を撮り溜めることにしました。もちろん、前作の反省を踏まえた部分もあったし、そうすることで、STONPとしての作品がもっとよくなるはずだっていう、ある種の計算みたいなものもありましたね」
主要ライダーが出演しないことを前提に、洸平とテディを中心とした中堅および若手ライダーたちが立ち上がった。“ある種の計算”とは、彼らに発破をかけることでネクストステージへ昇華させようという狙いだったのだ。やはりカズの存在は大きすぎる。だからこそ、自ら身を引くことで彼らを奮い立たせようとした。
こうして、一念発起した彼らは素晴らしいフッテージを残すことに成功。特に洸平とテディは、世界最大手の専門メディアであるアメリカのTRANSWORLD SNOWBOARDINGの目にとまり、2015年にリリースされた映像作品『ORIGINS』にカズとともにフィーチャーされることになった。優作がそうだったように、カズから与えられたチャンスをつかみ取ることができたのだ。
この前作から佐藤秀平が、この作品から戸田真人と吉田啓介が、最終作には小川凌稀が加わり、クルーの層は厚みを増していた。「STONPが始まってからはオリンピック出場を目指していたので、撮影自体があまりできなかったんです。だから、クルーを見ているとうらやましかった……」とは秀平の言葉だが、ライダーの立場からしても存在感を放つ輝かしいクルーに成長していたのだ。さらに、主力メンバーを欠いて撮影に臨んでいただけに、クルー内で競争心が生まれるとともに協力体制が整い、点として存在していた国内トップクラスのライダーたちが“線”でつながった瞬間だったのかもしれない。

「これまで接点がなかったストリートを攻めるライダーたちとセッションすることで、ライディングやスタイルに対する考え方が変わりました。STONPを通じて出会ったライダーたちから影響を受けて、滑りの幅が広がりましたね」(工藤洸平)
「みんなですごい作品を作ろうとしてたから、STONPの撮影に挑むときは気持ちを入れ替えてました。日本人でもこんなにヤバイものが作れるっていうのを世界中に知ってもらいたかったからこそ、自分の限界をプッシュするというか、しないといけないという意識で挑んでました」(中井孝治)
「STONPがあったから今の自分があります。仲間たちと生活をともにし、一緒にセッションしたことで、すべてが変わりました」(高尾翔馬)
「一人ひとりがボスキャラで、その集合体がSTONP 。単純にいい映像を残すことに貪欲で、ライダー同士がお互いを刺激しながら、さらに上のフッテージを求めることができてました。そんなクルーの一員でいれたことを誇りに思います」(中尾正明)
「クルー全員がファミリーで、よきライバルでもありました。今まで接点がなかった世界で生きてきたライダーたちと話をすることで、スノーボードに対する考え方がガラリと変わりましたね」(戸田聖輝)
「それぞれがすごくいいスタイルを持っていて、それが映像からも伝わってきます。だから、自分も撮影のときにはインパクトのある滑りだったり、何か自分のスタイルを印象づけられるように常に意識して撮影に挑むようになりました。スノーボードに対するモチベーションを最大限に上げてくれる仲間ですね」(吉田啓介)
カズから与えられたチャンスであり使命をそれぞれが全うする過程において、確固たる絆が生まれたSTONPクルー。こうして一丸となった彼らの存在は、ボスであるカズのプロ意識をさらに高める原動力にもなっていたのだ。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
CONTENTS
▶はじめに
STONP 世界に挑んだ男たちの絆
▶EPISODE 1 STONPが変えた男の人生
▶EPISODE 2 “STONP OR DIE”が育んだ絆
▷EPISODE 3 世界一への道のりを支えた仲間の存在
▷EPISODE 4 仲間とともに生きる道
Keiji Okamoto × Yuki Kadono 時空と世代を越えたふたりの絆
▷はじめに
▷EPISODE 1 憧れのお兄ちゃんからライバルに
▷EPISODE 2 ふたりの想いが起こした奇跡
▷EPISODE 3 絶望から救ったアイツの存在
▷EPISODE 4 親子のように強い絆
Ayumu Hirano × Taku Hiraoka 滑りで夢を語り合うメダリストたちの絆
▷はじめに
▷EPISODE 1 同じ夢を目指して交わった人生
▷EPISODE 2 メダリスト誕生秘話
▷EPISODE 3 認め合いながらしのぎを削る葛藤
▷EPISODE 4 逆境から羽ばたく戦友同士の絆
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本記事は、2017年発行『BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE ISSUE 3「SNOWBOARDING, FRIENDS, AND THE BOND ──スノーボードと仲間と絆──」』より抜粋掲載。創刊10周年特別企画では、本号の中核を成す3つのストーリーを全14回にわたり公開していく。紙媒体ならではの写真表現や誌面デザインとともに、2017年当時の日本のスノーボードシーンの空気感も感じとってもらえれば幸いだ。

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