BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

【創刊10周年特別企画】ISSUE 2「フリースタイルスノーボーディングの本質」〈第8章〉競技スノーボードに足りないフリースタイル力

2026.06.24

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※※以下、2017年に掲載した記事を一部加筆・修正のうえ再掲載
 
 
EPISODE 8

競技スノーボードに足りないフリースタイル力

プロスノーボーダーとしてライディングだけでなく映像編集もこなすなど、その表現の幅を広げている洸平は、2014年1月から地元の札幌にNOVEL MOUNTAIN PARKを設立、プロデュースを手掛けている。ウィンターシーズンだけでなく、5月を除いたオフシーズンも営業しているこのスノーボード施設には、アプローチにブラシを敷き詰めたライディングレベル別のバグジャンプや多様なジブアイテムが用意されており、冬になればオンスノーでの滑走が楽しめる。全国に点在している雪を必要としないジャンプ練習施設同様に、スロープスタイルやビッグエア種目でのオリンピック出場を目指す若年層のスノーボーダーも多く来場しているようだ。
 
「オレの場合は、スノーボードを始めた頃からムービースターになりたいって目標を持ち続けてたので、オリンピックを目指してた時代も含めて、海外のビデオはかなり観てきました。やっぱり、シーンの動向はチェックしておきたかったんですよね。昔はJPソルバーグがめっちゃ好きで、よく観てました。でも今の若い子たちって、そういう対象がいないし、ビデオも観てないんですよ。NOVELに来るような子たちは、ライダーのことを全然知らない。オリンピックに出たいっていう子たちがほとんどだから、競技以外は興味がないみたいなんです」
 
やはりそうか。競技スノーボード化が進んでいることは容易に想像できる話だが、具体的な事例を把握しきれていなかった。前出のウエのように高校3年でスノーボードを始めるケースや、筆者も大学1年から始めたのだが、その時代とは考え方がまったく異なるようだ。弊誌創刊号で特集した國母和宏は4歳、洸平は6歳からスノーボード人生をスタートしているわけだが、両名ともに親からの影響がかなり大きい。北海道という雪に恵まれた環境でもそうなのだから、雪国ではない地域で育つ子供たちは移動なども踏まえると、親を含めた大人に100%依存しないかぎり滑ることは許されない。ニュースクール時代と、第二次ベビーブーム世代が高校を卒業したタイミングが重なっており、その世代が40歳を超えていることから、彼らの子供たちがスノーボーダー2代目としてオリンピックを目指しているということなのだろうか。
 
「オレのことを知らない親御さんもたくさんいますよ。中井くんが遊びに来てても、あの人誰ですか?みたいな感じです。それでいて、オリンピック選手にさせたくて来ましたっていう人がほとんどで……。ソチ五輪で歩夢がメダルを獲ったのを知って来てるお客さんが多いですね」
 
なるほど。ということは、推論にはなってしまうが、恐らくスノーボードをやらない、もしくは、積極的に取り組んでいなかった親が多いということだろう。仮にスノーボーダーであれば、ソルトレイク五輪ハーフパイプで5位に入った中井を知らないはずがない。スノーボードの文化価値や歴史的背景をまったく知らなければ、そこにスノーボーダーらしさやスタイルを重んじる価値観など皆無だ。
 
ここまでの話を聞いていて面白くないと感じている読者諸兄姉もいることだろう。スノーボードをいちスポーツとして位置づけているのであれば、これまで議論してきたことはどうでもいい話に聞こえているはずだ。スタイルがあろうがなかろうが、ライフスタイルがカッコよかろうが悪かろうが、大会で勝つことが最大の美徳であると言うのであれば、それは致し方ない。
 
しかし、オリンピック種目であることから競争が激化し、競技年齢は下がり続ける一方だ。國母和宏、平野歩夢ともに14歳の時点でそれぞれBURTON US OPENとX GAMESで2位という成績をあげており、アメリカのクロエ・キムに至っては14歳でX GAMESを制している。それに勝る技術を習得する必要があると同時に、彼らがそのスタイルを兼ね備えているということも忘れてはならない。言い換えれば、フリースタイルスノーボーディングの本質を理解しているからこそ、その若さで才能を開花させたのかもしれない。
 
さらに、名前は伏せるが、ピョンチャン五輪でのメダルが射程圏内にあるトップコンペティターのなかにも、スノーボード業界からのサポートに恵まれていない人間もいる。語弊を恐れずに断言すれば、プロスノーボーダーとしての商品価値が低いということだ。それは、スノーボード特有の価値観として、大会で勝つことがすべてではないから。完全なる競技者としてスノーボード人生を歩んでいくとなると、前述したように低年齢化が加速しているわけだから、競技から引退すると同時に、プロの世界からも退かなくてはならないということでもある。まだスノーボードの歴史は浅いのかもしれないが、こうした文化価値が深く根づいているのだ。
 
これらを前提に、子供たちが成長していく過程において知る、もしくは学ぶことができる機会はあるのかもしれないが、そうした教育システムがオリンピックを目指す過程に存在していないのもまた事実である。
 
「キッズたちがどうなっていくのか心配だし、だからこそ、オレたちが伝えていかなきゃって思うんですよね。歩夢たちの世代からは、“めっちゃ観てます!”って言わることが多いし、コンペティターからもカッコいいって言われることが増えてきてる。オレたちがやってることとか、K FILMSで発信してることが伝わってると思うんですよね。それってめっちゃ大切なことじゃないですか。オレたちの目に映ってるカッコいいスノーボードを若い子たちが自然に触れられるようになれば、いろいろと感じてもらえるんじゃないかって。NOVELのお客さんたちにもビデオを観ることを勧めたり、少しずつ教えてる感じですね」
 
洸平にとってのお手本は、父であり中井でありカズだった。先にも綴ったように、彼らがいたからこそ今の自分がある、そう断言していた。だからこそ伝えたい。NOVELという現場から、そして、K FILMSという映像から。
 
「『KANIDOURAKU』の試写会には、若い子だと小学生もたくさん来てくれてて、釘づけになって観てくれてたんですよ。そのお母さんから後日連絡があって、“息子が毎日クルマに乗るたびに、観よう観ようって言ってくるんですよ”って教えてくれて。そういうのっていいですよね。絶対に大事なことだと思います」
 
筆者は、東京・新宿で行われた同作の試写会に顔を出していたのだが、会場は満員御礼状態だったので、後ろのほうで立ち見をしていた。すると、近くにいた女性から声をかけられ、息子さんが弊誌に出ることが夢だと言っている……そういった内容の話だった。そのとき、狐につままれたような感覚に陥った。なぜなら、弊誌は間違いなく、小学生が楽しめる内容では制作していないから。
 
直後に小学3年生の少年が目の前に現れ、お母さんが筆者の素性を含めて紹介したときに、目を輝かせていた姿が強く印象に残っている。小学生が楽しく読める内容ではないが、フリースタイルスノーボーディングのニオイは思いきり漂わせているつもりだ。この少年がそのニオイを嗅ぎ分けていたとするならば、洸平が発信しているメッセージはしっかりと彼らに届けられているということである。日本のスノーボードシーン、まだまだ捨てたものではないのかもしれない。
 
「こういう価値観って、繋がっていくものだと思うんで」

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

 
 
CONTENTS

Yoshinari Uemura

EPISODE 1 偶発的に出会った生涯の乗り物
EPISODE 2 “上手くなる”と誓った先に見えたプロへの道
EPISODE 3 あらゆる時代の滑り方が融合されたスタイル
EPISODE 4 バックカントリーを極めた末の原点回帰
EPISODE 5 フリースタイルスノーボーディングの本質とは?
 

Kohei Kudo

EPISODE 6 幼少期に育まれたフリースタイルマインド
EPISODE 7 ライディング&エディットに垣間見えた古き良きスタイル
▶EPISODE 8 競技スノーボードに足りないフリースタイル力
▷EPISODE 9 ライディングスタイルに映し出される生き方
 
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ISSUE 2
「THE ESSENCE OF FREESTYLE SNOWBOARDING ──フリースタイルスノーボーディングの本質──」

 

 
スノーボードは、もっと自由でカッコいいものだったはずだ。
道具や環境が進化した現代だからこそ、自然地形を活かし、本能の赴くままに遊ぶ面白さを見つめ直したい。
ISSUE 2で特集した植村能成と工藤洸平の生き様を通して、その本質を探る。

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