BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

【創刊10周年特別企画】ISSUE 2「フリースタイルスノーボーディングの本質」〈第7章〉ライディング&エディットに垣間見えた古き良きスタイル

2026.06.23

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※以下、2017年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 
EPISODE 7

ライディング&エディットに垣間見えた古き良きスタイル

「バンクーバー五輪が終わってから自分のスタイルって何なのかを考えたときがあって、めっちゃ個性がないと思ったんですよね。オリンピックでの滑りを見ても、なんかダサいなって。その頃は、自分が出てる雑誌とかを見るのもイヤだったんですよ。カッコ悪いなと思ってて……。もちろん、カッコいい滑りを意識してやってたんですけど、オレのスタイルだって言えるものはなかったんだと思います」
 
意外な言葉だった。バンクーバー五輪のファーストヒットで放ったメソッドや、フロントサイド1080後半のローテーションなど、メリハリのある洸平らしいスタイルが脳裏に焼きついていたからだ。確かに、現在のほうがより洗練されていることには違いないが、洸平のこだわりや美的感覚が強いということなのだろう。それは、技術力や難度以上に、表現力や個性を重んじるスノーボーダーとしてのポリシーでもあった。
 
「スケートをやったりジブをしたり、今まで以上にいろんな滑りをするようになりました。これまでもいろいろやってきてたつもりだったけど、オリンピックを目指す過程においては、どうしてもパイプが中心になってたから、自然にジャンルの幅が広がっていった感じです。そうしたら、今みたいな柔らかい滑りのスタイルにたどり着いたんですよね。(上村)好太朗と一緒に滑るようになって、レール上での絞り方とかを意識しながら練習してた時期があったんです。それをやってるうちに、パイプやバックカントリーでも、そういう動きを自然と活かせるようになりました。だから、さらにいろんなジャンルの滑りを取り入れていこうって」
 
例えば、どちらかの足を思いきりボーンアウトしたとして、空中でのバランスをとるために、下半身とは正反対の方向へ上半身をかざすことで体勢が安定し、それがいわゆるスタイルと化す。シフティを想像すればわかりやすいだろう。レール上での絞りも基本的には同じ原理なので、アイテムに乗った状態でのそれが、宙を舞っているときにも反映されていったということだ。
 
「時代の流れってあるじゃないですか。それが、自分の思ったタイミングとちょうど重なったんですよね。90年代前後にあったような個性的なグラブをするライダーって、最近はめっちゃ増えたと思う。でも、今みたいになる前から、アーリーウープしながらタックニーでインディするとか、誰よりも先にやってたんじゃないですかね? これでしょ今の時代は!って直感的に思ってたから」
 
やはり、スノーボードを始めた頃から染みついているフリースタイルスノーボーディングの価値観が潜在的にあるのだ。古いビデオや雑誌を見てマネしているわけではない。ただ、己のスタイルと向き合って目指した先にあるカッコよさが、当時のスタイルだったということだ。
 
「そうだと思うんですよね、絶対に」
 
こうした価値観は、彼が手掛ける映像作品にも表れている。バンクーバー五輪を終えた直後の2010年4月よりスタートしたK FILMS 。始めた当初は、ライダーたちのライフスタイルが垣間見られるお笑い要素の強いブイログ(ビデオブログ)を配信していたのだが、映像編集の技術は素人同然だった。しかし、毎年何本もの編集作業をこなすうちにスキルが向上し、ブイログから作品へと進化。昨シーズンは『KANIDOURAKU』と銘打ったタイトルで、コロラド編、北海道編、道北編、ボウル編を定期的に配信していた。その集大成として2016年秋、満を持してDVD『KANIDOURAKU』をリリースしたわけだ。
 
筆者の目には、彼らが繰り広げる最先端のフリースタイルスノーボーディングに、その原点である90年代のテイストが掛け合わさっている作風に映った。ライディング然り、映像編集も然りである。
 
「一人ひとりの個性が出てるビデオがすごい好きなんですよ。オレの中で思ってる(佐藤)秀平はこんな感じかなとか、中井くんはこういった感じだよなっていうのを表現できるのが一番なのかなって。だから、iPhoneで撮った動画だろうがなんだろうが、どんな機材で撮った映像でも、ライダーたちがよければそれでいいと思ってるんです。やっぱり人から伝わるものだから、そういう本質的な部分を活かしたい。もちろんこだわってやってるんですけど、映像自体を引き立ててくれるのはライダー自身じゃないですか。そういうビデオを作りたかったから、景色でもオフショットでもなんでもいいから、1年間撮った素材を各ライダーからもらいました。しっかり魅せるために作ったパートと、超ふざけてるパートもあって、(平野)歩夢がめっちゃ口開けて寝てる映像を使ったり、そういうのが集まってできた感じですね」
 
プロスノーボーダーである以上、ライディングで魅せることは最低条件である。ニュースクール時代から20年以上が経過し、フリースタイルスノーボーディングは劇的に進化を遂げた。もちろん、この『KANIDOURAKU』にも、北海道のバックカントリーで撮影されたトップクラスの映像が詰め込まれている。それに加えて、演者それぞれのキャラクターが窺える編集がなされているのだ。一般スノーボーダーとは異なり、ゲレンデではないフィールドを生業とする彼らの人間性が映し出されることで、視聴者がより出演ライダーたちに感情移入できるのかもしれない。そういった要素が、90年代当時の映像には溢れていた。
 
「昔だったら、マーク・フランク(モントーヤ)がワッツアップな感じでクルマに乗って飛ばしてたりとか、ああいうのも個性だと思うし」
 
“あの頃はよかった”といった類の、オヤジの戯言を言うつもりはない。ただし、温故知新という言葉があるように、古き良き価値観を現代に落とし込むことで、また新しいスタイルが創造できるはずだ。
 
「この映像にも入ってるんですけど、春先にボウルセッションをやろうってことになって、自然地形を活かして手掘りで作りました。特に何か変わったことをやってるつもりもなくて、これまでの延長線でそのまま映像にしたつもりだったのに、“新しい”ってけっこう言われたんですよね。それに違和感があった。新しくないんだよって。スノーボードは、もともとが自然の地形を利用してキッカーを作ったりして遊ぶものじゃないですか。地形を使えば人力でもできるし、そのほうが面白い。沢にリップをつけるだけで勝手にクォーターにもなるわけですからね」
 
スノーボードの代名詞と言えば、一般的にはジャンプで間違いないだろう。その前にも後ろにもターンがあるのだが、スノーボードを始める動機としては“飛びたい”“回したい”という欲求が多いのではないか。紛れもなく筆者もそのひとりで、スノーボードを始めた90年代初頭はパークが少なかったことから、これらの欲求を満たすための自然地形を探しては、飛んだり回したりしていたものだ。裏山にジャンプ台を作って遊んだこともあった。
 
しかし、前述したように、90年代後半になるとパークは急増。パークに行けばキッカーやテーブルトップが用意されているため、カービングターンができなくてもジャンプやボックスで遊べることから、前にも後ろにもあるはずのターンにたどり着かないスノーボーダーで溢れた。地形を活かして遊ぶこと自体が新鮮なうえに、ターンの技術を駆使して滑るボウルセッションともなれば、昨今のスノーボーダーに馴染みがないという話も頷ける。
 
「でも、ああいう映像を公開することで、マネする子供たちが増えると思うんですよね」
 
洸平は自らのライディングとエディットを通じて、フリースタイルスノーボーディングの本質を発信しているわけだが、その裏では、自らもオリンピックを経験したからこそわかる、次世代スノーボーダーたちに対する危惧を抱えていた。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

 
 
CONTENTS

Yoshinari Uemura

EPISODE 1 偶発的に出会った生涯の乗り物
EPISODE 2 “上手くなる”と誓った先に見えたプロへの道
EPISODE 3 あらゆる時代の滑り方が融合されたスタイル
EPISODE 4 バックカントリーを極めた末の原点回帰
EPISODE 5 フリースタイルスノーボーディングの本質とは?
 

Kohei Kudo

EPISODE 6 幼少期に育まれたフリースタイルマインド
▶EPISODE 7 ライディング&エディットに垣間見えた古き良きスタイル
▷EPISODE 8 競技スノーボードに足りないフリースタイル力
▷EPISODE 9 ライディングスタイルに映し出される生き方
 
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ISSUE 2
「THE ESSENCE OF FREESTYLE SNOWBOARDING ──フリースタイルスノーボーディングの本質──」

 

 
スノーボードは、もっと自由でカッコいいものだったはずだ。
道具や環境が進化した現代だからこそ、自然地形を活かし、本能の赴くままに遊ぶ面白さを見つめ直したい。
ISSUE 2で特集した植村能成と工藤洸平の生き様を通して、その本質を探る。

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