COLUMN
スピンだけがスノーボードじゃない。グラブが面白い、本当の理由【創刊10周年特別企画】ISSUE 8「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」を終えて
2026.09.09
グラブは、スノーボードを始めた頃から当たり前のように存在していた。
ジャンプして、空中でボードをつかむ。インディ、ミュート、ステイルフィッシュ、メソッド……。それぞれに個性的な名前があり、つかむ場所が決められていて、そのうえで各々がカタチを作る。フリースタイルスノーボーディングを楽しんできた人なら、一度は「もっとカッコよくグラブしたい」と思ったことがあるはずだ。
では、カッコいいグラブとは何なのか。2019年に制作したISSUE 8「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」は、そのシンプルな問いを掘り下げる一冊だった。
グラブの起源をたどり、その美しさを考えることから始まり、自らを“トゥイーカー”と称するギギ・ラフのスタイルに迫った。さらにダニー・デイビスには、好きなグラブを選んでもらいながら、なぜ彼の滑りがカッコよく見えるのかを紐解いた。そして最後は、世界中のバックカントリーでラインを刻んできた小西隆文とともに、そこで表現されるグラブを普段のゲレンデに落とし込んだ。
7年ぶりにISSUE 8を読み返し、2026年の今、改めて感じたことがある。この一冊で伝えたかったのは、グラブのやり方ではなかった。グラブとは、自分の滑りを自分のものにするための表現手段なのだ。
同じインディでも、誰がやってもまったく同じにはならない。ヒザの引きつけ方、上半身の向き、つかむタイミング、トゥイークやポークの入れ方。ほんの少しカタチを変えるだけで、その人らしさが現れる。
だからこそ、ギギ・ラフの言葉が響く。彼のスタイルは、天性の感覚だけから生まれたものではない。基礎となる滑走力を磨き、自分がカッコいいと思うライダーを見て、考え、試しながら、自分なりのカタチへと変えてきた。
ダニー・デイビスも同じだった。彼は、自分がカッコいいと思ったスタイルを見つけ、それを自分の滑りに取り入れながら磨いてきた。トゥイークやポークを使い、自分にしか出せないカタチを作る。そこには「スタイルとは自然ににじみ出るもの」という言葉だけでは片づけられない、試行錯誤の積み重ねがあった。
そして、小西隆文はバックカントリーでの表現も、普段の滑りからつながっていることを教えてくれた。手つかずの斜面で大きな地形を使って描かれる滑りも、ゲレンデ内で磨くことができる。地形を見つけ、ターンでスピードをつなぎ、オーリーで飛び出してグラブする。スケールは違っても、やっていることの本質は変わらない。
こうして振り返ってみると、ISSUE 8で追いかけていた「グラブ」を突き詰めると、「フリースタイルとは何か」という問いにつながっていたのだと思う。
2026年現在、競技スノーボードの進化は、2019年当時からさらに加速した。回転数は増え、複雑な高難度トリックが次々と生み出されている。その進化には驚かされるし、世界最高峰のライダーたちが限界を押し広げ続けていることに疑いの余地はない。
だけど、スノーボードのカッコよさは、難易度だけでは測れない。高く飛ぶだけでもいい。シンプルなトリックでもいい。一本のターンだっていい。
誰かの滑りを見て「カッコいい」と思い、マネしてみる。そこから少しずつ自分なりに変えていく。もっとこうしたい、こっちのほうがカッコいいと考えながら何度も試す。その繰り返しの先に、自分だけの滑りが生まれる。
考えてみれば、フリースタイルスノーボーディングはずっとそうやって進化してきた。誰かが新しいカタチを見せ、それを見た誰かが刺激を受け、マネをする。でも、そのままでは終わらない。自分なりの解釈を加え、また別のカタチへと変えていく。
グラブは、そのことがもっともわかりやすく見えるトリックなのかもしれない。ボードをどこで、どうつかむか。たったそれだけのことに、その人の考え方や美意識まで表れる。
だから、グラブは面白い。
ISSUE 8「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」を7年ぶりに読み返した今も、このタイトルに込めた意味は何ひとつ変わっていない。
上手いかどうかだけじゃない。難しいことができるかどうかだけでもない。自分がカッコいいと思う滑りを追いかけ、自分なりのカタチにしていく。それこそが、フリースタイルなのだと思う。
自分らしく、カッコよく。
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
CONTENTS
▶CHAPTER 1 グラブの起源をたどり、グラブの美しさを知る。
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 1 スタイルの礎となる基礎力
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 2 “トゥイーカー”としての表現方法
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 3 フリースタイルスノーボーディングの普遍的価値
▶CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 1 大会と撮影を両立させる二刀流ライダーの表現力
▶CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 2 ダニー・デイビスが選んだ 好きなグラブランキング・トップ5
▶CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 3 ダニー・デイビスを直撃 オレとグラブ
▶CHAPTER 4 フリーライディングが面白くなる、グラブ談義。
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 8 「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」
スピンの回転数が増え続けても、変わることのないフリースタイルスノーボーディングの基本であり、永遠のテーマ“グラブ”。その起源や美しさをひも解きながら、空中でボードをつかむことで表現される“自分らしさ”を掘り下げた一冊。世界が認めるスタイリッシュライダーたちのグラブ論をはじめ、バックカントリーで繰り出されたグラブトリックをゲレンデで再現する企画や、シークエンス写真を用いた斬新なハウツーまで収録している。

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