BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

ハーフパイプは小さいほうが面白い。アメリカで再燃しているミニパイプについて考える

2024.05.05

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今シーズンの終盤、アメリカでは同時多発的にミニパイプのイベントが開催された。弊ウェブマガジンでもお届けした「レジェンド主催の財団が恵まれない子供たちに機会提供しながらミニパイプを盛り上げる」の記事で紹介している「REVERT FOUNDATION」というイベント、そして、「ベテランから現役が一堂に会して90年代と今がシンクロする貴重なイベント『HOMESICK』」でもミニパイプがメインフィールドだった。

本記事で紹介するのは、HOMESICKとREVERT FOUNDATIONが行われたちょうど間の週末、3月29、30日の2日間に渡ってユタ州のWOODWARD PARK CITYで行われたジル・パーキンス主催のミニパイプイベント「THE ROUND UP」だ。初日はオープンカテゴリーの予選が行われ、上位入賞者は翌日のプロライダーとのセッションに招待されるという大会フォーマット。日本からは、本記事のトップ画像を飾っている伊藤藍冬が参戦していた。

このように、アメリカでは3月下旬から4月上旬にかけて、バーモント州、ユタ州、カリフォルニア州の各地で3週連続でミニパイプのイベントが行われたわけだ。90年代にハーフパイプで滑りに磨きをかけていた筆者(編集長)にとって、これらのムービーを観ていると懐かしさはもちろんだが、新鮮さも感じる。

1998年の長野五輪からハーフパイプはオリンピックの正式種目に採用され、ソルトレイクシティ(アメリカ)、トリノ(イタリア)、バンクーバー(カナダ)、ソチ(ロシア)、平昌(韓国)、北京(中国)と7回の開催を経て、壁の高さは約3.5mから7.2mへと大きくサイズアップし、なんと倍以上になった。それに伴い、エアの高さや回転数も倍以上に進化。長野五輪時のパイプは今となってはミニパイプと呼ばれるわけだが、現在ではスーパーパイプと称される国際規格になると22フィート(約6.7m)の高さを誇り、かつてのパイプ経験者にとってもまったくの別物。実際に滑った経験上、トランジションでかかるGに恐怖心を覚えることだろう。一般スノーボーダーが楽しめるフィールドでは決してない。

ビッグエアも同様に、国際大会クラスの巨大キッカーを飛べるという一般スノーボーダーはほとんどいないが、パークには大小様々なキッカーが用意されている。しかし、パイプをキッカーやジブアイテムと比較した場合、維持管理にコストがかかってしまうため、ゲレンデ側が設置を嫌うのだろう。ひと昔前は数え切れないほど常設されていた一般サイズのパイプ、ここでいうミニパイプは、現在では福島・会津高原南郷、長野・野沢温泉、長野・HAKUBA47ウィンタースポーツパーク、長野・X-JAM高井富士、新潟・上越国際くらいだろうか(抜けていたらごめんなさい)。スーパーパイプは北海道・さっぽろばんけい、青森・青森スプリングリゾート、新潟・石打丸山、岐阜・高鷲スノーパークに設置されている。高鷲スノーパークにはレギュラーパイプもあるため、一般スノーボーダーのニーズにも応えているわけだ。そして忘れてはならない、山梨が世界に誇る室内ハーフパイプ、カムイみさかだろう。

近年はパイプ経験者が激減しているため、ムービーから伝わるかどうかわからないが、パイプにはライディングの総合滑走力を養うための要素が凝縮されている。アプローチで稼いだスピードを活かしてドロップインし、トランジションを上手く攻略してカービングターンを刻みながらエアターン。次のヒットに向けてスピードを維持するためにもリップ付近に着地してパンピングを行い加速させ、絶妙なラインどりと同時に丁寧なボトムラン、そして、パイプの形状に合わせたテイクオフといったように、1本のランの中で数々のフリースタイルテクニックを培うことができる。そして、1ランの中で何ヒットも飛べる魅力のあるフィールドだ。

近年の日本ではパイプ経験者が激減の一途をたどっているからこそ、他記事でも再三綴っているが、やはりミニパイプを再燃させたい。きっと今以上に、ライディングにおける視野が広がるはずだから。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

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