日本が世界に誇るリアルグローバルブランド
フリースタイルスノーボーディング黎明期、欧米人に比べると甲高・幅広でサイズが小さい日本人の足型に合うバインディングは少なかった。1991年、カー用品業界の大手であるカーメイトは、米ニューハンプシャー発のDURATECHというバインディングを輸入販売していたのだが、サイズ展開が少なかったうえに、日本人の足には大きすぎるという難題が。ライダーやスタッフが使用するプロダクトについては、ベースプレートや各パーツをカットするなど、場合によっては原型を留めないほどのサイズ調整を行っていた。
そうした過程を経て、プラスチック成型を得意とする同社は、日本人にフィットするバインディングを作ることを着想。「日本人の足に合う最高のバインディング」というコンセプトを掲げて試行錯誤を繰り返しながら、既存のブランドにはない新しい形状と性能を兼備し、様々な足のサイズに調整可能なオリジナルバインディングを生み出すことを目指した。当時は各社が独自のホールパターンを採用していたため、ボードとバインディングは同ブランドでのセットアップが目立っていたが、それらすべてに対応させるベースプレートとディスクを開発。1992年、バインディング専門ブランドとしてFLUX(フラックス)が誕生した瞬間だった。その背景には、道具のことなど考えずにただただスノーボードを楽しんでほしいという想い、そして、ものづくりに対する強いこだわりがあったからにほかならない。
FLUXというブランド名には、“絶え間ない変化”というメッセージが隠されている。1998年、ハーフパイプ界で日本人ライダーの存在を世界に知らしめた立役者であるライオ田原をチームライダーに招き、現在のバインディングの礎となる多くの機能が誕生。ハイバックとヒールカップの間にアンクルストラップを通したUUフィットシステム、バックルとストラップの間にビームを入れた巻き込み防止トウストラップなどが挙げられる。
1999年には、スノーボードに“スタイル”という息吹を与えた男、表現者でありアーティストとして今なおシーンに大きな影響を与えているレジェンド、ジェイミー・リンがチームに加入し、シグネチャーモデルを翌年にリリース。その後も世界初となる水転写プリントを採用、特許を取得しているツマ先方向から覆うトウストラップ F.T.M.(Flux Toe Mask)、パンクロックの代名詞であるNOFXとのコラボなど、常にアップデートを繰り返し、現在では25ヶ国以上で展開されるグローバルブランドにまで成長した。
2022-23シーズンでブランド創立30周年を迎え、真のグローバルブランドを目指すというFLUX。そのためには、各国のライダーやユーザーたちが抱える問題や要望を個別に解決していき、新たな価値をもたらす新製品の開発はもちろんのこと、既存のテクノロジーを応用することや、異なる地域で提案するなど、その挑戦はまだまだ続く。
絶えず最適を求めて変化を続けることで、最高のスノーボード体験を世界中のスノーボーダーたちに届けること。その結果として、世界中から愛されるスノーボードブランドになること。FOURTH DECADEに向けてFLUXという名をさらに広めるべく、ネクストステージへとひた走る。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
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