FEATURE
ダニー・デイビスの滑りがカッコいい理由。それはグラブへのこだわりにあった【創刊10周年特別企画】ISSUE 8「自分らしく、カッコよく」〈第3章③〉
2026.09.07
7年前、ダニー・デイビスはグラブについて何を考え、どのように自らのスタイルを磨いていたのか。スピントリックの高回転化がさらに進んだ現在だからこそ、改めて耳を傾けたい言葉がある。
グラブで表現すること、勝つために滑ること、楽しむために滑ること。そして、自分だけのスタイルを追求すること。2019年、ダニー本人にその哲学を聞いた。
※以下、2019年に綴った言葉をそのまま掲載
SECTION 3
ダニー・デイビスを直撃
オレとグラブ
ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。その答えに、耳を傾けよ。

アマチュア時代、ダニーにとってグラブとはどういう存在価値だった?
昔の話はあまり覚えてないけど、トゥイークしながらメロンとインディが最初にできるようになったグラブだったと思うよ。9歳でスノーボードを始めたんだけど、そのときは11歳くらいだったかな。まだ若かったくせに、自分のスタイルを出そうと意識してたんだ。あとは、ノーズとテールグラブに興味があった。理由はボードにしがみつく感じでスピンすることができたし、しっかりつかんでいられるからね。
どのように上達していったのか教えてよ。子供の頃から今みたいにスタイリッシュだったの?
友達とバックフリップだったり360だったり、いろんなトリックの練習をしてたんだ。トリック自体はすべて上達したよ。新しいグラブも練習して習得はしていったんだけど、長い間、自分のスタイルっていうものがなかったから、それを磨くのに集中してたよ。けっこう時間はかかったかな。
その後プロになってスノーボードが仕事になった今、ダニーにとってグラブとは?
オレにとってグラブっていうのは、トリックを自分のスタイルで表現するための手段だと思ってるよ。そう、自分なりのトリックに、自分なりのトゥイークを加えてね。でも、最近気になってることがあってさ。キッズたちがスピンの回転数ばかりに気をとられてしまって、大切なグラブをしたときにトゥイークするのを忘れてしまっているんだ。グラブは、自分のトリックをいかにカッコよく、そして美しく魅せることができるかを担っているのにね。
グラブに対するこだわりを教えてもらえるかな。
グラブを適切なカタチで表現することは重要だと思うよ。ジャパングラブをするときのボードをつかむ位置はバインディングの内側で、ステイルフィッシュのときは思い切りボードを上半身に引き寄せる、とかね。グラブをカッコよく決めたければ、身体を縮ませてからひねったり反らしたりして、自分だけのスタイルを出すことが大切なんだ。そして、カッコよく魅せられるカタチっていうのは、トリックの安定感を高めることにもつながっているんだよ。
どういうアイテムやヒットポイントでグラブすることが楽しいと感じる?
ハーフパイプもストレートジャンプも地形が違うだけで、基本的には変わらないよ。ナチュラルヒットだと、アップ系よりもダウン系のほうが簡単なジャンプもあるし、楽しめるグラブもある。もちろん、その反対も同じことが言えるよ。オレにとっては、バックサイドのヒップでメソッドをぶちかますのが一番楽しいけどね。
高難度なスピントリックになると回転方向の流れに逆らわないグラブをして、反対の手をスピン方向へリードすることで回しやすくなるから、多くのライダーが似たようなスタイルになってしまう。例えば、キッカーでバックサイド・トリプルコークを回すときにミュートグラブをするライダーが多いけど、こうしたコンテストシーンの現状について意見を聞かせて。
コメントするのが難しい内容だけど、誰もがトリックを完成させたいわけであって、そのなかでもひと握りのライダーのみがバックサイド・トリプルコークのときに自分らしいグラブをして印象づけようとしているのは確かかな。ミュートグラブばかりしていると、みんな同じようなトリックをしているように見えて区別がつかないし、面白くもない。でも、そうやってトリックをしっかり完成させているライダーのほうが、誰よりも表彰台に上がっていることも事実なんだよね。
大会では高難度なスピントリックをルーティンに組み込んだほうがポイントが高くなると思うけど、ダニーはあえてしないよね。“勝つための滑り”と“楽しむための滑り”に違いはある?
もちろんあるさ。勝つためのトリックは、ジャッジのポイントを稼ぐためのものだと思ってるからね。楽しく滑るっていうのは自分のためなんじゃないかな。あとは、観客を笑顔にするため。ポイントのことなんて心配する必要ないよ。
各グラブでいろんなカタチができると思うけど、ダニーはどのように自分のスタイルを追求してるの?
自分の理想のカタチというよりも、やりたいグラブのスタイルを決めたら、そこからひねったり、引っ張ったり、曲げてみたり、できることはなんでもトライしてるよ。できる動きはなんでも試してみたらいいんだよ。ベロを出してまでもね!
ダニーがカッコいいと思う、または気になっているライダーのグラブを教えてもらえる?
ダニー・キャスのクレイルとテールグラブは、自然体でゆっくりした動きがカッコいいよね。レーン・ナークのメロンとインディもダニーと同じように、とてもゆっくりした感じなんだけど、しっかりひねってるんだ。ノア・サラスネックのグラブは、完全にスケートボードの影響を受けているスタイルだよね。ベン・ファーガソンのジャパンやダブルグラブなど、ポークを入れるグラブはすべて全身全霊で挑んでると思うよ。正確なグラブをしてるよね。ニコラス・ミューラーのグラブは非現実的としか言いようがない。スタイルマスターだよ。そして、ギギ・ラフはいつも美しいスタイルのトゥイークが入っている。クリエイティブな方法でカタチを作ってるよね。
グラブするのが難しいと感じるシーンはある?
高速スピンやフリップをするときは難しいと感じるよ。あとはフリーライディング中のヒットポイントで繰り出すときかな。だって、テイクオフがどんな感じになるのかまったく予想がつかないからね。
グラブのカタチに流行り廃りはある?
もちろんあるさ。いつものトリックにいつものグラブをやり続けていたら、飽きてくるに決まってるからね。だから、新しいグラブをトリックに取り入れてフレッシュにするんだ。いつものトリックなのにグラブを変えれば、まったく別物のトリックに見えるところがスノーボードのいいところだよ。だから、僕らは常に進化し続けなければいけないのさ。
スタイルとは身体の細部まで意識して自らカタチを作るものなのか、それとも自然とにじみ出るものなのかという議論が日本でもなされるんだけど、ダニーの考えは?
オレのスタイルは、トリックに対して時間をかけて努力した結果としてできたものだと思ってるよ。もちろん、自然とできてしまうこともあるけど、誰かがグラブをやっているのを見て、自分のポークやトゥイークのやり方をどうやって変えるべきか考えるんだ。新しいスタイルにトライすることは楽しいし、それが自分のライディングをよりよくする方法だと思ってるよ。
一般スノーボーダーにとっては高回転スピンよりも、低回転スピンやストレートエアでグラブすることに面白みを感じると思うけど、最後に読者に向けてグラブの魅力を伝えてもらえるかな?
とりあえず、自分のグラブをカッコよくするために楽しんでほしい。そしてもし可能であれば、複数のグラブトリックができるようになるといいよね。自分のトゥイークスタイルをグラブに入れ込むことが大切だと思うよ。誰もできない、自分だけのスタイルでね!
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
translation: Yoshifumi Nomura
CONTENTS
▶CHAPTER 1 グラブの起源をたどり、グラブの美しさを知る。
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 1 スタイルの礎となる基礎力
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 2 “トゥイーカー”としての表現方法
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 3 フリースタイルスノーボーディングの普遍的価値
▶CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 1 大会と撮影を両立させる二刀流ライダーの表現力
▶CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 2 ダニー・デイビスが選んだ 好きなグラブランキング・トップ5
▶CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 3 ダニー・デイビスを直撃 オレとグラブ
▷CHAPTER 4 フリーライディングが面白くなる、グラブ談義。
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 8 「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」
スピンの回転数が増え続けても、変わることのないフリースタイルスノーボーディングの基本であり、永遠のテーマ“グラブ”。その起源や美しさをひも解きながら、空中でボードをつかむことで表現される“自分らしさ”を掘り下げた一冊。世界が認めるスタイリッシュライダーたちのグラブ論をはじめ、バックカントリーで繰り出されたグラブトリックをゲレンデで再現する企画や、シークエンス写真を用いた斬新なハウツーまで収録している。

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