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REVIEW
平昌五輪スロープスタイルの楽しみ方
2018.02.08
2014年のソチ五輪からオリンピック正式種目として採用されたスロープスタイル。ジャンプとジブとに分けられ、それぞれのセクションでのアイテム選定に表される個性や滑走スキルをベースに、そこで繰り出される技の難易度や表現力が評価対象となる採点競技だ。ここでは、幅広い層に理解いただくための見どころをお届けする。
大会スケジュール
2月10日(土)男子予選 10:00~14:30(9:30〜14:30 NHK総合)
2月11日(日)男子決勝・女子予選 10:00~15:30(男子決勝10:00〜11:40 NHK総合、女子予選13:25〜16:00 テレビ東京)
2月12日(月)女子決勝 10:00~11:40(10:40〜11:40 NHK総合)
競技説明
平昌五輪のスロープスタイルコースは、レールやボックスと呼ばれる障害物が集まったジブセクションが前半に、後半にはジャンプセクションがそれぞれ3箇所ずつの計6セクション連なっている。このコースを利用してスピードではなく、技の難易度や表現力を競う採点競技だ。
予選はひとり2本、決勝はひとり3本滑った中からベストポイントで争われる。ジブセクションでは滑るアイテムを自由に選定でき、ジャンプセクションでは主にスピントリックが繰り出されることになる。腹を進行方向へ向ける回転がフロントサイドスピン、背を進行方向へ向ける回転がバックサイドスピンとなり、回転は横方向、縦方向、斜め方向など多種多様。スピントリックは最小単位にあたる半回転が180(ワン・エイティ)、1回転は360(スリー・シックスティ)と呼ばれ、3回転であれば1080(テン・エイティ)となる。
演技全体の印象、エアの高さ、難易度、完成度、多様性などの視点から採点される。ジブセクションでのアイテム選定に各選手の個性が投影され、ジャンプセクションでは回転数や難易度ばかりでなく優雅な空中遊泳に注目したい。
コース紹介
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X GAMESやBURTON US OPENなど、いわゆるプロ大会のコースには見られない奇想天外なアイテムも用意されている。詳しくはこちらの記事をご一読いただきたい。
見どころ
予選はオーバーオールジャッジングと呼ばれる全体の印象で採点する方式だ。6名のジャッジがひとり100点の持ち点で採点した点数の最上位と最下位をカットした4名による得点の平均が各ライダーのポイントとなる。
決勝ではSLSジャッジングと呼ばれる採点方式が導入され、2つのセクションに対して2名のジャッジを配置。各セクションはその2名による平均点が10点満点でつけられるため計60点、残り40点はオーバーオールジャッジングとなり3名のジャッジの平均点がつけられる。
このことから、予選は全体的な印象により決勝進出者をふるいにかけ、決勝では各セクションで繰り出されるトリックのディテールまでもが採点対象になるというわけだ。
多様な滑走ラインが選択できるジブセクションでは、比較的トリックを仕掛けやすいアイテムで高難度な技を魅せるか、はたまた攻略しづらいアイテムで個性を発揮するか。ジャンプセクションでもストレートに飛び出せるキッカーを利用して高回転スピンや回転軸が複雑な3Dスピンを繰り出すのか、またはキックと呼ばれる飛び出し口が斜めになっているものやヒップと称される上に飛び上がるジャンプ台で回転数を抑えながらも独自性を追求するか。
各ライダーの個性に注目したい。
注目ライダー
大久保勇利
Yuri Okubo
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生年月日: 2000年7月27日(17歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1440、スイッチ・バックサイド1260
近年はアプローチに人工芝、着地部にエアバッグを敷き詰めた通年滑走できるジャンプ施設で技に磨きをかける若手ライダーが多く台頭してくる中、小学3年でスノーボードを始め、北海道の恵まれた山と雪を滑り込むことで上達してきた。その滑走力がスロープスタイルで発揮されるか。
國武大晃
Hiroaki Kunitake
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生年月日: 2002年2月10日(16歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1440、キャブ・トリプルコーク1260
平昌五輪のスロープスタイル男子予選の日に16歳の誕生日を迎える高校1年生ライダー。今年1月に米コロラド州アスペン・スノーマスで行われたW杯スロープスタイルでは2位に輝いた。フロントサイド・トリプルコーク1440が決まれば上位に食い込める可能性も十二分にある。
マーカス・クリーブランド
Marcus Kleveland
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ノルウェー代表
生年月日: 1999年4月25日(18歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1440、キャブ・トリプルコーク1620、
X GAMESアスペン大会のスロープスタイルで2017、18年と連覇を果たした金メダル候補筆頭。トランポリンにより培った身軽さと卓越したボードコントロールで、いかなるアイテムも攻略する若手天才ライダー。勢いに乗れば、ラストジャンプで伝家の宝刀・クワッドコークを繰り出すかも。
マーク・マクモリス
Mark McMorris
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カナダ代表
生年月日: 1993年12月9日(24歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1440、フロントサイド・トリプルコーク1440
ソチ五輪スロープスタイル銅メダリスト。2017年のBURTON US OPENの同種目で優勝、2018年のX GAMESアスペン大会の同種目で3位に。2016年2月に大腿骨骨折、2017年3月に複数箇所の骨折や内蔵破裂という重傷を経て復活。実力は申し分ないだけに、どこまで攻められるか。
スヴェン・ソーグレン
Sven Thorgren
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スウェーデン代表
生年月日: 1994年10月4日(23歳)
得意技: バックサイド1440、キャブ1620
2017年のBURTON US OPENスロープスタイル3位、X GAMESノルウェー大会の同種目で3位と、常に上位に名を連ねる実力派イケメンライダー。フラットスピンを得意とし、あえて回転しづらい位置をグラブすることで個性的なエアを放つスタイルマスターとしても知られる。
鬼塚 雅
Miyabi Onitsuka
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生年月日: 1998年10月12日(19歳)
得意技: キャブ900、バックサイド720
2015年のFIS世界選手権スロープスタイルで優勝し、一躍注目を集める。2017年夏にニュージーランドで行われたW杯スロープスタイルで強豪をおさえて2位に入るなど、着実に力をつけている。五輪直前に福島・アルツ磐梯で特設アイテムを造成して行われたトレーニングが実を結ぶか。
藤森由香
Yuka Fujimori
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生年月日: 1986年6月11日(31歳)
得意技: フロントサイド・ダブルアンダーフリップ900、バックサイド720
トリノ、バンクーバー、ソチと3大会連続スノーボードクロスでオリンピック出場を果たしていたのだが、その傍らでフリースタイルの撮影活動も行っていたことからスロープスタイル&ビッグエアに競技転向。非凡なるフリースタイルスキルと大舞台での豊富な経験が彼女の武器だ。
岩渕麗楽
Reira Iwabuchi
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生年月日: 2001年12月14日(16歳)
得意技: キャブ900、バックサイド720
2017年9月にニュージーランドで行われたW杯スロープスタイルで4位、今年1月の米コロラド州スノーマスのW杯同種目で2位に入るなど、着々と実力をつけている期待の若手ライダー。X GAMESアスペン大会に初出場を果たし大舞台を経験したことで、さらなる高みを目指す。
広野あさみ
Asami Hirono
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生年月日: 1990年11月8日(27歳)
得意技: フロントサイド720、バックサイド720
昨シーズンのアメリカ代表選考レースとして知られるUS GRAND PRIXで、ジェイミー・アンダーソンやヘイリー・ラングランドら強豪が出揃う中、スロープスタイルで8位をマーク。今季の成績は振るわなかったが、意地でつかみとった日本代表の座だけに、勢いある滑りで一発逆転を狙いたい。
ジェイミー・アンダーソン
Jamie Anderson
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アメリカ代表
生年月日: 1990年9月13日(27歳)
得意技: キャブ・ダブルコーク900、フロントサイド720
ソチ五輪スロープスタイル金メダリスト。ベテランの域に達してもなおスロープスタイル界の女王として君臨し、今年1月のX GAMESアスペン大会でも貫禄の優勝を果たした。これまではフラットスピンのみで勝負してきたが、キャブ・ダブルコーク900を手にしたことで鬼に金棒か。
アンナ・ガッサー
Anna Gasser
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オーストリア代表
生年月日: 1991年8月16日(26歳)
得意技: キャブ・ダブルアンダーフリップ900、バックサイド720
ビッグエアのほうが得意ではあるが、2017年のBURTON US OPENスロープスタイル優勝、X GAMESノルウェー大会スロープスタイル優勝と、同種目で金メダルを狙える才色兼備なライダー。フロントサイド・ダブルアンダーフリップ900も操るなど、ジャンプ技の引き出しが多い。