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北京五輪女子スロープスタイルは新女王にゾーイ。岩渕と村瀬はメダルに届かず
2022.02.06
予選と同様に気温は-20℃近くという過酷なコンディションのもと、最後はメダルの色にとらわれることなく相手を称え合うという、非常に美しい戦いとなった。オリンピックのため動画をシェアできないことから、まずはこちらの記事でコースの内容について理解を深めていただきたい。
決勝進出を果たした12名のライダーたちが、ひとり3本のランを行いベストポイントで順位が争われた。予選で2位通過を果たしていた村瀬心椛は1〜3本目まで前半のジブセクションでは安定感抜群の滑りを披露すると、4セクション目にあたるファーストジャンプは1本目はCAB900で攻めるも、6セクション目のラストジャンプでBSダブルコーク1080の着地に嫌われた。1本目のミスにより2、3本目はルーティンを変えて、4セクション目のCAB900を540とし難易度を下げ、その代わりに6セクション目のBSダブルコーク1080は半回転加えた伝家の宝刀である1260で勝負に出た。
2本目はラストジャンプで想定よりも飛びすぎて転倒してしまったが、3本目のランは5セクション目のFS720テールまでほぼパーフェクトに決めていた。そして、ラストジャンプのBSダブルコーク1260はアプローチスピードを抑えすぎたのか、飛距離を出すことができずにナックル部に叩きつけられて万事休す。初出場となったオリンピックは10位とほろ苦いデビューに終わった。
岩渕麗楽は2本目に、CAB270オン270オフ@タンク→FS180オン・スイッチBS180オフ@ルーフ→BSボードスライド270インディオフ@キャノン→ハードウェイFSアンダーフリップ900インディ→CAB900メロン→BSダブル1080ウェドルを決めた。ラストジャンプの大きさも申し分なく素晴らしいランを決めたが、この時点で4位とメダル圏内には届かず。万里の長城を模した屋根から落ちる際のスイッチBS180にグラブが入らなかったことや、4セクション目のFSアンダーフリップ900の着地時にやや後傾になったことで減点されたのか。
メダルを目指して迎えたラストとなる3本目、1セクション目のジブをハーフキャブオンと難易度を下げてきた。以降は同ルーティンでつないでいくと、ラストジャンプは村瀬同様にBSダブルコーク1260にウェドルグラブを入れて勝負に出るも、ジャンプが小さく滞空時間が足りなかったため1260を回し切ることができなかった。
3本目は風が影響したのか雪質の状況が変わったのかわかりかねるが、どちらにして難易度を下げてラストジャンプに挑むも、両者ともにBSダブルコーク1260を決めることができなかった。総合滑走力が問われるスロープスタイルの難しさを痛感させられる結果となった。
圧巻の滑りを魅せたのはジュリア・マリノ(アメリカ)。昨日の予選1本目はジブセクションでらしくないミスを連発するも、なんとか6位で決勝へコマを進めていた。2本目、CAB180オンBS360オフ@タンク→FSリップスライド・プレッツェル270オフ@ダウンレール→スイッチBSボードスライド・トゥ・アンダーフリップオフ@キャノン→BS900メロン→CABダブルアンダーフリップ900ウェドル→FSダブルコーク1080ウェドルを決めて87.68をマーク。トップに躍り出た。
テス・コーディー(オーストラリア)が3本目にFS180オンSWBS360オフ@タンク→CAB180オンBS180オフ@ダウンレール→SWBSボードスライド270オフ@キャノン→SWBS900インディ→BS720ウェドル→FSダブルコーク1080インディと、ラストジャンプをFSダブルアンダーフリップ900から難易度を上げてポイントを伸ばすも、3位から順位を上げることはできず。
ソチ、平昌とスロープスタイルがオリンピック種目に採用されてから2連覇を果たしていた女王ジェイミー・アンダーソン(アメリカ)は精彩を欠いてしまい、ポイントを伸ばせなかった。経験豊富なだけに3本目には合わせてくるかと思われたが、4セクション目のジャンプでジェイミーとしては確実に決められるだろうFS720で転倒。女王陥落の瞬間だった。
そして、予選を1位通過していたゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)は1本目のポイントで2位につけていた。最終走者として逆転を狙った3本目、4セクション目でスイッチBS900インディを決めると、5セクション目のジャンプで難易度を上げてFS1080メロンを決めると、ラストヒットは超特大のBS1080ウェドルをストンプして両手を天高く掲げた。
3セクション目の落差あるキャノンレールから450オフの着地で若干ラインを乱して減速したはずだが、ラストヒットに特大ジャンプをつなげたということは、高難度なスピントリックを入れながらも、セクションごとのつなぎでしっかり加速させていたということだ。バックカントリーでも魅せることができるフリーライディングスキルに長けたゾーイの滑走力が、この結果を生んだということなのだろう。
この瞬間、間違いなく逆転されたと確信したはずのジュリアはゾーイのもとに駆け寄り、抱き合って彼女の滑りを称えていた。この光景は、まさに東京五輪のスケートボードでも見ることができたわけだが、メダルの色にこだわることなくクールなライディングを披露したライダーをリスペクトし、そして称え合う美しさが表れていたように感じる。横乗りスポーツの素晴らしさが世界中に感動を与える幕切れとなった。
女子スロープスタイル結果
1位 ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)
2位 ジュリア・マリノ(アメリカ)
3位 テス・コーディー(オーストラリア)
5位 岩渕麗楽(日本)
10位 村瀬心椛(日本)
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photo: FIS SNOWBOARDING