近年、膨大な数のムービーが世界中の専門サイトにあふれている。電車での移動中にスマートフォンで観る人もいれば、仕事中に周囲の目を気にしながらPCでチェック……など、手軽にスノーボード映像が楽しめる時代だ。その反面、記憶や印象に残る作品は少なくなっているのかもしれない。DVDやブルーレイの作品は別物だが、前述したように“ながら”の状態で視聴してもらうためには、時間的な制約があるからだ。オンラインをメインとした映像は、1～5分程度のものが多いだろう。観ている画面サイズが小さいことも重なって、印象に残りづらいということなのかもしれない。

そんな中、昨シーズン公開された映像になるのだが、絶大なるインパクトを与えた2分22秒の作品がある。ダニー・デイビスが中心となって開催されているPEACE PARKを舞台とした、世界中から招集されたライダーたちが1本のランで繰り広げる、臨場感あふれるセッション映像だ。追い撮りをしているフィルマーの前に、次々とライダーが乱入。ウェーブ、バンク、ナチュラルヒット、キッカー、クォーターパイプ、ハーフパイプ……といったフリースタイルスノーボーディングすべての要素が1本のランに凝縮され、彼らとともにセッションしている錯覚を起こさせてくれる斬新なムービーなのだ。あらゆるフィールドで自分らしく滑り、その価値観を仲間たちと共有し、ランを終えた後にはハイファイブ。これぞまさしく、フリースタイルスノーボーディングの本質だ。

本作に出演している平岡卓に話を聞いたのだが、この撮影は実際に一発でOKが出たそう。出演ライダーたちのスキルが高いことはもちろん、決められたトリックに縛られているわけではなく、息のあった彼らだからこその賜物なのだろう。
このムービーは、何度観ても滑りたくなる。それは、前述したフリースタイルスノーボーディングの本質が表現されているからにほかならない。