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【連載Vol.1】斑尾高原の極上パウダー“MADAPOW”とツリーランをお得に堪能できる「時間券」攻略法
2025.01.27
今シーズンは1月中旬に積雪量が250cmを超えているため、12エリアあるツリーランコースはすでに最高のコンディションに仕上がっている。そんな斑尾の“いいとき”を“お得”に遊び尽くすなら、昨シーズンから導入された「時間券」がオススメだ。
この時間券は1時間単位で利用できるチケットで、リフトゲートを最初に通過した瞬間から1時間はリフトが乗り放題になる仕組み。例えば、最初に8時30分にリフトゲートを通過すれば、9時29分まではチケットの残り時間が減ることなくリフトの利用が可能。そして、1時間が経過すると、次にリフトゲートを通過したタイミングから新たに利用時間のカウントが始まる。さらに、1日券とは異なり、シーズン中であればいつでも有効。残っている時間券は翌日以降に繰り越して利用できるため、上手に利用すれば断然お得に滑れるというわけ。
そんな時間券の攻略法を探るべく、斑尾に足繁く通うプロスノーボーダー、丸山隼人と小西隆文に話を聞いた。
“いいとき”に集中して滑る
丸山は自身が主宰するSLOPE PLANNINGのセッションでシーズン中、斑尾を利用している。2シーズン前には連載企画「丸山隼人流・斑尾高原の楽しみ方」で、このリゾートを最大限に楽しむコツを伝授してくれた。そんな彼に時間券の有効活用術を聞いてみた。
「時間券は、ローカルや長期滞在する人、シーズン中に何度か訪れる人にとって、上手く使えばお得なチケットになると思います。例えば、朝は視界がよかったのに、天候が早々に崩れてしまったとき。そんな日は無理をして滑らず、早めに引き上げれば時間券を余らせることができますからね」
1日券を購入していると、天候が悪くなっても「もったいないから滑る」という人は少なくないだろう。しかし、一例だがスピードを出したい場面で出せないのはストレスになるだろうし、自分が思うように滑れなければ楽しさも半減してしまう。だが、時間券なら早めに切り上げることで、日を改めて“いいとき”に滑ることができるのだ。
「また、滑る時間は限られているけど、1泊で滑りに来る人にとっても便利かもしれません。初日は午後に到着して少しだけ滑り、翌朝のパウダーやピステンバーンを狙う、というスケジューリングも可能になりますからね。その場合、2日間で5時間券や7時間券でも十分足りることもあると思います」
今シーズンの斑尾のリフト料金は、マウンテンパス(タングラムでも利用可)の1日券が8,000円、2日券が15,000円。いっぽう、エリアパス(タングラムでは利用不可)の5時間券は6,500円、7時間券は7,700円。7時間券で2日間楽しめるスケジュールが組めれば、1日券よりも割安になる計算だ。
さらに、「時間を上手くマネージメントできる人なら……」と前置きしたうえで、こんな活用術も提案してくれた。
「最初にリフトゲートを通過してから1時間が経過する直前に、第13リフトに乗ってゲレンデトップへ向かいます。そこから時間をかけてロングライドしながらボトムまで滑り下りて、そのまま休憩。この流れなら時間券を効率よく活用できると思います。ただ、タングラム側にも行きたい場合は時間券の利用ができないので、マウンテンパスが必要です。また、従来どおり時間を気にせず一日じっくり滑りたいなら、マウンテンパスのほうがベターかもしれません」
なお、斑尾の時間券は3時間券(午後限定・正午販売開始)、5時間券、7時間券、14時間券、24時間券の5種類。すべて斑尾エリア限定で、タングラムでは利用できない。また、時間の途中追加は不可のため、最初にどの券を購入するかは、どれくらいの頻度で斑尾を訪れるかを考慮して選ぶ必要がある。
コースの特性を考慮して最大限“お得”に楽しむ
HEART FILMSのメインライダーとして活躍し、昨シーズンは斑尾のツリーランの魅力に迫る連載企画にも登場した小西隆文。彼にも時間券の有効活用術を聞いた。
「滑りたいコースをピンポイントで狙えば、時間券のメリットを最大限に引き出せると思います。例えば、午後のSAWAコース狙いとか。午後のほうが空いているだろうし、あのコースならラインがいくら入ってもいい……むしろ、踏み固められてからのほうがスピードが出て面白いかもしれません。だから、一日中滑るというよりも、いい時間帯だけを狙って滑る人にとっては魅力的なチケットだと思います」
これまでのライダーたちのアドバイスを踏まえ、筆者も斑尾で時間券を活用して滑ってみることにした。
その日は夜中から激しい降雪があり、朝イチには「MADAPOW」と称される、踏み応えのある新雪を楽しめる絶好のパウダーデイ。しかも平日ということもあり、リフト運行開始時間から少し遅れても、非圧雪コースやツリーランコースが多い斑尾では、荒らされていないバーンを至るところで発見できた。特に、ゲレンデトップからアドベンチャーアイルを抜けた先にあるパウダーウェーブ2は、トラバースで奥へ進めば眼下にはノートラックのツリーランが広がっていた! こうして2時間ほどハジパウやツリーランコースでみっちりパウダーを滑ったあと、早めの休憩をとることに。休憩前のラストランは、時間券が新たに消費されるギリギリ手前の時間を計算してリフトを乗り継いで再びゲレンデトップにアクセスし、そこからのロングクルージングで締めたことは言うまでもないだろう。
早い時間帯での休憩は、SAWAコースのボトムが踏み固められるのを待つためだったが、同時にレストハウスの混雑を避けるというメリットもあった。しっかり休憩をとったあとSAWAコースへ向かうと、小西のアドバイスどおり、ボトムはしっかりと踏まれており、沢地形のRを存分に楽しむことができた。ちなみに、リフト待ちがなければ第11リフトと第15リフトを利用したSAWAコース滑走1本にかかる時間は約20分。つまり、2時間あれば6本回せる計算になる。第1ラウンドのハジパウ&ツリーラン2時間、第2ラウンドのサワーラン2時間をお腹いっぱい楽しんでも合計4時間の減算。7時間券では3時間分の余裕があった。
また、小西はコースの特性を活かすだけでなく、親目線での活用法についてもアドバイスをくれた。
「一日たっぷり滑る体力に自信のない人や、小さな子供のいるファミリーにも、時間券は向いていると思います。子供って疲れたり飽きたりしがちなので、どうしても滑らない時間が増えるんです。せっかく1日券を買ったからって、嫌がる子供を無理にスノーボードさせるのはかわいそうですからね」
リフトゲートを通過してから1時間が経つと、新たにゲートを通過しないかぎり利用時間がカウントされない時間券は、小さな子供を持つ親にとってもありがたいチケットだ。
前述したように、時間券は、いくつかの制限はあるものの、工夫次第で“いいとき”を“お得に”楽しめる、財布に優しいチケットであることは間違いない。まだまだトップシーズン真っ只中。ぜひ“いいとき”を狙って、”お得に”斑尾を楽しんでいただきたい。
text: HaruAki