SPECIAL
様々なライディングスタイルを一本のランで楽しめる川場の贅沢さ【FREESTYLE PARADISE Vol.3】
2022.02.09
極上パウダーからナチュラルウォールセッションの豪華ルーティン
極上パウダーからナチュラルウォールセッションの豪華ルーティン
さる2月1日。群馬・みなかみをベースに活動している中山悠也と弊メディア編集長・野上大介は、「バックカントリーフリースタイル はじめの一歩講座」のライブ配信を中山が所属する「ONE DROP OUTDOOR GUIDE SERVICE」で行ったのだが、その日の朝のこと。
ふたりの姿は、前夜に新雪が降り積もった川場リゾートにあった。しかも、「FIRST TRACK CAT SERVICE」を利用し、リフト運行開始前にはゲレンデトップに立っていたのだ。まずはスタート直後の緩斜面で雪質を確かめるようにカービングターンやバタートリックを楽しみ、ライダーズライトにある壁地形を当て込みながら西峰ダウンヒルへ向かった。
そこに待っていたのは、深いところでモモまであるノートラックのフレッシュパウダー。両者とも歓喜の声を発しながらパウダーライドを楽しんだ。おそらく、ゴーグルとフェイスマスクの下では満面の笑みを浮かべていたのだろう。滑り終えると、自然とハイタッチを交わしていたのが印象的だった。
そこからは、ほどよくパックされたクリスタルコースの面ツル圧雪バーンでカービングターン特有のGを味わいながら、壁地形で飛んだりレイバックしたりなど、フリースタイルに遊びながらクルージング。そして、クリスタルエクスプレスで再び山頂に向かい、西峰ダウンヒルのパウダーをおかわりしてから、次に高手ペアに乗り込んだ。
高手スカイラインでは斜度のある圧雪バーンを高速カービングで駆け抜け、ライダーズライトに面白そうな壁地形があれば次々と当て込みまくる。そして、「OFF THE PISTE Ⅱ」でツリーランを嗜み、そのまま長谷川篤が監修を務める「FLUX PARK」でトリックを繰り出した。
そんな1本で足がパンパンになること必至のランを繰り返していると、クリスタルコースは多くの来場者によってコース脇の壁地形がいい感じに踏み固められた状態に。ナチュラルウォールを活かしたセッションのスタートだ。
まだハジパウが残っているところではスラッシュやバタートリックを、何本かのトラックが入っているところではジャンプを繰り出し……そして、次第に互いの呼吸が合ってきたのだろう。徐々にふたりの距離は縮まり、ひとつのポイントを同時に攻めるなど、その楽しみ方はどんどん広がっていった。
“点”を自由に繋いで“線”で滑る楽しさを味わえる懐の深さ
“点”を自由に繋いで“線”で滑る楽しさを味わえる懐の深さ
さて、話はガラリと変わるが、先日幕を閉じたばかりのアメリカ・ワイオミング州ジャクソンホールで開催された「NATURAL SELECTION」の模様は弊サイトでもお届けした(記事はこちら)ので、ご存知の方も多いことだろう。この大会の特筆するべき点は、自然地形に加えてパウダースノーが降り積もる前から計算して設置されたヒットポイントが混在するコースを、ライダーのクリエイティビティ次第で自由にラインが選べること。つまり、フリーライディング要素が強いスロープスタイル大会である。大会の映像をご覧になった方々の中にはこう思った人も少なくないはず。スケールは違えど、自分もこんなふうに自由に滑りたい、と……。
そういったヒットポイントをつないで遊びながら滑りたい人にとって、川場は絶好の練習の場となるだろう。
その理由は本連載のVol.2で述べたように、ゲレンデ内には沢地形や壁地形をはじめとするヒットしたくなるポイントがたくさん点在しているから。スケート/サーフライクな遊び方から、もちろんスノーボードらしいフリースタイルなトリックまで、何でも可能なのだ。
そのうえで、特にゲレンデ上部は良質なパウダースノーに恵まれる。心地よいカービングターンを描いたり、グラトリに適したグルーミングバーンは至るところにある。ボトム近くの日当たりがいいバーンは昼過ぎになると、いい感じに緩んでくる。
つまり、トップ・トゥ・ボトムで流せば、たった1ランでもあらゆるライディングスタイルを、しかも様々な雪質を味わいながら堪能できるというわけ。イメージどおりのトリックやアクションを単発でメイクしたときも気持ちいいけれど、そういった“点”を自由に繋いで“線”で滑ることができたときの満足度や達成感は格別だ。
東京スノーボーダー&ローカルライダーから見た川場をぶっちゃける
東京スノーボーダー&ローカルライダーから見た川場をぶっちゃける
「家から川場までの経路をGoogleマップで確認したら2時間を切っていたんです。この日のコンディションが最高によかったのもあるけど、都内にある自宅から2時間もかからないでドライパウダーを味わえる環境は、ほかの国の大都市近郊にもなかなかないのかなと思います。しかも、地形が豊富で遊べるポイントも多いし、圧雪バーンのクオリティも高い。この日の悠也とのセッションは本当に楽しかった」と野上編集長。
群馬エリアを知り尽くしている中山は、川場の魅力を次のように話す。
「同じく沼田ICからアクセスする片品方面のゲレンデとは異なり、どちらかと言うと川場は水上エリアに近いので、雪雲は谷川岳や宝台樹のほうから流れてきます。そこで水分が抜けて最終的に川場に来るからなのか、このあたりでは雪が一番軽いんじゃないかなと思います。ただ風の通り道なのかな? 例年だと日陰になった斜面はアイスバーンになっているところも多いんですが、今シーズンは今のところそれがなく、めちゃくちゃいい。グラトリやパークを好むフリースタイラーが多いためパウダーの競争率が低いから、僕は朝イチにサクッと滑りたいときに来ることが多いんですよ。ただ、土日はけっこう混むから平日の朝が狙い目ですね」
「FIRST TRACK CAT SERVICE」を利用すれば、コース内の未踏のパウダーを楽しめ、面ツルのグルーミングバーンでは自身のカービングターンと向き合える。「OFF THE PISTE」ではツリーランを堪能でき、コース脇には至るところに壁地形があってフリースタイルに遊べる。太陽の光を受けて緩んだ雪ではグラトリやターンを活かしたアクションも可能だ。
ふたりが川場でセッションした日の朝イチは強い風が吹くこともあったが、3月が近づくにつれて風も次第に落ち着いてくるそう。様々な地形があり、あらゆる雪質を味わえる川場リゾート。そこにアナタだけの“線”をぜひ描いてもらいたい。
text + photos: HaruAki