SPECIAL
川場は縦横無尽に駆け巡りたくなるナチュラルヒットの宝庫【FREESTYLE PARADISE Vol.2】
2022.01.07
壁、壁、壁……まさにフリースタイル天国!
壁、壁、壁……まさにフリースタイル天国!
川場のある群馬・川場村は、上州武尊山の南面に広がる自然豊かな土地に、4本の一級河川をはじめ幾多の川が流れており、その川の多さが村名の由来となっている。川場には、フレッシュパウダーを堪能できる非圧雪コースもあれば、心地よいカービングターンを描ける幅広いフラットバーンもあるけれど、その村名からも想像できるように、沢地形になったポイントや至るところに壁地形が存在するのが特徴だ。
例えば、ゲレンデトップからスタートするクリスタルコース。序盤の緩斜面を抜けるとライダーズレフトに斜度が切り替わるポイントが現れるが、そんなオーリーを仕掛けやすい箇所を過ぎると、カービングターンと向き合うのに最適なワイドな圧雪バーンが待ち構えている。そこを下ってライダーズライトに舵を切れば、レギュラーフッターのフロントサイドに緩やかな壁地形が出現。さらに、そこを駆け抜ければライン次第でジャンプもできるバックサイドの壁地形が視界に入ってくるだろう。
こうした壁地形はクリスタルコースだけに留まらず、白鳥ダウンヒルを筆頭にゲレンデ内に無数にある。そう、川場は“ウォール・パラダイス”なのだ。そのどれもがスノーボーダーの遊び心をくすぐるポイントばかりなのだが、仮にフリースタイルなアクションが苦手だったとしても大丈夫。そうしたポイントではターンを刻むだけでも楽しいから。平面ではなく3D地形に描く三次元のターンの面白さは格別だ。だからこそ、多くのライダーたちが口を揃えてこう言うのだろう。「川場は面白い」と。
バンクドの女王やローカルのガイドも大満足
バンクドの女王やローカルのガイドも大満足
先述したことを裏づけるために、2019年に谷川岳天神平で開催されたバンクドスラロームのウィメンズ・オープン部門で優勝した宗野かれんと、片品エリアをベースに活動するDrawLine Backcountry Guide代表・片柳圭介に話を聞いた。
「ずっと福島にコモっていることもあり、今まで川場にはイベントや大会などで1シーズンに2、3回ほどしか遊びに行けませんでした。でも、開放的で気持ちいいコースもあるし、ほかのゲレンデと比べても壁地形が多くて楽しいゲレンデだという印象があります。壁があることで飛んだり当て込んだりできて遊びの幅が広がるし、そこをターンするだけでも面白いですからね。
それに、バンクドなどの練習にもなると思うんです。バンクドが速い人って壁地形のRの使い方が上手くて減速しないというか……むしろタイミングよくパンピングして加速していくじゃないですか。私も上手い人の後ろを追いかけてコツを習得してきたし、もっともっと練習しなきゃなと思っています。チャンスがあれば、今シーズンも川場で滑りたいですね」
──宗野かれん
「普段は片品エリアをメインにガイドをしていますが、コンディションによっては川場から武尊山のバックカントリーへ行くこともあります。そのときは、もちろんコースも滑ります。お気に入りは、降雪直後なら高手スカイラインもいいけど普段はコブコブの状態になっているから、個人的には風が吹いていても苦にならないフード付きリフトで回せるクリスタルコース。壁地形が多くて、ラインのとり方次第では飛べたり当て込んだり、とても楽しいですからね。ハイシーズンだったら、ライダーズレフトの壁地形は日陰になっていて、雪のいい状態が続くことが多いんですよ。
あと、『THE FREERIDE PARK』から『FLUX PARK』にかけても地形が面白いので好きですね。川場は片品や沼田エリアのなかでも壁地形が比較的多いほうだと思います。しかも、スロープの斜度と壁のバランスがちょうどいいっていうか……すごく楽しめる。僕がゲストを連れて行くときは、山に入ることになるので時間券で滑ることが多く、朝イチのまだ人が少ないうちに2、3本ほどグルーミングバーンや壁地形で遊んで、それからバックカントリーに入ることが多いんです。フラットバーンでのカービング、壁地形での3Dターン、バックカントリーでのパウダーターンなど、かなり欲張りに楽しめるのが川場のいいところですね」
──片柳圭介
総合滑走能力を高められる絶好のゲレンデ
総合滑走能力を高められる絶好のゲレンデ
どんな場所でもスピードを活かした滑りができれば、言うまでもなくライディングの厚みはググッと増すだろう。今まで飛ぼうなんて考えなかった場所がヒットポイントになったり、以前はたどり着けなかった場所にアプローチできるようになったおかげで遊べるフィールドが広がったり……。さらに、ひとつの地形であっても多彩なボードさばき術を身につけていれば様々なアプローチが可能だ。
例えば、クリスタルコース終盤にあるレギュラーフッターのバックサイドウォール。いつもジャンプばかりしているという人は、たまにはエントリー角度や進入スピードを変えてみてはいかがだろう。まったく別物の地形に見えてきて、レイバックやスラッシュ、鋭いターンでの切り返しなどにトライしたいと思うかもしれない。
ナチュラルヒットの宝庫である川場だが、まずは様々な地形を“点”で遊べるようにしておこう。その後、それらを繋いで“線”で遊べるようになったときに動きの引き出しが多ければ多いほど、より臨機応変な対応ができるはずだから。幸いなことにシーズン序盤は、たっぷりと雪が降り積もって地形が隠れてしまう前。つまり、より起伏を活かした遊びにトライしやすいタイミングということだ。
Rが緩やかな壁だったり反り立った壁だったり、川場の豊富な地形をクリエイティブに滑り込むことで、自然と総合滑走能力が高まるはずだ。どこでも人馬一体ならぬ、“人板一体”の滑りをするためにも、群馬の川の多い村に存在するウォール・パラダイスを訪れてみてはいかがだろうか。
text: HaruAki
photos: kuwaphoto.com