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一般スノーボーダーを代表して編集長 野上大介が川場が有するポテンシャルの高さを立証【KAWABA LIFE Vol.4】
2024.02.23
Vol.1〜3では佐藤亜耶、久保田空也、西田洋介と世代や性別を超えたフリーライディングの達人たちがそれぞれ、川場との関係性を語ってきたわけだが、Vol.4からは一般スノーボーダーにそのバトンが託される。まずは弊誌編集長・野上大介が一般スノーボーダーを代表して、プロライダーたちが語ってきたことを読者諸兄姉と等身大の目線で噛み砕く。
まだまだ楽しめる川場のパウダースノー
関越自動車道・練馬ICからほど近い位置に居を構えているのだが、自宅前にクルマを停めてGoogle Mapで川場を設定すると、推定所要時間は2時間を切る。確実に渋滞を避けるため、早朝5時前後には練馬ICを通過しようとすると、平日8時30分のリフト営業開始時刻にはゆっくり移動しても十二分に間に合うので、朝イチからパウダースノーを仮に2時間滑ったとしよう。川場は日をまたいでも使用できる時間券があるので、18,400円の20時間券を購入しておけば、1回あたり1,840円。着替えなど身支度に30分かかったとしても、13時には自宅に着くのでランチを摂ってから筆を執る。そんなルーティン、よくある話だ。
まずは、桜川エクスプレスとクリスタルエクスプレスのクワッドリフトを乗り継いで山頂へ向かい、そこから西峰ダウンヒルを目指したい。コース全長は620m、最大斜度25°と数値では少し物足りなく感じるかもしれないが、コース幅は広いため思い思いのラインを選択できる。短いながらも、オープンバーンで味わえるパウダーライディングは格別だ。
先出のプロスノーボーダーたちが本連載「KAWABA LIFE」で語っているように、雪質は本州随一。いや、北海道並みと言わせてもらおう。西峰ダウンヒルは山頂付近に位置し、コーストップの標高が1,809mもあるため、なおさらだ。日本海上で発生した水分を含んだ雪雲が北西から吹く季節風に乗って、谷川岳など2,000m級の山々にぶつかって水分が抜けていく。その結果、首都圏に近づけば近づくほどドライパウダースノーが降り積もるというわけ。
そのまま、西峰ダウンヒルとクリスタルコースの間にあるツリーエリア「OFF THE PISTE Ⅰ」を攻めるのもいいが、やはりオープンバーンでパウダースノーを堪能したい僕としては、次に高手ペアリフトを目指す。かなり降った翌朝は除雪のため少しレイト気味に高手ペアが動き出すことがあるため、西峰ダウンヒルを経由してちょうどいいくらい。リフトを降りてライダーズレフト側へUターンするようにスケーティングしていくと始まる高手スカイラインが、僕がもっとも好きなパウダーバーンだ。最大斜度29°と公表されているが、もう少し傾斜があるように感じる。コーストップの標高は西峰ダウンヒルと同じく1,809mを誇り、ここから、全長1,350m、標高差330m近くをトップスピードで駆け下りていくのだ。2年前の正月明けの話だが、ペアリフトは乗車時間が長いためメールの確認や電話するなど仕事をこなしながら、高手スカイラインを7、8本回してもパウダースノーが余っていた。コース横には「OFF THE PISTE Ⅱ」もあるので、コース内のパウダースノーが喰い荒らされても大丈夫。ツリーの間隔が広いので、ハイスピードでパウダーライディングを楽しむことができる。
私事で恐縮だが、2012年1月に左膝を粉砕骨折し、その翌シーズンまで滑れない状況が続いていた。2014年のソチ五輪ハーフパイプで日本スノーボード界初のメダルをもたらした平野歩夢と平岡卓の活躍をテレビなどを通じて語り続けていた僕は、大役を終えた3月22日、川場にいた。しかも、奇跡のマーチパウダー。雪上復帰を飾ったのが当時のコース外(?)、OFF THE PISTE Ⅱだったのだ。
スーパーエルニーニョや暖冬少雪と騒がれ、気温が乱高下している今シーズン。だからこそ、南岸低気圧によるマーチパウダーを期待してしまうのは、筆者だけではないはずだ。
絶対的に上手くなるウォール天国
四半世紀近く前の話になるが、ハーフパイプでJSBA(日本スノーボード協会)主催の全日本スノーボード選手権大会に関東地区代表として2度出場したことがある。バックサイドエアが得意だったことも含めて、現在の媒体名とさせていただいているのだが、クリスタルコースには長距離に渡って(レギュラーの)バックサイドウォールが広がっている。しかも、亜耶の言葉を受けて改めて理解したのだが、先述した西峰ダウンヒルでパウダーを喰らっても、期間限定でオープンする「SURF RIDE PARK」が造成される高手ダウンヒルを当て込みながらでも、最後にはクリスタルコースに合流して後半のバックサイドウォールを楽しめるのだ。
空也がインタビューで語っていたことが、今もなお強く印象に残っている。川場にコモっていたシーズンに国内最高峰のコンテスト「AIRMIX」に初出場し、錚々たるプロライダーたちが顔を揃える中、見事本戦にまでコマを進めた。その理由として、川場の壁地形を攻めまくっていた成果だと断言していたからだ。
バックサイドだけでなく、クリスタルコース中盤にはフロントサイドウォールも育っている。弊ウェブマガジンを読んでいるコアスノーボーダーたちの中には、世界トップに君臨するカズこと國母和宏が川場で滑っているムービーを観たことがあるという人も少なくないだろう。今年2月上旬にもカズは試乗会で川場を訪れており、そのフロントサイドウォールに当て込みまくっていた。ただし、今シーズンは積雪が少なく例年以上に複雑な地形があらわになっているため、上級者もしくはエキスパート向けだと考えておいたほうがいい。
また、白鳥ダウンヒルもバックサイドウォールに当て込める。パークについては後述するが、高手ダウンヒルから「FREE RIDE PARK」へのつなぎや、FLUX PARKからゲレンデの麓に向かう途中にも、大小様々ななウォールが点在している。地形に恵まれていないゲレンデにパークは必要不可欠だが、パークに入らなくてもナチュラルヒットで十分に楽しめる。それが川場だ。
“ウォール天国”とはよく言ったものだ。ハーフパイプを滑り込んでいるスノーボーダーは総合滑走スキルが高い、そんな話を聞いたことがあるという人も、弊ウェブマガジンの読者には多いはず。現在はハーフパイプが激減してしまったため、こうした話題が少なくなってしまったが、トランジションだらけの川場を滑り込めば間違いなく、上手くなる。
地形が面白いうえにパークも施設も充実している贅沢リゾート
パークに入らなくても楽しめると前章で言い切ってしまったが、川場は非常にパークが充実している。しかも、これからの時期はトップ・トゥ・ボトムでコンセプトの異なるパークに当て込みながら、多様なライディングスタイルを楽しむことができるのだ。
まずは、高手スカイラインに期間限定でオープンするSURF RIDE PARKから始まる。バンクドスラロームが空前の大ブームの今、その先駆けである「TENJIN BANKED SLALOM」のプロデューサーである前出の西田がSURF RIDE PARKを監修。面白くないわけがない。
フロント/バックサイドのバンクに当て込みながら気持ちよく流し、ウェーブでパンピングしてより加速させると、次にFREE RIDE PARKが広がってくる。川場特有の沢地形を活かしたナチュラルパークとなっており、ウォールセクションとして整備されているので、クリスタルコースの壁地形よりも遊びやすい。気持ちよくレイバックやリバースターンなどを決めることができるだろう。
そして、FLUX PARKへと続く。サーフライドや地形遊びに特化したパークを経て、ジャンプやジブを楽しむことができる、いわゆるフリースタイルパークとなっている。キッカーやテーブルトップなどのジャンプセクションから、レインボーレールや丸太レールなどのジブセクションまで、充実したパークレイアウト。法面を利用してサイドヒットも仕掛けられるように整備されているので、縦のラインだけでなく、パーク内を縦横無尽に遊び尽くすことができるはずだ。
週末や時間が許す平日はライディング後、「恵比寿 牛タン すずや」でランチしてから帰路に着くことが多いのだが、亜耶が美味しい言っていたカワバシティ8階の総合レストラン「ティンバーライン」のグリーンカレーやガパオライスといったタイ料理も気になる。僕は家族連れで行くこともあるので、パウダーラウンジやキッズルームが充実しているのもうれしいかぎり。さらに言えば、立体駐車場のおかげで吹雪いていてもカワバシティまで快適に移動できるので、小さい子供連れでも安心だ。
というわけで、本記事を脱稿したので、家族を連れて川場へ向かうことにする。もちろん、朝イチのパウダーを狙ってね。
野上大介(のがみ・だいすけ)
生年月日: 1974年2月26日
出身地: 千葉県松戸市
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)