BACKSIDE (バックサイド)

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INTERVIEW

KAMIKAZU PROJECT@マンモスマウンテン後編「なぜこのメンツだったのか」

2018.09.21

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5月のカリフォルニアにすごいメンツがやってきた(前編の記事はこちら)。マンモス・ヨセミテ空港に降り立ったのは、オレゴン州マウントフッドの強烈な日差しで真っ黒に日焼けした國母和宏、佐藤秀平、工藤洸平と、日本からロサンゼルスで彼らと合流した平野歩夢の4名。こんな豪華なメンツがそろうと、日本のライダーという枠を飛び越えてスノーボードの聖地・マンモスマウンテンもざわつく。

 

歩夢を誘った理由

 

AyumuHirano

 
2大会連続でオリンピックの銀メダルを手にし、日本中から注目を浴び続ける平野歩夢。バンクーバー五輪でスノーボーダーとしてのスタイルを貫き、日本中から注目を浴びた國母和宏。
業界外のマスメディアで力説されるこのふたりの関係は、何か綺麗事すぎるような、架空の感動物語に聞こえるのは私だけだろうか。到着したカズを捕まえて、聞きたいことを投げかけてみた。
今回なぜ、歩夢がここに来たのか。カズはなぜ、このプロジェクトに歩夢を誘ったのかを。
「オリンピックだけのイメージだとスノーボード業界で生きていくのは難しい。オレは歩夢にカッコいいスノーボーダーでいてほしいから」
世界的にそういった価値にとどまったライダーの例を名指しで挙げながら、カズはこう説明してくれた。16歳の頃からカズは世界のトップムービープロダクションだったSTANDARD FILMSでの撮影をこなしながら、コンテストにも出場し続けてきた。
「もし歩夢が自分でムービープロジェクトを作るとしたら、それは違う。周りに作られるガチガチの硬いイメージになってしまうから。当時のSTANDARD FILMSや、今オレが作るプロジェクトのようなものが歩夢には必要なんだ。そこで歩夢らしい滑りを出しさえすればいい」
今の歩夢と同じ年齢だった当時のカズがやっていたこと。そして今の歩夢が成し遂げたこと。それぞれはまったく違う。カズがやってきたこと、その足跡。決して歩夢に自分と同じ道を歩ませようとしているわけではない。自分がやってきたことすべてを肥やしにさせようとしているのではないか。そう思えた。
そのことは歩夢に伝えたのだろうか?
「いや、言ってないよ」
だが歩夢は、カズからの誘いをふたつ返事で喜んで受けたという。
そこに、彼らの関係性を感じた。カズを信頼する歩夢。彼のやっていることの価値や魅力をわかっているからこそ、歩夢はついていくのだ。
彼らの関係性に細かい理由づけなど必要ないのだと思う。世界的に名を馳せるふたりのスノーボーダーたちは、日本のメディアが騒ぎ立てるものよりもずっと、深く熱い信頼で結ばれているのだと知ることになった。
 

カズが目指すもの

 

KazuKokubo

 
「オレがやってきた環境、そして今ある環境は世界のトップレベルだから。クルーも一流、フォトグラファーもフィルマーも間違いなくいいものを残してくれる。だから、得意じゃないトリックを5のクオリティでメイクしても、世界にはそのトリックが得意で簡単に9~10のクオリティで出せるヤツらがいる。ライダーたちもその人にしかできない滑りを表現できるヤツじゃないとダメなんだ。日本の仲間たちに世界トップの環境を味合わせたいから、そう思えるヤツを誘ってる。撮影は大会じゃない。自分にしかできない滑りをしろって言いたい。ムービーを観る人が求めてるのはそういう滑りなんだ。オレが求めてるのは自己満の自慢ムービーじゃねぇ。今だからこそ残せる最高にカッコいいムービーなんだ」
フリースタイルスノーボーディング本来のカッコよさ、私たちの心を魅了する部分が何なのか。カズの言葉の一つひとつには、彼がブレず譲らずに持ち続けている信念と自信がにじみ出ていた。
「このムービー、ナンバーワンになるから」
カズが見ている先は世界のトップだ。もうずっとずっと以前に日本の枠を飛び越え、堂々と世界の頂点で走り続けている國母和宏の姿がここにあったのだった。
 
おわり

text + photos: Yukie Ueda

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