COLUMN
滑るのはひとりでも、スノーボーダーはひとりでは成長しない【創刊10周年特別企画】ISSUE 3「スノーボードと仲間と絆」を終えて
2026.07.17
スノーボードは、ひとりで滑るものだ。
ドロップインやテイクオフの瞬間、板の上に立っているのは自分ひとり。どのラインを選ぶのかを決めるのも、自分自身である。
それでも、その滑りは決してひとりでは作られていない。
創刊10周年特別企画 ISSUE 3「スノーボードと仲間と絆」では、そのことを改めて考えさせられる3つの物語を届けてきた。
最初に取り上げたのは、STONPだった。國母和宏を中心に、堀井優作、中井孝治、佐藤秀平、吉田啓介、工藤洸平、小川凌稀、戸田真人らが集い、自分たちの映像作品を世に送り出していったクルーである。
彼らは、ただ仲がよかったから一緒に滑っていたわけではない。同じ時代に、同じ空気を吸いながら、それぞれが自分の滑りを突き詰めていた。互いを認め合い、刺激し合い、ときにぶつかりながら、自分たちが信じるスノーボードを映像という形で示していった。
コンテストのリザルトだけでは測れない価値。トリックの難易度だけでは伝わらないスタイル。ひとりの成功ではなく、仲間たちでシーンそのものを押し広げていく力。
STONPの物語には、スノーボードにおける“クルー”の意味が詰まっていた。
続いて届けたのは、岡本圭司と角野友基の物語である。幼き日の友基を知る圭司は、兄のような存在であり、師のような存在でもあった。だが、ふたりの関係は一方的に支える側と支えられる側に分けられるものではない。
2015年、圭司が大事故に遭った直後、友基はAIR+STYLEロサンゼルス大会で世界初のスイッチバックサイド・トリプルコーク1620を成功させ、優勝を飾った。そのボードに刻まれていた言葉は、「RIDE FOR KEIJI」。
圭司がいたから、友基は自分の滑りを信じることができた。そして友基がいたから、圭司はもう一度、前を向くことができた。
支えていたはずの相手に、いつの間にか支えられている。背中を押していたはずの存在が、自分を絶望の淵から救ってくれる。
圭司と友基の物語が教えてくれたのは、仲間との絆が、ときに人生そのものを支え直すということだった。
そして、平野歩夢と平岡卓。ふたりは2014年ソチ五輪ハーフパイプで、ともに表彰台に上がった。歩夢が銀メダル、卓が銅メダル。日本スノーボード界の歴史が動いた瞬間だった。
だが、ふたりの関係はメダリストになってから始まったものではない。小学生時代から同じ大会で切磋琢磨し、海外の大会をともに転戦し、世界の舞台で互いを意識し続けてきた。友人でもあり、戦友でもある。だが、それだけでは言い表せないほど互いを知る関係があった。
認め合っている。でも、絶対に負けたくない。
その感情は、友情という言葉だけでは語れない。相手の実力を誰よりも知っているからこそ、自分の現在地を突きつけられる。相手が前に進めば、自分も進まなければならない。調子がいいときも、悪いときも、その存在が自分の滑りを映し出す鏡になる。
歩夢と卓の物語には、仲間でありながらライバルでもある関係の厳しさと強さがあった。
仲間とは、ただ一緒にいる相手ではない。楽しい時間を共有するだけの存在でもない。背中を押してくれる存在であり、ときに前を走る存在であり、自分では見えない弱さや迷いを映し出す存在でもある。
優しさだけではない。刺激も、葛藤も、悔しさもある。
それでも、そうした関係があるからこそ、スノーボーダーは成長していく。
スノーボードは、ひとりで滑る。
だが、ひとりでは辿り着けない場所がある。
滑るのはひとりでも、スノーボーダーはひとりでは成長しない。
創刊10周年特別企画 ISSUE 3「スノーボードと仲間と絆」は、スノーボードが個人の自由な表現であると同時に、人と人との関係性によって深められていくものだということを、改めて教えてくれた。
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
創刊10周年特別企画
ISSUE 3「SNOWBOARDING, FRIENDS, AND THE BOND ──スノーボードと仲間と絆──」
CONTENTS
▶はじめに
STONP 世界に挑んだ男たちの絆
▶EPISODE 1 STONPが変えた男の人生
▶EPISODE 2 “STONP OR DIE”が育んだ絆
▶EPISODE 3 世界一への道のりを支えた仲間の存在
▶EPISODE 4 仲間とともに生きる道
Keiji Okamoto × Yuki Kadono 時空と世代を越えたふたりの絆
▶EPISODE 1 憧れのお兄ちゃんからライバルに
▶EPISODE 2 ふたりの想いが起こした奇跡
▶EPISODE 3 絶望から救ったアイツの存在
▶EPISODE 4 親子のように強い絆
Ayumu Hirano × Taku Hiraoka 滑りで夢を語り合うメダリストたちの絆
▶EPISODE 1 同じ夢を目指して交わった人生
▶EPISODE 2 メダリスト誕生秘話
▶EPISODE 3 認め合いながらしのぎを削る葛藤
▶EPISODE 4 逆境から羽ばたく戦友同士の絆




