BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

國母和宏や平野歩夢に続く存在となるか。米ルーキーチームに選出された日米ハイブリッドの14歳が切り拓く道

2025.05.29

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米オレゴン州マウントフッドでこの夏開催される「HIGH CASCADE SNOWBOARD CAMP」では、米ナショナルチームによる若手育成プロジェクト「PROJECT GOLD」に、ショーン・ホワイトが参加することが発表された。このプロジェクトは、次世代の育成を目的とした選抜型キャンプであり、ナショナルチーム入りを前にした才能たちを対象としたものだ。

そのいっぽうで、すでに“次”のステージへと進んでいる若手ライダーがいる。14歳の日系アメリカ人3世、込山虎之介だ。先日紹介した「LLAMA PUNCH」を手がけた(記事はこちら)、日米の架け橋的存在であるYOSHIこと込山剛士と、女性スノーボード界のパイオニアとして知られる上田ユキエを両親に持つ、いわばサラブレッドである。

カリフォルニア州マンモスマウンテンと日本各地を活動拠点に、ハーフパイプだけでなくスロープスタイル/ビッグエアチームからもサポートを受ける「ATV(All Terrain Vehicle)型」ライダーとしてアメリカで注目を集めている。

彼は13歳にして、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)が主催する「FUTURES TOUR」に出場した5戦中4戦を制し、ハーフパイプ・スロープスタイルの両カテゴリーでランキング1位を記録。その総合的な滑走力と柔軟なスタイルが評価され、アメリカ代表ナショナルチームのルーキーチームに最年少で選出された。

アメリカのスノーボードチームでは、五輪を目指すためのプロチームと、それに次ぐルーキーチームに分かれており、プロチームは日本で言う「S指定」に相当する最上位クラス。枠が限られているうえ、すでにクロエ・キム(女子ハーフパイプ)、レッド・ジェラード(男子スロープスタイル/ビッグエア)といったスター選手の五輪出場が確定的となっている状況で、チーム全体としての競争は熾烈を極めている。ルーキーチームの選出ですら容易ではなく、空き枠の少ないプロチームへのステップアップには、ランキングや大会結果に基づく継続的な成果が求められる。

そんな背景のなかで、虎之介のように“育成のその先”の実力を備えている存在は、米チームの中でも異彩を放っている。特に、スロープスタイルのコース内にトランジション要素が組み込まれる近年の流れや、各競技の再編が噂される状況下において、総合滑走力が求められるハーフパイプとスロープスタイル、高回転スピンが求められるビッグエア、創造性が問われるストリートまでもカバーするライダーの価値は、今後ますます高まるだろう。

日米両方の文化をルーツとし、ひとつの競技カテゴリーにおさまりきらない滑走力を持つ14歳。

14歳と言えば、國母和宏が「BURTON US OPEN」で、平野歩夢が「X GAMES」で、それぞれ2位になった年齢である。スノーボードで才能が開花するのは、この年齢なのかもしれない。

虎之介の存在は、現在のスノーボード競技の地図を、少しずつ書き換えていくことになるだろう。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Wave Rave Todd Robertson, Mammoth Snowboard Team

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