BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

平野歩夢がトリプルコークを初成功させたDEW TOURで北京五輪以来の頂点に

2023.02.27

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オリンピックシーズンがスタートを切ったばかりの2021年12月。米コロラド州カッパーマウンテンで開催されたDEW TOURにおいて、平野歩夢は北京五輪で金メダルを手繰り寄せた超大技、FSトリプルコーク1440を初成功させた。歩夢は今シーズンもスケートボードの世界選手権に出場するなど二刀流ライダーとして多忙を極める中、その思い出の地において北京五輪以来となる優勝を飾ったのだ。
 
今シーズンはオリンピック直後にもかかわらず、SAJ(全日本スキー連盟)の強化指定選手としてナショナルチーム入りするという異例のシーズンだったが、オリンピックを統括しているFIS(国際スキー・スノーボード連盟)大会にはエントリーせずに、いわゆるプロ大会と称されるX GAMESと、現在行われているDEW TOURに参戦。X GAMESでは降雪によるコンディションの悪化により、軽量な日本人ライダー全員が表彰台を逃すという無念の結果に。だからこそ今大会は結果が求められていたし、自身も求めていたことだろう。
 
4ランの中からベストランで争われた今大会では、北京五輪を彷彿とさせるような尻上がりに素晴らしいランを披露。すべてのランを振り返りたい。1、2本目ともにFSダブルコーク1440から入ると着地でややボトム側に弾かれてしまい失速し、バック・トゥ・バック(連続)でCABダブルコーク1440を狙うも滞空時間が足りなかったため回しきれずに転倒してしまった。
 
しかし3本目、見事にアジャストさせてきた。前回大会で史上初のトリプルコークを決めたのも3本目だった。FSダブルコーク1440インディからCABダブルコーク1440ウェドルを完璧に決めると、クリップラー・ジャパン→BSダブルコーク900ウェドル→FSダブルコーク1260インディとルーティンを完遂させて93ポイントを見事獲得。ラストとなる4本目は、4ヒット目のBS900をさらにアップグレードさせBSダブルコーク1260ウェドルとし、すべてのヒットをパーフェクトに決めて96.66を叩き出した。自身のスコアをさらに塗り替えての圧勝となった。
 

AyumuHirano_DewTour

photo: Dew Tour/Mark Clavin

 
特筆すべきは、3本目のルーティンではエアの高さがアベレージで14.11フィート(約4.3m)だったところを、4本目では15.7フィート(約4.8m)にまで上げてきた点だ。3ヒット目のクリップラー・ジャパンが3本目では15.1フィート(約4.6m)だったところを、4本目では17.3フィート(約5.3m)にまで上げてきたことが大きな要因である。今シーズンのFIS大会でもお目にかかっていないバック・トゥ・バックのダブルコーク1440を決めた直後のヒットだけに、それほど完璧な連続技だったということだろう。
 
北京五輪では史上初のトリプルコーク1440を含めた超高難度なルーティンを決めるも2位というジャッジに世界中がざわついたが、その直後のラストランで同ルーティンをさらに高い放物線を描きながら決めて逆転金メダルを手繰り寄せた。そのシーンが思い出される瞬間だった。
 
もうひとり出場していた日本人ライダーの片山來夢は2本目に、FSトゥフェイキー・メロン→CABダブルコーク1080ウェドル→FS900メロン→BS900ウェドル→FSダブルコーク1260テールを成功させて90ポイント。4本目を終えて2位につけていたのだが、最終出走のテイラー・ゴールド(アメリカ)にマクられて3位に沈むも、ひさしぶりに表彰台に返り咲いた。
 
会場MCから歩夢のランについて尋ねられると、「That was crazy!(あれはヤバかった!)」とひと言だけ発し、オーディエンスを盛り上げるシーンも。コンテスト以外でも精力的にアメリカで活動している來夢は、スノーボードの本場でも人気者だ。
 

AYUMU-HIRANO-DEW-TOUR-2023-BIG-AIR-FINAL-YOSH-1-2

photo: Mike Yoshida

 
スーパーパイプ決勝直後に行われたハイエア&ベストトリックジャムでは、22.8フィート(約6.9m)の高さを叩き出してハイエストエア賞も獲得した歩夢。FISスノーボード世界選手権がジョージア・バクリアニで控えているため、多くのトップコンペティターは本大会に出場せず、3月1日(水)に行われる予選に向けて最終調整をしている。
 
しかし、今大会で魅せた歩夢のランは北京五輪で披露したトリプルコークは含まなかったものの、高回転スピンだけでなく魅せるこも重視されるプロ大会においてクリップラー・ジャパンで己を表現したうえで、バック・トゥ・バックのダブルコーク1440と同1260を完璧に高さを出して決めてきた。エアの高さも世界トップだ。今なお頂点に君臨するラン、そう言って語弊はないだろう。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Dew Tour

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