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AyumuHirano

COLUMN

前人未到の二刀流ライダーに挑む平野歩夢に立ちはだかる日本のルール

2021.03.08

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1週間ほど前。平野歩夢が3シーズンぶりにFIS大会に復帰し、見事優勝を飾ったというニュースがテレビやインターネットで報道された。一部国際大会という表現も見かけたが、この大会はワールドカップではなくその下位大会にあたる「US REVOLUTION TOUR」(以下REV TOUR)というアメリカの13~19歳までのティーンエイジャーを対象としたシリーズ戦だった。端的に言うと、アメリカ人若手ライダーの登竜門である。
 
REV TOURのホームページをご覧いただければわかるのだが、大会の趣旨として「グラスルーツレベルからエリートレベルの競技者への移行を目指すアスリートのための足がかり」と明記されている。以前に弊サイトで記事にしているので、興味のある方はご一読いただきたい。
 
周知のとおり、冬季オリンピックで2大会連続シルバーメダルを獲得している歩夢。3大会連続出場はもちろん、2022年2月の北京五輪ハーフパイプで頂点を目指す傍らで、2021年8月に延期された東京五輪スケートボード・パーク種目の出場も目論んでいる。国は違えど、言うまでもなくエリートレベルの競技者だ。
 
コロナ禍により2年連続で夏冬のオリンピックが開催されることも常軌を逸しているが、そのわずか半年というスパンで開催されるタイミングで二刀流ライダーとして両大会を目指す世界で唯一のアスリートである歩夢は、誰の目から見ても時間が足りない。しかし、スノーボード日本代表の選考対象にあたるワールドカップではなく、前述したREV TOURにしか出ることが許されない状況に置かれている。
 
東京五輪を目指すためにスケートボーダーとして活動していたことから、歩夢はSAJ(全日本スキー連盟)のナショナルチームに所属していない。そう、その一員でなければワールドカップに派遣できないというのだ。ワールドカップに出場してポイントを稼がなければ日本代表に選ばれることはないので、まずは北京五輪に出場する意思や姿勢を示す意味でも、アメリカ人の若手ライダーがしのぎを削る大会に出るしか術はなかった。これが日本のルールである。
 
そのルールは国よって異なり、歩夢と同様に東京五輪にスケートボードでの出場を目論んでいた平昌五輪ハーフパイプ金メダリスト、アメリカのショーン・ホワイトはまったく同じ条件ながら、今年1月にスイス・ラークスで開催されたW杯にアメリカチームより派遣されていた(X GAMESを優先するという理由で出場はキャンセル)
 
アメリカと日本の違いと言われてしまえばそれまでだが、そうした単純な話で終わらせたくない。特別扱いすることは日本の美徳に反するのかもしれないが、前人未到の二刀流ライダーへの挑戦をサポートする体制を整えることこそが、若者たちに向けて大きな夢を発信する一助になるのではないだろうか。
 
「これがスノーボードにおいて一歩目のスタートになるので、これを機に自信もつなげていって、この大会を通過点に今よりパワーアップできればと思っています」
 
REV TOURでの優勝直後、このような言葉を発した歩夢。東京五輪出場を目指しスケートボード世界選手権へ向けての準備が必須であり、それと並行するようにしてスノーボード日本代表に選考されるための手段を模索しなくてはならない。
 
「常に見えない方向へ向かっているような戦いをしている」──世界中でもっとも追い込まれているアスリート、平野歩夢の挑戦はここからが本番だ。

image: Kosuke Shinozaki text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

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