BACKSIDE (バックサイド)

BACKSIDE (バックサイド)

https://backside.jp/column-095/
14948

COLUMN

X GAMESが新たに提案するコンテスト要素よりセッション風味が強い大会とは?

2020.01.28

  • facebook
  • twitter
  • google

スノーボードは本来、自由な遊びでありスポーツ。そのことはフリースタイルという言葉に集約されているわけだが、1998年の長野五輪で正式種目に採用されてから競技として確立し、それ以降、トリックの高難度化が常に求められている。20年以上の歳月をかけて、人間の限界を押し広げながらスピンの回転数が増え、その回転軸が複雑化していったわけだ。
 
これらはハーフパイプやストレートジャンプといったジャンルを越えた話ではあるが、ハーフパイプの魅力はフロントサイドとバックサイドの壁を繰り返しながら、次はどんなトリックが飛び出すのかというルーティン(技の構成)が面白いわけだ。しかし、近年は各ライダーの特性や持ち技を把握していれば、そのなかのハイエンドなトリックを組み立てることになるのでルーティンが予想できてしまう。各ライダーたちが命を削りながら習得した複雑難解なトリックたちは完成度が高く、とても美しいものなのだが。反対に詳しくない人にとっては、何回転しているのか、どんな技なのかという理解に苦しむのかもしれない。
 
そんななか、BS360からスイッチメソッドを繰り出したり、回転数で言えば540と低回転スピンに該当するマックツイストを操るダニー・デイビス(アメリカ)に注目が集まってきた。高回転や複雑な回転軸という難易度を凌駕するカッコよさ、いわゆるスタイルに重きを置いたライディングであり、それでいて勝てるから。そうした表現力を重視した滑りに、ダブルコークや1080などの高難度トリックを組み込むことでメリハリが生まれ、どこで何が飛び出すのかという意外性をオーディエンスが楽しめるわけだ。
 
語弊を恐れずに言えば、そうしたダニーのようなライディングを啓発するべく今大会からデビューした“スーパーパイプセッション”と称されたコンテストがこれ。順位を決するわけだから競技であり大会なのだが、それ以上にライダーたちにとっては“魅せる”ことが重視される。先日お届けしたナックルハック(記事はこちら)とは異なるものの、同じくエンタメ要素が強いイベントだ。
 
気になるその中身は、トビー・ミラー(アメリカ)がスケートボードさながらの50-50グラインドや、エンドライン近くの低くなったウォール、通常であればスラッシュで雪煙をあげてフィニッシュする壁まで余すことなく使ってノーリー・フロントフリップを披露し会場を沸かせると、日本の戸塚優斗はFS540ノーズtoインディやCAB1080ノーズtoテールなど、2グラブで盛り上げる。
 
このようにオーディエンスをヒートアップさせ、さらにライダー同士が刺激を与え合うまさしく“セッション”を制したのは、ファーストヒットから超高難度なダブル・マイケルチャック(チャックフリップ)メロンtoインディを決めて会場の気を一気に惹くと、その直後にスイッチFSアーリーウープにスイッチインディを加えるという超意外性のあるルーティンを決めるなど、まさしくスーパーパイプセッションの醍醐味を見事に表現したテイラー・ゴールド(アメリカ)。初代金メダリストに輝いた。
 
優勝候補筆頭だったダニーは十八番のマックツイストの着地が合わずに本領発揮とはいかなかった。しかし、最終出走だったため本イベントのオオトリとなったランで魅せたのがトップ画像を飾っている、プラットホームにいる関係者を巻き込んでの妙技。こうした自由すぎる遊びだからこそ、フリースタイルスノーボーディングは面白いわけだ。
 
1260や1440は決してマネできないが、ここで飛び出した技は僕たち一般スノーボーダーたちでも手に届くものがたくさんある。しかもそれらは、世界のトップライダーたちがカッコいいと自信を持って繰り出しているものばかり。
 
これこそまさに、フリースタイルスノーボーディングである。

スーパーパイプセッション結果
1位 テイラー・ゴールド(アメリカ)
2位 ジェイク・ペイツ(アメリカ)
3位 トビー・ミラー(アメリカ)
4位 チェイス・ジョージー(アメリカ)
5位 戸塚優斗(日本)
6位 ダニー・デイビス(アメリカ)

RECOMMENDED POSTS