歴史あるアメリカのスキー・スノーボード会社が誇るクラフトマンシップの精神
時は1962年、舞台は米ワシントン州のピュージェット湾に浮かぶバション島。現在では主流のグラスファイバー製ボードに関する重要なストーリーから始まる。
創業者であるビル&ドン・カーシュナー兄弟は父とともに、家業のカーシュナー・マニュファクチュアリング社でグラスファイバー製の動物用スプリントやケージを作るビジネスを立ち上げた。発明家でもあったビルは非常に凝り性で、1950年代からグラスファイバー製スキーの開発実験を始める。いくつもの試作品を作るも、そのほとんどが使い物にならなかった。
1961年、ビルはウエットラップ製法を試みると見事成功し、翌年事業化に踏み切ることに。1960年にヨーロッパで産声をあげたグラスファイバー製スキーだが、アメリカでは初となるカーシュナー社のそれはフォームコアを採用しており、非常に軽く弾力性に富んでいた。北米の柔らかい雪で通用するスキーを作るというアイデアが功を奏したのだ。
1967年になるとスキー工場「K2(ケイツー)」として独立した。カーシュナー(Kershner)兄弟の頭文字と、世界第2位の標高を誇るカラコルム山脈の最高峰「K2」にちなみ命名。70年代後半~80年代にかけてフィル&スティーブ・メーアの双子スキーヤーがW杯やオリンピックで活躍したことで、K2はスキー市場におけるグローバルブランドとしての第一歩を踏み出した。
そして1987年、スノーボード界に参入。横乗り大国・アメリカのブランドだからこその英断であり、欧州が中心のスキーカンパニーの多くがその後、同じ道をたどることになる。これまでスキーで培ってきたノウハウをレースではなくフリースタイルに落とし込んだのだ。
1996-97シーズンに“スピンのために軽く、ランディングために頑丈なボード”というコンセプトのもと誕生したハイエンドボード「ZEPPELIN」に代表されるよう、多くの名作を世に送り出してきた。足のサイズがかなり大きかったアダム・メリマンとともに1993-94シーズンに開発した「FAT BOB」と名づけられた太めのボードが、ブーツサイズに合わせてボードのウエスト幅を選択するという概念を生み出す。それと同時に、女性向けモデルとしてウエスト幅の細いモデルがラインナップされるようになった。
2003年にK2 SPORTSと社名を変更。現在はワシントン州シアトルに拠点を置く。同州タコマのデモインに自社開発工場「ARC」があり、そこから1時間圏内の雪山でオンスノーテストができる。さらに、中国に自社工場を持つ強みを生かし、製造から管理までを一貫して行うことでクオリティを担保し、大量生産できる背景があることから低価格で高品質のプロダクトが提供できるのだ。
小さなガレージから始まり、アイデアを駆使して理想を追い求め、トライ&エラーを繰り返しながら常に上を目指して突き進んできた。当時と変わることなくイノベーションを起こし、クラフトマンシップを発揮しながらも献身を貫き通すという信念を忘れずに、今日ももの作りに励んでいる。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
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