BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

「僕はスピナーではない。トゥイーカーだ」──ギギ・ラフが貫く表現方法【創刊10周年特別企画】ISSUE 8「自分らしく、カッコよく」〈第2章②〉

2026.09.01

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スタイルとは何をするかではなく、どう表現するのかに宿る。
 
アラスカで自然地形と向き合い、グラブの細部にまでこだわりながら、独自のライディングを磨いてきたギギ・ラフ。自らを“トゥイーカー”と呼ぶ、その表現方法に迫る。

 
※以下、2019年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 

“トゥイーカー”としての表現方法

これまで様々なフィルムプロダクションと撮影活動を繰り返してきたギギ。なかでも彼を大きく成長させたのは、奇才ジャスティン・ホスティネック率いるABSINTHE FILMSとのフィルミングだった。それまではバックカントリーでの撮影といっても、巨大なキッカーやクォーターパイプを造成し、そこでのジャンプにフォーカスされていたのだが、ABSINTHEクルーとの撮影ではフリーライディングの聖地であるアラスカへと赴き、ありのままの雪山で自身を表現するスタイルへとシフトチェンジしていったからだ。
 
「初めてアラスカに行ったときに、スノーボードにおけるオーガニックスタイルというものを習得したと思う。ビッグマウンテンでの自分の能力を思い知らされたと同時に、僕は本当に下手くそなんだと実感したよ。アラスカの山々を自由に滑れるようになるには、もっともっと上手くならないといけないと思った。それからというもの大会には出場しなくなり、パークライディングもほとんどしなくなったんだ。とにかく山を滑り込むことで、ビッグマウンテンに対する恐怖心をなくそうと思っていたからね。アラスカにはたくさんのヒットポイントや手つかずの地形があちこちにあって、そこにヘリコプターで行くんだけど、どうしたら距離感がつかめるか、どうやったら快適かつ自信を持って安全に滑れるかについて、深く考えたよ。本当に新しい挑戦だった。ただ、徐々にスピードに対する判断力がついたし、雪がどうなっているかもわかるようになって、自然地形をどう攻略するかをイメージできるようになったんだ。すべてはアラスカで起きたのさ」
 
現在のギギが追求するバックカントリーフリースタイルの礎は、こうしたフィルミング活動のなかで培われてきたのだ。
 
「そもそもスノーボードには決まりきった模範みたいなものなんてない。だから大好きなんだ。未来に向けて、どの方向に進化していくべきかをすべて自分で決めることができるからね」
 
その言葉どおり、型にはまらないオリジナルスタイルで変幻自在なラインを描き、豊かな想像力を駆使して斬新なフッテージを残してきたギギだが、昔から変わらないことがある。それが、グラブやトリックにおけるこだわりだ。クリエイティブなラインどりやライディングスタイルに加え、アクションの細部へのこだわりがあったからこそ、ギギにしか表現できない独特のスタイルが生み出されたのだ。
 
「僕はいつも両足のバインディングの間をグラブするようにしているんだ。昔からバインディングの外側をグラブするのはオールドスクールだと思ってた。まぁ、今では人気のあるグラブのひとつになっているけどね。でも、僕はバインディングの間、もしくはノーズかテールの先端をグラブしてトゥイーク(身体をひねること)するのが好きなんだ。バックサイドエアもそうだけど、メソッドをやるときはいつもバインディングの間をグラブしているよ。ティンディやテイルフィッシュはまったくやらないね。あと、ランディングする直前までできるだけ長くグラブするように心掛けている。そうじゃないと、手が上がってしまってコントロールできていないかのように見えてしまうから」
 
2010年、彼はムービーの世界に生きるライダーであれば誰もが願うであろう偉業を成し遂げる。シグネチャームービーのリリースだ。VOLCOMの映像プロダクション・VEECOから『9191』が世に送り出されることとなった。同プロダクションからはテリエ・ハーカンセン以来のシグネチャー作品。ただ上手いだけでは実現できない。多くの人が惹きつけられる魅力がないと不可能なことである。それを可能にさせたのは、言うまでもなくギギのスタイルにほかならない。
 
また、先ほどの言葉のなかにティンディやテイルフィッシュというワードが出たので、いわゆるタブーとされているグラブについての意見を聞いた。
 
「最近、細身のパンツを履くライダーや、雪山登山の格好をした人たちがティンディやテイルフィッシュをやって、少しは認められているような空気があるのかもしれない。それでも僕は両方ともやらないよ。僕はボードの先端かバインディングの間しかグラブしない。自分の基本からは離れたくないし、僕はこのスタイルでここまでのキャリアを積んできたと思っているからね。もし誰かに“タブーなグラブをやって”と頼まれたら多分、今まで誰も見たことがないような新しいトリックをすると思う(笑)」
 
これまで約20年間に渡って、ムービーを介して自らを表現してきたギギ。スノーボードにかぎらず世の中には流行り廃りがあるけれど、彼も時代によってトライしたくなるアクション、つまり彼にとってのトレンドは存在するのだろうか。
 
「最近はラインがすべて見えたときは、完全走破を試みながらヒットポイントを繋いでいこうと思ってて。“普通にパウダーライドをすればいいじゃない?”って思われるかもしれないけど、やっぱり空中に飛び出すのが好きだし、グラブも好きなんだよね」
 
「フィルミングのときは、いつも違うトリックをしているよ。もしルックバックスタイルのフロントサイド360インディに大成功したら、同じシーズンにやることはないと思う。フロントサイド360ノーズや別のスタイリッシュなグラブをすることで難度を上げてトライしたいから。そうやって、これまで僕は常にグラブをレベルアップさせてきたんだ。もちろん、すべてのスピンとすべてのグラブを組み合わせてみたいって気持ちもある。要するに、僕の流行りっていうのはグラブをどんどん変えていくことだと思うんだ。あと、グラブのスタイルはスピードによっても変えてるかな」
 
本人は流行りがあると語るけれど、ギギと言えば小誌ISSUE 6「THE ART OF METHOD」で写真を紹介したように、やはりメソッドトゥイークのイメージが強い。とてもナチュラルかつスタイリッシュな印象を受けるのは、テリエやニコラス・ミューラーのようにバインディングの外側をグラブするヨーロピアンに多いメソッドトゥイークと、かつてのジェイミー・リンに代表されるバインディングの間をつかむアメリカンなメソッドトゥイークが見事に融合されているからだろうか。理由はともかく、どんなにスピーディなラインを刻んでいても、ギギがメソッドを放てば、まるで時がゆったりと流れる絶対時間のように感じられるから不思議だ。
 
「僕のスタイルは、トゥイークをまったくしないか、たくさんするか、どちらかなんだ。できるだけ身体をねじるようなスタイルはカッコいいと思うし、そういったライダーは“トゥイーカー(ひねり屋)”と呼ばれてるよ。個人的に自然地形でのスピンは得意じゃないから、僕はスピナーではない。僕は自分をトゥイーカーだと思っているよ」
 
その自己分析のごとく、ギギ自身が好むグラブにも身体をひねるという要素がプラスされたものばかりだ。
 
「一番好きなグラブは、バックサイドエアのメソッドなんだ。というのも、着地点をずっと見ていられるし、ボードをつかみながら身体のポジショニングはそのままに、思いのままにトゥイークできるから。たとえランディングのスイートスポットが見つけにくい場合でも、着地までにボードをコントロールするために板一枚分くらいの余裕があるからメイクしやすいんだ。次に好きなグラブはテールかな。理由は僕が最初に習得したからというのもあるし、最近はテールをつかんでいるときにフロントサイド・ノーズボーンで身体をひねったトゥイークスタイルを取り入れたり、グラブしていないほうの手が僕のスタイルを自然と醸し出していると思うから。グラブをするときにバランスを保つのが難しくなればなるほど、よりカッコよく見えると思う。だって、それは誰もができるようなことじゃないからね」

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
translation: Yoshifumi Nomura

 
 
CONTENTS
CHAPTER 1 グラブの起源をたどり、グラブの美しさを知る。
CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 1 スタイルの礎となる基礎力
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 2 “トゥイーカー”としての表現方法
▷CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 3 フリースタイルスノーボーディングの普遍的価値
▷CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 1 大会と撮影を両立させる二刀流ライダーの表現力
▷CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 2 ダニー・デイビスが選んだ 好きなグラブランキング・トップ 5
▷CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 3 ダニー・デイビスを直撃 オレとグラブ
▷CHAPTER 4 フリーライディングが面白くなる、グラブ談義。
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 8 「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」

 
スピンの回転数が増え続けても、変わることのないフリースタイルスノーボーディングの基本であり、永遠のテーマ“グラブ”。その起源や美しさをひも解きながら、空中でボードをつかむことで表現される“自分らしさ”を掘り下げた一冊。世界が認めるスタイリッシュライダーたちのグラブ論をはじめ、バックカントリーで繰り出されたグラブトリックをゲレンデで再現する企画や、シークエンス写真を用いた斬新なハウツーまで収録している。
 

 
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