BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

スタイルは基礎の上に磨かれる。ギギ・ラフが振り返るグラブの原点【創刊10周年特別企画】ISSUE 8「自分らしく、カッコよく」〈第2章①〉

2026.08.31

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グラブそのものがスタイルを生むのではない。基礎を磨き、自分なりの動きを追求した先に、その人だけのグラブが生まれる。
 
ISSUE 8「THE GRAB」第2章では、自らを“トゥイーカー”と呼ぶギギ・ラフにスタイルが形づくられていった過程を聞いた。まずは、ハードブーツでグラブを覚えた少年時代から、世界へ飛び出すまでを振り返る。

 
※以下、2019年に綴った言葉をそのまま掲載
 
 

スピンよりもグラブにこだわる男
自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。

端正なルックスとは裏腹に、超絶スティープな大斜面をアグレッシブに攻める。大自然が織り成すスパインで飛び跳ね、ロケーションを最大限に活かした豆粒のようなメソッドの写真だったとしても、それが誰なのかがひと目でわかるほどスタイリッシュに宙を舞う。欧州を代表するレジェンドライダーのひとり、ギギ・ラフ。
 
1990年代前半に確立したフリースタイルスノーボーディングの歴史とともにスノーボード人生を歩んできたギギは、シーンで議論され続けているスタイルについて常に考え、そして体現してきた。スピン以上にグラブにこだわり続け、25年あまりが経過した今。
 
自らを“トゥイーカー(ひねり屋)”と名乗るグラブの名手に話を聞いた。
 
 

 

スタイルの礎となる基礎力

オーストリア西部に位置するアウという山間の静かな農村で生まれ育ったクリスチャン“ギギ”ラフ。アルプスに近いロケーションということもあり、彼にとってウインタースポーツは幼少の頃から身近な存在だった。そんなギギ少年がスノーボードを始めたのは1991年、10歳のときのこと。
 
「兄が彼の友達とスノーボードを始めたんだけど、とにかく楽しそうにやっててね。共通の趣味を見つけたみたいな感じでさ。その頃の僕はクラブでスキーをしてたんだ。だけどレースばかりで……。それとは正反対に、友達と一緒にスノーボードを楽しんでいる兄がうらやましかった。僕にとってスキーは生活の一部だったから際立った存在じゃなかったけど、スノーボードは何か新しい興奮を与えてくれる存在のように感じたんだ」
 
兄の影響を受けないという弟は少ないだろう。ギギも自然な流れでスノーボードにまたがり、そして、のめり込んでいくまでに時間はかからなかった。ただ時代はフリースタイル草創期。レース文化が根強いヨーロッパだけに、この時代は特にハードブーツでフリースタイルスノーボーディングに取り組む人も少なくなかった。ギギもそのひとりだった。
 
「あの頃、BURTONのカタログをよく見てた記憶があるんだ。そこに出ているライダーが本当にカッコいいグラブをしててね。やっぱりスノーボードでジャンプするにはグラブが必要なんだって思ったよ。それからスケートボードについても学んだし、ほかのボードスポーツにも取り組むようになった。ボードスポーツをやっている人ってみんなグラブをするから、とりあえず僕もスノーボードでグラブの練習をしたんだ。だって、グラブは写真映えもするし、何よりカッコいいからね」
 
「そのカタログに載ってた写真からメソッドを学んだんだけど、当時はまだハードブーツだったからバックストレッチャーを使ってるみたいに、ボードを自分の後ろ側に持ってくるのがやっとでさ。初めてトライしたのはメソッドだったけど怖くて難しかったよ。だから、ハードブーツで最初に覚えたのは確かテールグラブだったと思う。テイクオフ後に手を下にしてボードをつかむだけだからね。そうそう、グラブの練習をするときは、いつも兄と一緒に雪の上にジャンプ台を作ってたんだ。もちろんフラットランディング仕様だったよ(笑)。そのときに練習してたハードブーツでのノーズグラブは本当に難しかったな」
 
その後、すさまじい勢いでスノーボードギアが進化するとともに、ギギのスキルもそれに呼応するかのように劇的なスピードでレベルアップしていくことになる。
 
「自分が思い描くグラブをするためには、ソフトブーツとソフトバインディングが必要だった。それなしでは本当にすべてが難しかったから」
 
10代半ばの多感な時期にさしかかったギギ。当時影響を受けたライダーは、誰もが憧れたスーパースターだった。
 
「あの頃はみんなジェイミー・リンのスタイルが好きだったよね。僕も彼のスタイルに憧れてたよ。あと、僕はスケーターの友達のスタイルにも惹かれてたんだ。ちょうどスケートボードを練習し始めた時期だったっていうのもあってね。僕がスノーボードに本気でハマり始めた頃、バギーパンツがすごく流行ってて、ものすごくほしかったのを覚えてる。そのようなパンツで決めるトリックはグラブじゃなくて、もっとスケートボードに近いオーリーとか、つかむにしてもスティンクバグ(ポークやシフトをしないインディ。カメムシの意)だったね」
 
「話は戻るけど、テールやメソッドの次にやりたかったグラブはスティフィだったよ。理由は空中で動きを出せるし、新しい表現ができると思ったから。しかも、技術も必要だし。ただ単に腕を下に伸ばしてボードをグラブするだけじゃなくて、もっとボードを回してアレンジしたり。そういったことはすべて、ジェイミー・リンから学んだと思ってるよ」
 
水を得た魚のように、雪山を自由に飛び跳ねるようになったギギ。イメージするグラブができるようになれば、次はスピンにもトライした。スノーボードに初搭乗してから、3シーズン目の冬だった。
 
「その頃の僕は180を練習していて、かなり身体をひねったミュートグラブをするのが好きだった。フロントサイド180をやるときは後ろ腕と肩を進行方向へ突き出せば、それを追うようにボードが動くから1回の動きでラクにグラブできるしね。バックサイド180はスティフィをするようにテイクオフしたら、ジャンプしたところを振り返ることができるようになって上手く回せたんだ。それを見ていた仲間からは、“本当に上手いね”“フリースタイラーだな”“クレイジーだよ”って、ポジティブなフィードバックをもらえるようになってさ。“クレイジー”っていうのは、みんながどうやってやったかわからないって意味を含んだ褒め言葉だと思っているんだけど、こういった僕のグラブスタイルはスノーボード雑誌に載っていた写真に似せようって練習した結果なのかもしれない」
 
華奢な身体ながら優れたボディバランスを持ち合わせ、好奇心旺盛で上達志向の強いギギは、雑誌やビデオにインスパイアされ、それを自分流に噛み砕いてスタイルを磨いていった。そして数々のビッグゲームにも特有のイージースタイルで立ち向かい、次第にスポンサーを獲得する腕前になる。
 
それから世界のスノーボードシーンで頭角を現すようになるまで、さほど時間を要さなかった。ただし、次々と難度の高いトリックをマスターしていく過程において、彼が大切にしていたのはベーシックなスキルとマインドである。
 
「やっぱり大切なのは基礎だと思うんだ。昔からパークにはほとんど行かず、自然の中でキッカーを探して滑りまわり、そこでジャンプの練習をしていたから今の僕があると思うし、それが今の自分にも活きている。そのような環境でスキルを磨いたことで、僕の基礎は固められていったんだ。昔はいつもソフトにランディングができるスポットを探してたよ。だって、エアバッグなんて持ってなかったからね。パウダーを緩衝材として使ってたんだ。ちゃんと練習してきた結果として基礎が構築され、そのうえに自分のスタイルが築き上げられていくのさ」
 
時は流れて2000年。KINGPIN PRODUCTIONSからリリースされた『DESTROYER』にてギギはパートを獲得し、北米を代表するメディアであるTRANSWORLD SNOWBOARDING誌が贈るライダー授賞式「RIDERS’ POLL AWARDS」において新人賞に輝いた。車のトランクから飛び出したキュートな顔立ちの青年が、パークやバックカントリーのキッカーで多種多様なグラブを披露し、独特の3Dスピンを放つ姿を覚えているという読者諸兄姉もいるかもしれない。
 
さらに、「NO TOKEN AMERICANS」と銘打ったヨーロッパの注目ライダー5人を特集した同誌の2001年2月号に、彼のインタビュー記事が掲載された。気がつけばムービースターに憧れていた少年は、世界中のメディアが注目する新進気鋭のライダーとして世界中のスノーボーダーから一目置かれる存在にまで成長していた。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
translation: Yoshifumi Nomura

 
 
CONTENTS
CHAPTER 1 グラブの起源をたどり、グラブの美しさを知る。
▶CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 1 スタイルの礎となる基礎力
▷CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 2 “トゥイーカー”としての表現方法
▷CHAPTER 2 自称“トゥイーカー”、ギギ・ラフがスタイリッシュな理由。 EPISODE 3 フリースタイルスノーボーディングの普遍的価値
▷CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 1 大会と撮影を両立させる二刀流ライダーの表現力
▷CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 2 ダニー・デイビスが選んだ 好きなグラブランキング・トップ 5
▷CHAPTER 3 ダニー・デイビスのグラブは、なぜカッコいいのか。 SECTION 3 ダニー・デイビスを直撃 オレとグラブ
▷CHAPTER 4 フリーライディングが面白くなる、グラブ談義。
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BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE
ISSUE 8 「THE GRAB ──自分らしく、カッコよく──」

 
スピンの回転数が増え続けても、変わることのないフリースタイルスノーボーディングの基本であり、永遠のテーマ“グラブ”。その起源や美しさをひも解きながら、空中でボードをつかむことで表現される“自分らしさ”を掘り下げた一冊。世界が認めるスタイリッシュライダーたちのグラブ論をはじめ、バックカントリーで繰り出されたグラブトリックをゲレンデで再現する企画や、シークエンス写真を用いた斬新なハウツーまで収録している。
 

 
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