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COLUMN

日本スノーボード進化論──國母和宏が残してきたもの【創刊10周年特別企画】

2026.06.13

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創刊号を読み返す前は、國母和宏という日本を代表するスノーボーダーの歩みを改めて辿る作業になると思っていた。しかし、10日間に渡って再読しながら制作ノートを書き続けた結果、見えてきたものは少し違っていた。
 
もちろん、カズが主役だ。4歳でスノーボードに出会い、史上最年少プロとなり、世界の頂点に立ち、日本のシーンに革命を起こした男の物語であることに変わりはない。だが、その軌跡を追うほどに浮かび上がってきたのは、「スノーボーダーとしてどう生きるのか」という問いだった。
 
「あれやりたい」
 
すべての原点はそこにあった。
 
親から与えられた英才教育でも、世界王者を育てるための計画でもない。ただ純粋に、目の前にあるカッコいいものに憧れ、それをやりたいと思った。その感情が人生を決定づけた。
 
やがて、その想いは世界へ向かう。まだ育成システムも整っていない時代に、自ら世界へ飛び込み、自ら道を切り拓いていった。そして、世界で認められたいという目標は、日本のシーンを変えたいという問題意識へと変わっていく。
 
今回、改めて強く感じたのは、そのスケールの大きさだった。カズは世界で認められることを追い求めながらも、その視線は常に別の方向へも向いていた。
 
日本のシーンを変えたい──そのためには自分ひとりでは意味がない。だから仲間を引き上げ、STONPを立ち上げ、日本各地を巡り続けた。
 
当時はその活動をリアルタイムで追いかけていたが、いまの視点から読み返すと見え方が変わる。
 
現在、日本人ライダーたちはバックカントリー、ストリート、コンテストとあらゆる領域で世界から注目されている。その礎がどこで築かれたのかを考えたとき、ISSUE 1の後半で描かれた挑戦の中に、その原点を見出すことができる。
 
最終章で描かれていたのは、そうした壮大な物語の終着点ではない。世界最高峰のムービースターとなり、日本のシーンに革命を起こした男が、自信を失い、引退すら考えていた。しかし最後に彼を支えたのは、スポンサーでも結果でも名声でもない。昔からともに歩んできた仲間たちだった。
 
振り返れば、この創刊号は成功譚ではない。好きなことを貫き、世界へ飛び込み、自分の信じる道を進み続けた結果、仲間やシーンを動かし、ひとつの文化に影響を与えた男の記録である。
 
そして、もうひとつの発見があった。創刊10周年特別企画は、アーカイブ連載ではない。10年前の記事を懐かしむ企画でもない。2016年の自分が何を見て、何を信じ、何をスノーボードの価値だと考えていたのかを掘り起こす作業だった。
 
だから、各号の総括コラムを「日本スノーボード進化論」と呼ぶことにする。
 
「國母和宏という生き様」を辿ることは、ひとりのレジェンドライダーを称えるためではない。その生き様が、現在の日本スノーボードへどのようにつながっているのかを読み解くためだ。
 
ISSUE 1を通して見えてきたのは、世界から注目される現在の日本スノーボードが、突然生まれたものではないという事実だった。
 
その進化の過程を紐解く旅は、まだ始まったばかりだ。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

 
 
創刊10周年特別企画

ISSUE 1「KAZU KOKUBO ──國母和宏という生き様──」

INTRODUCTION はじめに

▶EPISODE 1 “世界のカズ”を築き上げた「幼き夜の大冒険」

▶EPISODE 2 好きなことに本気で打ち込み勝ち取った「史上最年少プロ」
EPISODE 3 競い合った先に見えた「グローバルライダーとして生きる道」
EPISODE 4 言葉の壁を越えて“本場”で学んだ「プロフェッショナルの流儀」

▶EPISODE 5 世界を相手に孤軍奮闘する中で掲げた「日本を変える存在になる」
EPISODE 6 日本中からバッシングされた男が「本当に伝えたかったこと」

▶EPISODE 7 北米文化に挑み続けたサムライがたどり着いた「世界の頂」
EPISODE 8 仲間とともに苦難を乗り越えて成し遂げた「國母和宏の夢」

▶EPISODE 9 高すぎる意識とスキルが招いた「失われた自信と求められる価値」

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