BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

【連載Vol.3】ストリートに生きる長澤颯飛の束の間の休息。斑尾の「デザインされた地形」に描くスムースなライン

2026.03.25

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シーズンインから2ヶ月以上にわたり、ストリートスノーボーディングに明け暮れてフッテージを残し続けてきた長澤颯飛。撮影漬けの毎日を送ってきた彼が、休息の地として選んだのは北信エリアだった。
 
今回の旅の目的は、特定の山に縛られず、コンディションを読み切って最高のゲレンデを狙う「都市型パウダーハント」の実践だ。ストリートに生きる颯飛が休息の地で求めたのは、単なるリラックスではなく、自身の滑りの核となる「気持ちよさ」をダイレクトに感じられるフィールドだった。
 

2月某日、長野駅前に降り立った颯飛。ここから最高の休息がはじまる

 

「長野駅前からつながる」至高のパウダーライディング

颯飛がまず向かったのは、本連載Vol.1で紹介した、長野駅前の「Travel HUB Nagano City」だ。ここは近隣に9つあるゲレンデの降雪状況をリアルタイムで確認できる、スノーボーダーのためのベースキャンプである。Vol.2で紐解いた「冬型が緩み、北風が吹くタイミングこそが斑尾の狙い目」という気象予測と、リアルタイムでモニターに映るライブカメラ映像を照らし合わせ、「明日は斑尾がよさそうですね」と確信を得た颯飛。その場で斑尾マウンテンリゾートとタングラムスキーサーカスを自由に往来できる斑尾マウンテンパスを購入し、明日に備えた。

 

そのままリフト乗車できるICチケットを購入できるので、翌朝リフト券売り場に並ぶ手間を省ける。都市型ステイでも十分朝イチを狙えるのだ

 

翌朝、宿泊先のホテルでゆっくりと朝食を済ませてから出発

 

グッドコンディションへの期待にはやる気持ちを抑えながら、車で北上すること50分。目の前には予想どおり、完璧なコンディションに仕上がった斑尾が広がっていた。戦略的な立ち回りで、ノートラックのドライパウダー「マダパウ」を射程に収めた。
 
「もともと僕は、ゲレンデを気持ちよく滑るのが一番好きなんです。日頃の撮影でも楽しめるスポットを選ぶことが多いですが、それでも、緊張感のあるスポットにトライすることもある。今回の斑尾トリップはコンディションにも恵まれたおかげで、本当に解放されて、気持ちよくスノーボーディングができました」

 

ほどよく水分の抜けたマダパウ。戦略的な都市型ステイが、スノーボーダーに最高のワンターンを約束する

 

斑尾では地形をつなぐ「Make It Smooth」なラインが楽しい

颯飛がいま、自らのライディングテーマに掲げているのが「Make It Smooth(スムースな滑り)」だ。これは彼が多大な影響を受けているプロサーファーの小林直海氏の哲学に由来する。
 
「一緒に撮影をしているDP(DAPS主宰者)の影響で、小林さんのサーフィンの映像を見るようになったんです。見れば見るほど、気持ちいいラインを追求したくなったんです。サーフライクな流れのある滑りを自分のスタイルに持ち込みたい。斑尾は地形やうねりが豊富で、そのフローのあるラインが描きやすいのが魅力ですね」
 
この想いは斑尾の代名詞であるツリーランコースのひとつ、ナチュラルハーフパイプが続く「SAWA I」で鮮やかに体現された。壁から壁へ、アップダウンを繰り返す動きの中に、ひと筆書きのようなラインを刻んでいく。

 

華麗なエアを交えながらSAWA Iを流す颯飛。3つあるSAWAの中でもっとも長いコースなので、Gを感じながら上手く滑り切ることができたときの達成感はひとしおだ

 

タングラム側の迂回路「プライマリーライン」も、無数に続く壁地形を波に見立て、止まることのないサーフライドを楽しむことができるエリア。タングラムと斑尾をつなぐ第1リフトで手軽に回せるこのコースは、アップス&ダウンのようなイメージで楽しむことができる。

 

眼下にタングラムのボトムエリアを望みながらターンを刻む。序盤はレギュラーのフロントサイド、後半はバックサイドの壁が多く、飽きのこないコースだ

 

また颯飛は、このようなラインを気持ちよくつなぐサーフライクな視点が、これまでこだわってきたストリートスノーボーディングにも新たな進化をもたらしたと語る。
 
「アイテムがいくつか続くようなセクションの場合、極端に言うとこれまでは、アイテムの間はブレーキしかしていなかったんです。そこにワンターンを入れて、そのターンでスピード調節をするようなイメージを最近は持つようになりました。アイテムごとになんのトリックをやるかだけ考えていたところに、今はアイテムをどうつなげるかまで考えて、トータルなラインとして見ることを、最近は追求しています」
 
単発のフリースタイルアクションに満足するのではなく、トップ・トゥ・ボトムですべてをつなぐ。休息中に斑尾の地形で見せたリラックスしたライディングにさえ、彼の進化をうかがい知ることができた。

 

掲げるテーマどおりのスムースなライディングで沢地形を駆け抜ける

 


滑り手によって「デザインされた森」。颯飛を唸らせる自然地形の満足感

SAWAをはじめとする斑尾のツリーランエリアの人気が高まっていることには、雪質以外にも明確な理由がある。斑尾の森は、ローカルスキーヤーであり開拓者である北村明史氏ら、実際に斑尾を滑る人間たちの手によって「滑り手視点」で間伐されているのだ。
 
このラインでジャンプすればここにランディングするから、この木は切っておくといった、滑り手ならではの基準で整備された森は、自然の美しさを保ちつつも、スノーボーダーに無数のラインの選択肢を与えてくれる。颯飛はそのデザインされた自然の中で、ストリートで培った鋭い嗅覚をもとに、次々と遊び場を見つけていった。
 
「最近はストリートの目線でロードサイドを見るようにしていて、光の入り方を見ながら歩いていける距離のツリーランを探したりしています。今日も、あの木陰でスプレーをあげたらキレイだろうなとか、吹き溜まりはないかなど、常に探しながら滑っていました」

 

時刻はすでに午後だったが、太陽光に導かれるように木の根元のパウダーへ当てこむ。ツリーランエリアは広大なうえに間隔も広いので、賞味期限は長い

 

「パウダーウェーブ2」の起伏に富んだ森や、第2クワッドリフト沿いに造成される自然地形を活かしたテレインパーク「フリーライドパーク」を滑り終え、彼は一日をこう振り返った。
 
「すごく自然の中で遊ばせてもらった感覚です。今日はひさびさにレールなどの人工物に入らなかったですね(笑)。自然地形だけでここまで満足感のあるゲレンデもなかなかないと思います。タングラムはボードの踏み応えを感じながら、斑尾側は沢地形に合わせながら、それぞれに気持ちよさがあって、飽きなかったですね。コンディションも当てられたし、最高の休息になりました」

 

第2クワッドリフト沿いに位置するフリーライドパークも斑尾の名物ポイント

 

束の間の休息を終え、颯飛はまたストリートスノーボーディングの世界へと戻っていく。前夜の情報と科学的な予測を重ね合わせ、そして滑り手によってデザインされた地形が可能にする、自由自在なライン。長野駅をハブとして掴みとった最高の休日だったわけだが、これが、これからの日本の雪山を楽しむための新常識のひとつになるだろう。

text + photos: Yuto Nishimura

MADARAO MOUNTAIN RESORT | 公式ページはこちら

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