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平野歩夢が自分と向き合い続けたスノーボード人生の「歩み」を描くドキュメンタリー『AYUMU』公開
2026.01.28
平野歩夢の日常に密着したドキュメンタリー『AYUMU』が公開された。競技のハイライトを並べるのではなく、歩夢が自分と向き合い続けてきた時間そのものを記録している。本人も「日常や、自分自身と向き合い続ける姿を長期間にわたり記録していただいた」と語り、スノーボードだけでなく“日々をどう過ごしているのか”や家族との歩みも含めて観てほしいとしている。
15歳で挑んだソチ五輪で日本人スノーボーダーとして初のメダルを獲得する以前から、歩夢の歩みを追い続けている。それを支えてきた家族。そして、楽しむことよりも自らを追い込み続けてきた歩夢の精神力。弊メディアでも、歩夢の歩みを数多く綴ってきた。
初めて挑んだソチ五輪では銀メダルを獲得した直後の「楽しかった」という言葉が強く印象に残っている。世界中から追われる立場として「金メダルしかない」と自らに言い切って挑んだ平昌五輪では、内容では勝っていたようにも見えたが結果は銀に終わり、悔しさを滲ませた。

平昌を終え、次に選んだのがスケートボードだった。東京五輪へ向けてスノーボードから距離を置き、延期の1年を含めてスケートに集中する。結果として得たのは、技術の引き出しだけではない。“追われる側”から“追う側”へ立場が変わり、もう一度チャレンジャーとして戻ってくる感覚である。その精神が、トリプルコークという未知だった領域を現実にし、北京五輪で幼少期からの夢だった五輪金メダルへつながっていった。
その過程に通底するのは、ケガと恐怖心である。アイシーなハーフパイプはコンクリートのように硬く、転倒の代償は非常に大きい。15歳で挑んだソチの頃から痛みを抱え、平昌へ向かう道程でも大ケガに見舞われた。『AYUMU』が映すのは、メダルの色ではなく、そうした現実と折り合いをつけながら“今日も滑る”という選択を積み重ねる姿だ。だから映像は、勝った瞬間より、勝負の外側にある時間のほうが生々しい。
そして今、その“外側”が再び重みを増している。ミラノ・コルティナ五輪を目前に控えた2026年1月、歩夢は「LAAX OPEN」で大きなクラッシュを喫し、複数箇所の骨折などの負傷が報じられた。
『AYUMU』にこの出来事は収録されていない。しかし、だからこそ、映像が記録してきた「自分と向き合い続ける」という時間が、いま現在の歩夢にもつながっていることがわかる。勝つためのドキュメンタリーではない。彼の歩みそのものを確かめるドキュメンタリーである。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




