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レジェンドが惚れ込んだ山「スキージャム勝山」を久保田空也が攻める【後編: 5,800mのフリーライドが楽しめる】
2023.03.17
ファンタジーサイトはフリーライディングの宝庫
前編で紹介したイリュージョンサイトに加え、ファンタジーサイト、バラエティーサイトという3つのエリアで構成されているジャム勝。それぞれのエリアにメインとなるクワッドリフトが1本ずつ架かっており、フリーライディングが楽しいファンタジーサイトへは、バラエティークワッドとファンタジークワッドを乗り継ぐことによってアクセスできる。
この日の空也と島田氏はリフトに朝イチ乗車してファンタジーサイトに到着すると、まず狙ったのはファンタジーBコース。メローな斜面に点在する緩やかな地形を拾いながら、横に振った大きなカービングターンで気持ちよさそうにセッションを繰り広げていた。
ライダーズライトに広がる壁が楽しいファンタジーAコースと、コース幅が広く最大斜度も20°ほどで、カービングやグラウンドトリックが楽しいファンタジーBコースで、それぞれお気に入りのラインを見つけることがこのエリアを楽しむコツ。滑走途中でそれぞれのコースを行き来することもできるため、フリースタイルに遊べるポイントを発掘してみてはいかがだろうか。
「ファンタジーBコースの緩めの斜度と広い斜面のコンビネーションが気に入りましたね。かなり横に振ったターンをしても、端から端まで使い切ることができないくらい広くて。(Aと比べて)こっちは地形的にのっぺりはしているけど、カービングとかグラトリとかには最適なのかな、と感じました」と、空也も太鼓判を押すファンタジーサイト。パークがあるのもこのエリアなので、壁地形でフリースタイルアクションを繰り出したりフラットバーンでグラウンドトリックを披露してからパークへ向かう、という流れを作れるファンタジークワッド回しがスノーボーダーに人気なのだ。
ジャム勝がローカルを虜にする秘密
ファンタジーサイトを滑り下りて林道コースを抜けると広がっているのが、ゲレンデ下部に位置するバラエティーサイト。このエリアはファンタジーサイトと比べてもさらにコース幅が広く、フラットなバーンになっており、バラエティーコース最下部では幅100mに達する場所も。初心者が細かいエッジングを覚えるのに最適なフラットバーンが用意されている。
前編で紹介したイリュージョンサイトからバラエティーサイトまで、トップ・トゥ・ボトムでの総滑走距離は西日本1位である5,800mを誇り、その中にパウダー、カービング、フリースタイルのそれぞれの要素が散りばめられているジャム勝。レジェンドライダー、デイブ・ダウニングが惚れ込んだツリーランコースも含めて、オールラウンドにスノーボーディングを楽しむことができる要素が揃っている。西日本に位置しながらも、滑り手のニーズに余すことなく応えることができるゲレンデとなっているのだ。
ジャム勝ローカル歴が30年以上となる島田氏によると、近年はサーファーたちが横乗り繋がりでスノーボードを始めるのが流行しており、ジャム勝にもそのようなスノーボーダーが多いとのこと。確かにイリュージョンサイトとファンタジーサイトでは、スノーサーフスタイルで流麗に雪上を駆るスノーボーダーが多く見られた。多種多様な遊び方ができるポテンシャルを秘め、特性の異なる3エリアから構成されるゲレンデであるからこそ、様々なスタイルのスノーボーダーが集まる。ジャム勝でのライディングは新しいスタイルとの出会いや、自身のライディングを見直すきっかけになるのかもしれない。
そして、ジャム勝へ行くのであれば、エスペランサ福井まで足を延ばしてみてはどうだろう。ジャム勝から車で1時間ほど離れた福井市内に位置する同ショップは、ジャム勝ローカルの心強い味方。直近のゲレンデコンディションの情報を集めるもよし、遊べるポイントやそのポイントに合った道具のアドバイスを受けるもよし、自身のライディングスタイルを相談するのもよし。やはり楽しいゲレンデクルージングには、そのゲレンデに精通するローカルショップが不可欠である。島田氏も午前中はジャム勝でライディングを楽しみ、午後は自身の経営するこのショップに顔を出すことが多いという。
「お店は午後からオープンしているので、午前中はプロダクトのテストも兼ねてジャム勝で滑っていることが多いです。お店のお客さんともしょっちゅう顔を合わせていますよ。ゲレンデで顔をお見かけすれば、お声がけすることもあります」
西日本に位置しながらレジェンドが惚れ込むツリーランエリアを擁し、総滑走距離5,800mの中にフリースタイルスノーボーディングを楽しむための要素が盛りだくさんなジャム勝。15年ぶりの空也の訪れを歓迎するように降雪にも恵まれ、最高のコンディションを満喫することができた。さらに、ジャム勝のポテンシャルを最大限引き出してくれるプロショップもある。初心者から上級者までレベルを問わずにスノーボーディングを楽しむ環境が揃ったゲレンデが、ここ「スキージャム勝山」なのだ。
text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: HOLY