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フリースタイルボード「ZERO」が象徴する30年間変わらないRIDEのアイデンティティとは
2022.12.26
弊誌および弊ウェブマガジンをご愛読いただいている読者諸君なら承知の事実だろうが、RIDEが誕生した90年代前半というのはムービーシーンがヒートアップし始めた時代。『ROADKILL』などの名作が生まれ、フリースタイルスノーボーディングが急成長した時期である。そうしたバックグラウンドのもとRIDEは、オリンピック種目として競技色が強まるなど、この30年間で変遷を繰り返したシーンの中でブレずに歩み続けてきた。ZEROが紡ぐ、RIDEのこれまでの歩みに迫る。
ボーダーレスでクリエイティブなRIDEチーム
ボーダーレスでクリエイティブなRIDEチーム
日本の女子ハーフパイプシーンの第一人者であり、現在は北海道北広島市市議会議員を務めながらスノーボードの啓蒙活動にも精を出す滝。12月の前半、ゲレンデオープン前でも雪があればハイクアップして初滑りを楽しみ、7月中旬まで残雪を求め道内を転々とする生粋のスノーボードジャンキーだ。そんな彼女に「いつまでもRIDEにまたがっていられるスノーボーダーでありたい」と言わしめるのは、RIDEチームのみなが共有する純粋なスノーボードへの情熱があるから。
「私は北海道のことをよく知っているはずなのに、RIDEチームと滑るとまったく知らないゲレンデに来た感覚になるんです。もちろん、彼らにとっては初めて滑るゲレンデのはずなのに、すっごいところ行くから(笑)。どんなゲレンデでも遊ぶところ見つけちゃう、動物的感覚っていうか、とにかく遊び方が上手くて。私にも優しく、いろいろなことを教えてくれました。みんなスノーボードのことで頭がいっぱいだから、性別とか人種とか、そういうことは何にも関係なかったです。彼らと一緒に動いているときが一番成長したな、って思える時期でしたね」
RIDEとグローバル契約を結び、ラッセル・ウィンフィールドらUSチームとともに滑っていたときのことを思い返しながら、滝はこのように語った。昨今「ジェンダーレス(生物学的な性差を前提とした社会的、文化的性差をなくそうとする考え方のこと)」という言葉がよく取り沙汰されるが、この言葉がまだ一般に浸透する前の時代から、「スノーボードが好き」という純真な想いで集まったチームの雰囲気は、図らずともジェンダーレスであったようだ。加えて、先述のラッセルは世界初のアフリカ系アメリカ人プロスノーボーダー。スノーボードが好きであれば、性別も人種も関係ない。また、ライダーたちがフラットな環境で自分なりのスノーボーディングを楽しんでいるのと同様に、プロダクトの開発に携わるエンジニアたちも、もちろんスノーボードに対して情熱を持っている。そこから生み出されるプロダクトに、滝は彼らのこだわりを感じているという。
「普通エッジって板の周りをぐるっと取り囲むだけじゃないですか。けど昔、ノーズ部分のソール面にエッジを食い込ませているモデルがあって。アクセサリーみたいな感じで、エッジでソール面に十字架をあしらっていたんですよ。あと、何色にも切り替えしてあるようなソールデザイン。滑走性の面で言えばああいうのを嫌がる人もいるのかもしれないけど、みんなフリースタイルなスノーボードが好きだから、そういうセンスいいデザインを見たときには、オシャレでカッコいいなって思いましたね」
既存の価値観にとらわれることなく、スノーボーダーたちが自らの目線で、本当にほしいものを作る。そのスタンスは創業当初から変わることのないRIDEのアイデンティティだ。
創業当初から変わらないフリースタイルスノーボーディングを楽しむ姿勢
創業当初から変わらないフリースタイルスノーボーディングを楽しむ姿勢
契約ライダーとして大会に出場するのであれば、自身の名誉や達成感を得ることはもちろん、ブランドの認知度向上のためにも勝つことが求められる。そんな重圧の中でクリーンなライディングを成功させる必要があるライダーにかかるプレッシャーは、相当なものだろう。しかし、滝は93年のUS OPENに出場した当時を振り返りながら、とても楽しそうに語ってくれた。米ワシントン州のシアトルに拠点を構えていたRIDEチームが赴いたのは、US OPENの開催地であるバーモント州ストラットンマウンテン。大陸横断のロードトリップをしながら会場まで向かったそうだ。
「私はそのときハーフパイプの選手だったから、大会にすごく集中していて、気合いも入っていたんです。でも、チームのみんなはそんな感じじゃなくて(笑)。ラッセルなんか完全に遊び感覚で、大会の1本目がパイプだったんですけど、1ヒットもせずにまっすぐ、カッコつけて滑り下りてきたんですよ。でも、それを見てみんなで何やってんだよ、って笑っている感じ。『スノーボードは楽しいもの! なんでパーティーやんないんだ?』っていう雰囲気が、RIDEチームにはずっとありました」
ラッセルはUS OPENという大舞台で“楽しむこと”を見せつけたのだ。目の前でその純粋にスノーボードを楽しむ姿を見た滝もまた触発され、空中遊泳を楽しんだ。
「RIDEチームに、スノーボードは楽しむものだっていうことを教わった気がします。やっぱり大会のときは気持ちが内向きになってしまって、勝たないとっていう意識が強くなって追い込まれていたんです。でも、そんな私を見て当時のチームマネージャーが試合前に、『クミコ、楽しんできて!』って声をかけてくれて。ラッセルたちはもちろん、チーム全体からスノーボードは楽しい!っていう雰囲気がありましたね」
そんな彼女が当時、ハーフパイプのライディング時に乗っていたボードが「FREESTYLE」というモデル。先述したとおり、このモデルのソールグラフィックが今季のZEROにも採用された。
30年間変わらないアイデンティティを象徴するモデル「ZERO」
30年間変わらないアイデンティティを象徴するモデル「ZERO」
創業当初から現在に至るまで、革新的なプロダクト開発を続けるRIDE。生み出されるプロダクトにはスノーボードはスポーツではなくカルチャーだ、と言わんばかりの遊び心満載なデザインと、スノーボードをどんなコンディションでも楽しむためのテクノロジーが詰め込まれている。そんな30年間変わらないRIDEのアイデンティティを象徴するグラフィックを採用したZEROは、特にパークやストリートでの使用を視野に入れたモデルがラインナップされている「ストリートコレクション」を構成する一枚。
アイシーなバーンに造成されたパークや、タイトなアプローチという場面が多いストリートで足元を安定させるため、アシンメトリカル・クアドラティック・サイドカットが採用されている。トウに比べて少しだけ深いヒール側のサイドカットが、不安定になりがちなヒールでのアプローチを安定化。シェイプはツイン・ハイブリッド・ロッカーと呼ばれており、キャンバー構造をベースとし、ノーズとテールにロッカーが入っている。この部分が余分な引っ掛かりを抑え、ジビングマシンたるポテンシャルも備えているのだ。アイキャッチ画像(左)を飾った新進気鋭のストリートライダーである小野崎の愛用ボードであることからも、その信頼度が窺える。
また、ZEROはジェンダーレスボードであることも追記しておこう。142cmから161Wcmまで用意されており、体重に合わせて自由にサイズチョイスができるのだ。
ZEROは誰にでも、どこでも、どんなときでも、楽しいスノーボーディングを提供する。