BACKSIDE (バックサイド)

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INTERVIEW

歌いながら手すりやコンクリートと対峙する社会人チーム「グーフィーズ」を知る

2021.08.03

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言語を操る人間は左脳が発達しており、その左脳が右半身を司っているため、人類の9割程度が右利きだと言われている。利き足が後ろにくるケースが多い横乗りスポーツでは、スノーボードにかぎった話ではないがレギュラーフッターが多いのは言うまでもないだろう。
 
だからか、「グーフィーズ」という名前にインパクトを感じる。その実態は知らなかったが、弊サイトでおなじみのクリエイティビティに富んだ滑りを得意とするPUTこと島方啓輔(アイキャッチ画像中)から連絡があり、グーフィーズについて説明したいとのこと。そっか、グーフィーの彼が所属しているチームなのね。そう理解しながら約束を取りつけた。
 
しばらくすると、筆者の住む街にグーフィーズがやってきた。自己紹介や他己紹介を聞いていると、なかなかコイツら面白いじゃないか。というわけで、グーフィーズの実態に迫ってみることにした。
 
彼らの主戦場はストリート。言うまでもないが、街中の手すりやコンクリートと対峙するアレだ。少しの油断が大ケガを招きかねない。時には命を落とすリスクさえも隣り合わせ。
 
しかし、グーフィーズの3人は口を揃えて、その“楽しさ”を伝えたいと強調する。
 
「現場の雰囲気はとにかく楽しい。ストリートの場合はけっこうピリピリした雰囲気のところも多いけど、グーフィーズの現場は異色な気がします。みんなで歌いながらリップやランディングを作るクルーってほかにはあまりなさそう(笑)」
 
こう語るのはグーフィーズの長男、田中一年(アイキャッチ画像左)。いかつい見た目とは裏腹に青山学院大学卒というギャップ(失礼)が魅力の田中は現在、東京・神田にあるスノーボードショップのスタッフとして働きながらライダー業に精を出している。
 

KazutoshiTanaka

rider: Kazutoshi Tanaka photo: kentaroufuchimoto.com

 
「板が折れてしまい、神田のお店に行ったときに接客してくれたショップ店員がキッカケです。接客時にブランドのヒストリーやライダーの紹介など、ネットには載っていないリアルな情報を教えてくれました。とにかくカッコよかった。自分もそんな店員になりたいと思い、スノーボードショップで働くようになったんです」
 
田中はこうした想いを胸に店頭に立ち、スタッフとしてもスノーボードの楽しさを伝えている。リアルな言葉でその魅力を発信する伝道師となった。
 
そして、これまでもBROWN RATSのメンバーとしてDVDを世に出すなど、ストリートでの撮影活動に注力してきた前出の島方が、グーフィーズの次男。以前、弊サイトで紹介した(記事はこちら)ように過去には犬用車椅子の設計を手掛けるなど社会貢献事業に従事する傍らで、ライダー活動を行っている。
 
近年は個人としてフルパート動画を制作。アーカイブ記事をご覧いただければわかるのだが、唯一無二の独創的な滑りを武器に和製スコット・スティーブンスと言わしめるほどの実力者であり、海外メディアにも多数取り上げられた実績を誇る。だが、島方は「物足りない」と。
 

KeisukeShimakata

rider: Keisuke Shimakata photo: Photograpy樹

 
「世間の流れからDVDが売れなくなっていきましたが、ストリートの熱は覚めることなく自分でフルパートを編集して配信するようになりました。その頃、以前からよく一緒に滑っていた田中がライダーになったと言っていたので、ストリートに巻き込むことに(笑)。その流れで、彼の紹介でトモロウ(鈴木智郎)が加わりました。ふたりとも気のいいヤツらで、のびのび撮影ができたんです」
 
先述した田中の言葉につながっている。「ひとりではできないストリート撮影。仲間がいてこそはじめて映像に残せる」と島方は持論を展開させながら、ここに“楽しさ”を加えることが重要だと言い切った。
 
グーフィーズの三男である鈴木(アイキャッチ画像右)も社会人ライダー。16歳でスノーボードと出会い魅了されると、ライダーを目指して山にコモり修行する日々を送る。25歳で念願だったショップライダーとして活動を始めるも、すぐに就職する道を選んだ。
 
「22〜26歳まで、冬は湯沢でディガーのアルバイトをしていました。山にコモり始めた当初から、コモるのは26歳までと決めていたんです。25歳から1年間はライダー活動に専念し、26歳で就職してからは社会人ライダーになりました。朝、東京から新潟のゲレンデに移動してお客さんたちと一緒に滑ってから、夜はストリートの撮影をして、翌朝に帰ってそのまま仕事へ行くなど、体力的にはとても厳しいです。でも、社会人ライダーはいい映像を残すことが無理だと思われたくないし、それを言い訳にしたくない。社会人でも立派なライダー活動ができることを知ってほしいと考えるようにになりました」
 
このように熱く語る鈴木はちょうどこの頃、グーフィーズに参加する。彼らと一緒に活動することで、スノーボードが大好きだという気持ちをシェアしあいながら、映像制作に没頭。すると、自然と社会人ライダーとしての苦しみは消え去り、スノーボードライフを純粋に楽しめていたそうだ。
 

TomoroSuzuki

rider: Tomoro Suzuki photo: Yuhei Yamada

 
さらに鈴木は続ける。
 
「まだまだスノーボードのスキルを上げたい。映像を観ていただいた方に“ストリートって楽しそう”、“ゲレンデで滑ることだけがスノーボードじゃないんだ”、そして、何よりも“滑りに行きたい!”と思ってもらえる映像作品を作りたい。こうした環境を与えてくれたグーフィーズのカッコいいアニキふたりには感謝しています」
 
「全員グーフィーってなかなかいないよね、って言いながら意気投合して、3人で動く機会が増えていきました。今の時代、いち個人としてスノーボード業界で名を馳せるのは厳しいかもしれないけど、グーフィーズの3人でいれば新しいムーブメントを起こせそうな気がします」
 
長男・田中の言葉を受けて、次男・島方が次のように締めくくった。
 
「面白くて新しいスノーボードを発信していきたい。その中には滑ろう会などのイベントや試写会ツアーも含まれていて、一般スノーボーダーの目に留まる場所づくりまでやっていきたいと考えています。グーフィーズがキッカケとなってこれまで以上にめり込めるような、スノーボードの楽しさを表現していきたいんです」
 
東京五輪で男女ともに金メダルを獲得して大きな話題となったスケートボードを通じて“ストリート”というワードは周知されたが、その本質はいまだ理解されていない。スノーボードのそれは一般社会に知られてさえいないだろう。さらに言えば、一般スノーボーダーにも浸透していない現実がある。
 
なぜ雪山を滑るための道具に乗って、街中で滑るのか。なぜソールを傷つけまでして、手すりや壁をコスるのか。グーフィーズを知ることで、そうした凝り固まった思考から解放されるかもしれない。

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