FEATURE
【創刊10周年特別企画】ISSUE 4「スタイルこそすべて」布施忠インタビュー〈第4章〉スタイルを変えることなく絶対にあきらめない
2026.07.24
布施忠にとってスタイルとは、滑り方である前に生き方そのものだった。撮り手とともに作品を残し、若き日に託された言葉を胸に、プロスノーボーダーとして己を貫き続ける。最終章では、「NEVER GIVE UP, KEEP THE STYLE」という言葉に込められた、布施忠の核心に迫る。
※以下、2017年に綴った言葉をそのまま掲載
EPISODE 4
スタイルを変えることなく絶対にあきらめない
LSPとして活動を始めた当初から「オレは滑ってナンボ。太郎さんがいなかったら、オレはライダーとして成立しない」と公言している忠。バックカントリーという舞台に聴衆を招くことができない以上、表現者として生きていくには、それを映像や写真に残すほか術がない。現在、映像だけでなく写真撮影も越路氏が行っている。
「太郎さんのことは、オレが17歳くらいから知ってます。その頃の太郎さんはまだライダーでしたね。ZEROSENっていうスケートボードのビデオを作ってた流れで、スノーボードでもFUCKERSっていう東北を中心としたムービーを作ってたんですよ。それでHEARTを始めるときから一緒にやるようになったんですけど、あの頃は撮影クルーが分かれてたから、オレは太郎さんと撮影することはあまりなかったんです。一緒にガッチリやるようになったのはLSPからですね」
「映像一つひとつのクオリティは妥協したくないし、内容も濃いものにしたい。作品として残していくためには、オレだけの考えじゃ絶対にダメなんです。だから常に、撮るポイントによってどんな滑りをするべきか太郎さんに聞くようにしてます。ポイントやロケーションによってベストなアングルがあって、それによって映える回転方向やグラブが絶対にあるから」
2011-12シーズンからスタートしたLSPは、今季で7シーズン目を迎える。スノーボーダーとして20年以上の付き合いであり、滑り手と撮り手の密な関係になってからも7年目ということになる。自己表現を生業とするプロスノーボーダーにとって、この関係性はライダー生命に関わるほど重要だ。
「この6年間、ふたりのペースを合わせてやってきた感じです。最初の頃は全然合わなかった。“じゃあ、あそこから飛ぶよ”って言っても、その“あそこ”が全然違ってたり。でも、年々そういったすれ違いはなくなっていきました。だから、撮影の効率がグッと上がったんです」
いくら滑りが上手かったとしても、フィルマーやフォトグラファーとの意思疎通が明確に図られていなければいい作品は残せない。空中遊泳の軌道はすさまじく大きく、それらが繰り出されるロケーションは大自然が織り成す一期一会の絶景である。だからこそ難しい反面、人生をかけるほど面白いのだろう。
忠は2017年10月8日で40歳を迎えた。一般的にこの年齢で歳を重ねていけば、そのパフォーマンスは落ちていくのが常である。しかし、これまでのライダーとしての経験値も踏まえ、撮り手とのあうんの呼吸により切り取られる作品を武器に、プロスノーボーダーとして、いち表現者として、さらなる高みを求められるということなのだろうか。
「そうですね。だから、まだまだ面白いですよ。作品を創るっていうのは」
そして、2017年11月に最新作が発表される。これまでのライダー人生を映像としてまとめ上げた、プロスノーボーダー・布施忠としての集大成的な作品である。そのタイトルは『NEVER GIVE UP, KEEP THE STYLE』。
「この言葉をくれたのがヒデキだったんです。あいつが死ぬ前に、VOLCOMのTシャツにその言葉を書いてオレにプレゼントしてくれて。そのTシャツを今までずっと部屋に飾ってるんですけど、今回のタイトルを決めるときに太郎さんと話をして、これにしようってなりました。『NEVER GIVE UP, KEEP THE STYLE』──ずっとこの言葉を胸に秘めてやってきたから。“オレたち、本当にそうやってきてるよね”って」
表現者・布施忠。ヒデキがこの世を去ってから20年あまり経過したが、一切ブレることなく、この言葉どおりに突き進んできた。その想いがこの作品に込められており、この作品にフリースタイルスノーボーディングの本質が宿っているはずだ。そして忠は、これからも己のスタイルを貫いて生きていく。
「だからブレたくないし、ブレるはずがない。話し方とかはだいぶ丸くなったかもしれないけど、芯にあるモノは昔から何も変わってないですね」
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
CONTENTS
Tadashi Fuse
▶EPISODE 1 命と引き換えに教えられた生きる道
▶EPISODE 2 世界を認めさせた自己表現力
▶EPISODE 3 新たなるステージへ
▶EPISODE 4 スタイルを変えることなく絶対にあきらめない
Shuhei Sato
▷EPISODE 1 遊びながら競い合った少年時代
▷EPISODE 2 オリンピックという大舞台を目指す決意
▷EPISODE 3 プロ活動と引き換えに手に入れた滑走力
▷EPISODE 4 オリンピックはスノーボードの一部
Toshiki Yamane
▷EPISODE 1 鮮烈すぎる中学デビュー
▷EPISODE 2 華やかな舞台よりもリアルな現場を求めて
▷EPISODE 3 自由のために戦う生き方
▷EPISODE 4 自由だからこそ全力で滑る意義
___
本記事は、2017年発行『BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE ISSUE 4「Style is everything──スタイルこそすべて──」』より抜粋掲載。創刊10周年特別企画では、本号の中核を成す布施忠、佐藤秀平、山根俊樹の3つのストーリーを全12回にわたり公開していく。スノーボードにおける“スタイル”とは何か。紙媒体ならではの写真表現や誌面デザインとともに、2017年当時の日本のスノーボードシーンの空気感も感じとってもらえれば幸いだ。





