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YONEXにしかできない匠の技が詰まったカーボン製プレミアムボードたち
2024.11.29
では、スノーボードにおいてはどうか。一部にカーボン素材を組み込んで強度や弾力を高めたボードはあるが、ノーズからテールまでカーボン素材をふんだんに使用したボードを手掛けているのは、これまでカーボンと向き合い続けてきたYONEXをおいてほかにない。カーボン製ボードの魅力、ぜひ知ってもらいたい。
フレックスやトーションを自在に操れるカーボン技術
まず、昨年の記事にも綴られているように、「カーボン=硬い」という認識は早々に捨て去ったほうがいい。もちろん、反発性に深く関わってくる「硬さ」という要素も、カーボン素材の魅力のひとつである。だが、繊維の種類、繊維を置く角度、繊維の編み方、シートの積層枚数などによって、「ある方向には硬く」「ある方向には柔らかく」といった人為的な調整を細かくできることこそ、カーボンで構成されたボードの持つ最大の特性であると断言したい。
これまでYONEXが培ってきたカーボン技術を用いれば、ハリのあるフレックスながら、トーションだけを柔らかくすることも可能だ。ボードをねじりやすいがゆえにターンしやすく、初心者や脚力に自信のない人でも扱いやすい。それなのに高速滑走時には安定性があり、反発性を活かした高さのあるオーリーも仕掛けやすい。そんな相反する願望を叶えてくれる魔法のようなボードを生み出せるのだ。
また、ウッドボードにはない特性もカーボンボードは備えている。ウッドの場合、たとえ同じ樹種を用いたとしても、気温や湿度、日照時間といった生育環境の違いによって、どうしても個体差が生じてしまう。結果、スノーボードにカタチを変えたときに、同じモデルでも硬さなどにバラつきが出てしまうのだ。だが、人の手によって作り出されるカーボン素材に、そういった問題が起きる心配はない。つまり、モデルごとで品質の均一化が図れるということ。だからこそYONEXは、ボードのフレックスとトーションにおいて、かなり細かい数値を打ち出しているのだ。
究極のカーボンボードはライダーだけのものじゃない
オールラウンドボードのSMOOTHは、レングスが154の場合、フレックスが93でトーションが87。142ではフレックスが81でトーションが74とメーカーカタログに記載されている。サイズによって設定を変えているのは、もちろん乗り手の体重や脚力を慮ってのこと。
ちなみに、先ほどから挙げている数値はYONEX内での相対的なものであり、100に近づくほど硬くなる(ライダーの要望で100を超えるモデルもある!)。多くのボードブランドでは、フレックスを10段階に分けているが、YONEXがこれほどまでに細かな数値を公表しているのは、同一モデルの同レングスにおける均一性への自信の表れでもある。
また、同じレングスのSMOOTHでも、2000年代前半のフレックスやトーションの数値と今のそれらとでは、大きく異なるそう。これは時代の移り変わりとともに、ユーザーのニーズに合わせてフレックスとトーションを調整しているからだ。
そんなSMOOTHの気になる乗り味を、歴代の様々なYONEXのボードに試乗されてきた、宮城・仙台のボードショップ・EXTREMEで店長を務める鈴木喜洋さんに話を伺った。
「もとから軽量でしたが、ノーズとテールのギリギリにまでハニカムを取り入れたCRIC(遠心力軽減コア)を採用してから一段とスイングウエイトが軽くなり、取り回しがさらによくなりました。昔に比べると振動吸収性やしなやかさもアップしていますし、トーションも柔らかくなったと感じます。フリーライドの人気が高まり、今はターンを大事にされているスノーボーダーが増え、そういった方たちのニーズに寄り添った結果だと思います。今はワイド版もラインナップされていて、ボードを立てた深いターンをしたい方にも提案しやすいモデルとなっています」
また、フリースタイルボードのSTYLAHOLICは、154のレングスでフレックスが90、トーションが80。143ではフレックスが77、トーションが69となっている。SMOOTHよりもトーションが柔らかいのは、トリッキーなアクションでのボードをねじる動きをより容易にするためだ。
SMOOTH同様にCRIC構造を採用し、カーボンを立体成形したカーボンスクエアチューブは内蔵されていないものの、エッジの近くにはバドミントンのシャフトのようなラウンドチューブを組み込むことで反発性が高められている。ボード幅もややワイドなため短いレングスでも安定感があり、トーションを使いやすいのが特徴だ。
どのようなスノーボーダーに適しているモデルなのか、EXTREMEの鈴木さんに聞いた。
「セットバックがゼロのツインシェイプながら、ターン性能が非常に高いです。ハリのあるフレックスなのでパイプでもラインがズレにくいですし、パークでも中・上級レベルのアイテムにしっかり対応してくれる。CRICのおかげでスイングウエイトが軽く、スピンの回転数も稼ぎやすいと思います。パウダーライドや地形遊びではディレクショナルのSMOOTHに軍配が上がりますが、このボードでも何の問題もなく遊べますよ。特にスイッチスタンスでもいろいろ遊びたい人、スピンなどのトリックを入れながら滑りたい人にはオススメです」
さらに鈴木さんは、YONEXの試乗会に参加された方が、そのクオリティの高さに惚れ込んで乗り替えを検討するケースもあったと言う。
「ウチのお客さまの大半は、すでに『YONEX=競技用ボード』というイメージを持っていないと思います。純粋にテクノロジーがぎっしりと詰まったブランドだというイメージのほうが強いんじゃないですかね」
「上達」「快適」を第一に考えている人にジャストフィット
カーボンの特性のひとつである「軽量性」。これは、パウダーライドやバックカントリーにおいて武器となる。ライディング時における軽快さだけでなく、ハイクアップ時に背負うことを考慮すると、長時間に及ぶ山行では疲労の軽減に繋がるからだ。
パウダーボードの代表格・LUVARTHは、浮力アップのためにノーズ面積を広くしているが、そこにハニカム構造を多く取り入れたCENTROidを採用することでノーズの軽量化を図り、新雪滑走時であっても圧雪バーンと同じ重心位置でのライディングを可能にしている。EXTREMEの鈴木さんのインプレッションは次のとおり。
「ボリュームのあるノーズとコンパクトなテールというシェイプはリリース当初から変わっていませんが、CENTROidのおかげでノーズが軽く感じるんです。手のひらを上にして、そこに両足間の真ん中がくるようにボードを乗せると、ボードが水平になるんですよ。おかげで、後傾にならずにパウダーを滑れるので、後ろ足の太ももだけがパンパンってことにはなりません。しかも、軽い力でテールを動かせるからツリーランも楽しいし、壁地形での当て込みでは抜け感が気持ちいいんです。私の場合、沢地形が多くてツリーランも楽しめるゲレンデに行くときは154に、オープンバーンが多いところでは158に乗りたくなります。レングスによって遊び方が変わるのも面白いですよね」
YONEXではモデルにもよるが、一本のスノーボードに約10種類のカーボン素材を使用しているという。そして、そのカーボンという素材自体も今なお進化を続けている。つまり、それはYONEXのボードが常に進化しているということを意味する。特許技術をはじめ、幾多のテクノロジーが凝縮されたYONEXのカーボンボード。自身のライディングを第一に考えるスノーボーダーにとっては、さらなるレベルアップをサポートし、快適なライディングを約束してくれる最高の相棒となるだろう。
そして、声を大にして言いたい。YONEXのボードは上達してから乗るものではなく、上達するために乗るべきボードなのだ、と。決して、アスリートのためだけに作られたボードではなく、誰にとっても頼れるボードなのである。
最後に、カーボンボードはヘタりづらいのも魅力。それこそ、オリンピアンがハードに乗り続けても、性能が劣化しづらい高耐久性を備えているのだ。つまり、それは言い換えれば、買い替えのスパンが延びるということでもある。ギアの価格が高騰している昨今の状況を考えると、それらの寿命が長いということは、ライディングだけでなく経済的にも頼れるというわけ。そういった面においても、YONEXのカーボンボードはプレミアムな価値があると言って間違いない。