FEATURE
村瀬心椛、山田琉聖、鈴木萌々が語る、自分が自分であるために。オリンピックとSalomonと私
2026.10.21
同じ舞台に立った3人だが、スノーボードとの向き合い方は、それぞれ違う。心椛は、自分らしく滑る喜びを取り戻した。琉聖は、幼い頃からSalomonとともに自分らしさを磨いてきた。萌々は、これから自分だけのスタイルを追求していく。
そんな彼らの足元には、Salomon(サロモン)がある。
琉聖が愛用するHUCK KNIFE PROと、心椛、萌々が選んだNO DRAMA。異なる特性を持つふたつのボードには、オリンピックに合わせて共通のグラフィックが施された。フランス語で「チーム」「仲間」を意味するEQUIPE。その名を冠した特別なコレクションには、挑戦、団結、歓喜という思いが込められている。
自分が信じる滑りを貫くために、何を大切にしてきたのか。オリンピックを終えた今、Salomonとともに歩む3人の言葉から紐解いていく。
人生の半分を、ともに歩んできた──山田琉聖
「一緒に歩んできた、という表現が一番近いかもしれません」
山田琉聖にとって、Salomonは単なるスポンサーではない。ハーフパイプを始めた10歳の頃から、スノーボード人生をともにしてきた存在だ。
小学4年生のとき、札幌・ばんけいで開催された育成プログラム「NEXT HERO PROJECT」のセレクションに参加し、1期生に選ばれた。当時はオリンピックへの憧れこそあったものの、明確なビジョンがあったわけではない。ただ、スノーボードが楽しくて、もっと上手くなりたかった。
プログラムを通して、中井孝治らトップライダーたちと滑る機会を得た。
「当時は何も考えず、ただ滑っていました。今振り返ると、本当に恵まれた環境だったと思います」
やがて琉聖は、自分がどんなスノーボードをしたいのかを考えるようになる。
「僕の場合、最初に『勝つ』が来るわけではないんです。まず自分のやりたい技を考えて、その中で勝てるルーティンをつくっていく。自分の好きなものを詰め込んだ滑りなんだと思います」
その象徴が、マックツイストだ。
トリプルコークが勝敗を左右する現代のハーフパイプで、トラディショナルなマックツイストを追求する。だが、その選択が誰からも理解されたわけではない。
「ジャッジから『所詮B5だからね』と言われたこともありました。でも、好きなことをやっているだけなので、やめようとは思わなかったですね」
それでも、自分の好きなトリックで世界と戦うためには、何が必要なのか。
「じゃあ高く飛べばいいのか、と思いました」

琉聖のエアの高さは、反骨精神から生まれたものなのかもしれない
回転数を増やすのではなく、高さとスタイルを磨く。そうしてマックツイストは、琉聖を象徴するトリックになっていった。
オリンピックで世界を驚嘆させた独創性を育んだ、もうひとつの転機がある。
中学時代、年齢制限やコロナ禍で大会に出られない時期が続いた。さらにケガで滑れなかった間、さまざまなライダーの映像を見て、自分がやりたいことを考えた。
そこで挑戦したのが、同世代ではほとんど誰も取り組んでいなかったスイッチバックサイドの回転方向だった。
「まわりにやっているライダーがいなかったので、自分もやってみようと思ったんです。中学3年生くらいが、ひとつの分岐点だったと思います」
その挑戦は、やがてスイッチバックサイド・アーリーウープ・ダブルロデオ900へと昇華する。
そして迎えた、ミラノ・コルティナ五輪。決勝3本目、琉聖はCABダブルコーク1260からスイッチフロントサイド・アーリーウープ・ダブルロデオ1080、ダブルマックツイスト1080へとつなぐ。さらにスイッチマックツイストを挟み、最後はスイッチバックサイド・アーリーウープ・ダブルロデオ900。常軌を逸した難度と独創性を備えた、5ヒットのルーティンだった。
「あのルーティンは本当に難しいんです。特に最初の3つをつなぐのが大変で。でも、決勝2本目で手応えをつかめたことが自信になりました」
5ヒットを転倒なく完走し、92点をマーク。その時点で銅メダルが確定した。
自分が好きなトリックを追求し、誰とも違う滑りを磨き続けてきた。その積み重ねが、オリンピックの舞台で実を結んだ。
その足元を支えてきたのが、SalomonのHUCK KNIFE PROだ。
中学生の頃、大人用のボードへ移行する際に複数のモデルを試し、自分でもっともしっくりくる一本を選んだ。それ以来、ずっと乗り続けている。
「極端に硬い板が好きなわけではないんです。でも、ある程度の張りはほしい。いろいろ試したなかで、HUCK KNIFE PROが一番しっくりきました」

山田琉聖
ボードの長さも、長年ほとんど変えていない。使い慣れた道具への信頼が、難しいトリックに挑むときの安心感につながっている。
そして、10歳からともに歩んできたSalomonとの関係を、琉聖はこう振り返る。
「たくさんのライダーと関われたからこそ、今の自分があると思います。NEXT HERO PROJECTは、本当に自分を育ててくれた場所ですね」
これからも、琉聖は自分がカッコいいと思える滑りを追い求めていく。
「自分の好きなことを、自分が得意なことにしてきた。自分の『好き』を貫いたからこそ、今があると思っています」
自分だけのスタイルを、これから──鈴木萌々
小学5年生から本格的にスノーボードの練習を始め、中学3年生で「NEXT HERO PROJECT」に参加。そして高校3年生で、初めてのオリンピック出場を果たした。
鈴木萌々は短期間で、世界のトップシーンへと駆け上がった。その急成長を支えてきたのがSalomonだ。だが、本人が語る道のりは、決して順風満帆なものではない。
「オリンピックには出たいと思っていました。でも、本当に行けるとは思っていなかったんです」

鈴木萌々
3歳からスノーボードに乗っていたものの、幼い頃はむしろスノーボードが嫌いだったという。小学5年生から本格的に練習を始め、大会にも出場するようになったが、結果はなかなかついてこなかった。
中学2年生の冬には半月板を負傷。復帰後も大会で思うように滑れず、自分には競技が向いていないのではないかと悩んでいた。
それでも、スノーボードを続けたかった。
セレクションを経てNEXT HERO PROJECTの4期生となり、高校進学後は通信制の学校に通いながら練習に打ち込んだ。海外遠征の機会も増え、少しずつ結果を残せるようになる。
「海外の大会を経験するたびに、自信がついていきました。技術も上がったと思いますけど、一番成長したのは気持ちの部分ですね」
高校1年生の終わりには世界ジュニア選手権ビッグエアで2位。その後、Salomonのジャパンチームへとステップアップした。
大きな転機は、2025年1月のクラーゲンフルトで訪れる。ワールドカップ・ビッグエア参戦3戦目。それまでの2戦は思うような滑りができず、結果も残せていなかった。そこで萌々は、表彰台を狙うことよりも、まず自分のトリックを確実に決めることに集中した。
「それまでとは戦い方も考え方も変えました。まずは自分の技を決め切ろうと思って滑ったら、3位に入れたんです。そこで一気に自信がつきました」
もともとはネガティブに考えがちで、練習中も不安ばかりが先に立っていた。しかし、この表彰台を境に、失敗を恐れる気持ちとの向き合い方が変わった。
「今でもネガティブなところはあります。でも、『まあ、なんとかなるでしょう。2本あるし』と思えるようになりました」
そうして迎えたミラノ・コルティナ五輪。初出場ながら、ビッグエアで6位入賞を果たした。ただし、萌々自身はその結果に満足していない。
「まだ世界で通用したとは思っていません。同じ技をやっても勝てない。着地もアプローチも空中も、すべての完成度をもっと上げないといけないと感じました」
その挑戦を支えているのが、SalomonのNO DRAMAだ。高校1年生の夏から乗り始め、今では海外遠征でも欠かせない一本になった。特に信頼しているのは、スピードと安定感。

信頼を寄せるボードにまたがり、優雅に宙を舞う萌々
「ビッグエアでは、ほかの選手がスタートから直滑降しているところを、私はターンしながら降りても十分にスピードが出るくらい。速すぎて、調整が怖いときもあります(笑)」
今夏からはボードを3cm長くし、より安定感を得られるセッティングを選んだ。成長する自分の滑りに合わせて、道具との関係も変化している。
そして、オリンピックを経験した今、萌々には新たな目標がある。
「Salomonのライダーは、みんな本当にカッコいいんです。琉聖くんも、心椛ちゃんも、ジャッド・ヘンクスも、マディ・マストロも、一人ひとりに自分のスタイルがある。私も、そういうライダーになりたいです」
オリンピックを経験したことで、萌々が目指すライダー像も、少しずつ明確になってきた。
「今はまだ、自分のスタイルが十分にあるとは思っていません。これからつくっていきたい。いつか『鈴木萌々といえばSalomon』と思ってもらえるようなライダーになりたいです」
もう一度、スノーボードを好きになる──村瀬心椛
「Salomonに、本当に救われました」
ミラノ・コルティナ五輪でビッグエア金メダル、スロープスタイル銅メダルを獲得した村瀬心椛。しかし、その栄光にたどり着くまでの4年間は、決して平坦なものではなかった。
北京五輪ビッグエアで銅メダルを獲得したあと、彼女は一度、スノーボードを心から楽しむ気持ちを見失いかけていた。思うように結果を残せない時期が続き、ハードギアのスポンサーがない期間も経験した。
「本当に苦しかったです。なんでメダルを獲ったのに、受け入れてもらえないんだろうって」
結果を出さなければならない。その思いが強くなるほど、心椛は自分自身を追い込んでいった。
そんなとき、手を差し伸べたのがSalomonだ。2024年の移籍は、単なるスポンサーの変更ではなかった。
「最初に、一番大切にしてほしいのはスポンサーじゃなくて、自分の家族だって言ってくれたんです。今までにない考え方でした」
日本だけでなく、グローバルチームのスタッフやライダーたちも、心椛を温かく迎え入れた。結果だけではなく、ひとりのスノーボーダーとして尊重してくれる環境。その居心地のよさが、張り詰めていた気持ちを少しずつ変えていった。
「それまでは、みんなのために結果を残そうって考えていたんです。でも、一番は自分のためにスノーボードをしないと。まず自分が楽しまないといけないなって」
自分のために滑る──そう考えられるようになった頃から、心椛はライディングのスタイルやファッションにも、より強くこだわるようになった。
単に難しいトリックを決めるだけではない。自分がカッコいいと思えるスノーボードを表現したい。その気持ちを取り戻したことが、滑りにも表れていった。
足元を支えるNO DRAMAも、そんな心椛の感覚に自然となじんだ。

ロケーションを度外視した寄りの写真でも、心椛のライディングスタイルは映える
「自分がここで力を入れたいとか、雪を飛ばしたいと思ったときに、全部反応してくれるんです。自分が動きたい方向に動かせる。それが一番合っているところだと思います」
バインディングは、SalomonのHIGHLANDERを使用。硬めのフィーリングを好む心椛は、ボードだけでなく、ブーツやバインディングも、自分の感覚に合うものを選んでいる。
大会でも、バックカントリーでも、心椛が乗るのはNO DRAMA。その理由は、どんな状況でも自分の思いどおりに操れるという、絶対的な信頼にある。
「まるで身体の一部みたいです。このボードがあれば、どんなロケーションでもなんとかなる感じですね」
そして迎えたミラノ・コルティナ五輪。北京五輪当時の自分を、心椛は「自信がなくて、どこか弱気な滑りだった」と振り返る。しかし、今回は違った。
「絶対にやってやるぞっていう、めちゃくちゃ強い気持ちでした」
ビッグエアでは、それまで苦手としていたフロントサイド方向の高難度トリックにも挑んだ。公開練習で何度も繰り返し、自分のなかに確かな自信を積み上げていった。
迎えた決勝。1本目、バックサイド・トリプルコーク1440ミュートを操りながら、グラブしていない右手を天にかざして特大ジャンプを決めた。そして3本目。前足をポークさせながら、フロントサイド・トリプルコーク1440インディをパーフェクトストンプ。その瞬間と、得点が表示されるまでの時間は、今も忘れられないという。
「想像以上の点数が出て、びっくりしました。あのときは、金メダルを獲った実感もあまりなかったです」

村瀬心椛
幼い頃から夢見てきたオリンピックの金メダルを手中に収めた今、心椛が見据えるのは次のメダルだけではない。Salomonの若手ライダーたちと交流する機会には、トリックの回転数だけでなく、スノーボードのカッコよさを大切にしてほしいと伝えている。
「カッコよくないとスノーボードじゃないと思うんです。自分たちが憧れてきたものを、下の世代にも伝えていきたい」
かつて映像作品に夢中になり、憧れのライダーたちのスタイルを追いかけていた心椛は、今、その文化を次の世代へつなぐ立場になった。
「Salomonとは、イベントだったり映像制作だったり、いろんなことを一緒にやっていきたい。もちろん、このボードでこれからも活躍していきたいです」
自分のために、心からスノーボードを楽しむ。その気持ちを取り戻した心椛は、金メダルの先にある、新しい夢へと滑り始めている。
HUCK KNIFE PRO S/LAB EQUIPE
HUCK KNIFE PRO S/LAB EQUIPE

▷全長: 156cm
▷有効エッジ長: 121.6cm
▷ウエスト幅: 25.5cm
▷セットバック: 0cm
▷サイズバリエーション: 149、153、159、156W、159Wcm
▷価格: 102,800円
トップレベルのパークライダーたちの要求を具現化した、ハイパフォーマンスを発揮するフリースタイルボード
NO DRAMA S/LAB EQUIPE
NO DRAMA S/LAB EQUIPE

▷全長: 146cm
▷有効エッジ長: 111.6cm
▷ウエスト幅: 24.7cm
▷セットバック: 0cm
▷サイズバリエーション: 139、143、149、152cm
▷価格: 86,900円
ジャンプ、トランジション、レールを攻略するために設計された、プレミア・ウィメンズ・パークボード
HOLOGRAM EQUIPE
HOLOGRAM EQUIPE

▷カラー: HOLOGRAM-EQUIPE
▷サイズ: S〜L
▷価格: 52,800円
優れた正確性、快適性、そしてボードフィーリングを提供するフリースタイルバインディング
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)




