BACKSIDE (バックサイド)

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https://backside.jp/ride-with-the-people_2024/
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FEATURE

歴史に埋もれた名イベント「RIDE WITH THE PEOPLE」を復活させたRIDEが届けたい価値観とは

2024.03.17

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バックカントリーからストリートまで幅広く、フリースタイルスノーボーディングを通して自己表現を続ける実力派ライダーたちを束ねているRIDE SNOWBOARDS(ライド スノーボード)。スケートボードからの影響を色濃く受けたニュースクール全盛期、1992年に産声を上げた同ブランドだが、自分たちのボードのファンを作るために翌年93年、アメリカで行ったロードトリップがあった。これがオリジナルの「RIDE WITH THE PEOPLE」である。

さる2月24日、長野・エイブル白馬五竜に日本全国、果ては遠くアメリカからRIDEチームが集結した。彼らのこの日の目的は、RIDEというブランドの世界観を日本のファンへと届け、RIDEを愛するみなでスノーボードを楽しむこと。30年の時を経て日本で復活した「RIDE WITH THE PEOPLE JAPAN TOUR 2024」、その舞台裏をお届けする。

隠れた名イベント「RIDE WITH THE PEOPLE」はなぜ生まれたのか

「まだ生まれて間もないRIDEブランドのボードに乗っているライダーは誰なのか。SNSなんてもちろんない時代、スノーボーダーたちがそういう情報を得るのは難しいことでした。バンに乗り込んで、アメリカ全国のスノーリゾートを転々とし、チームライダーたちが各地でスノーボードを楽しむ。実際にスノーボーダーたちに会いに行くことが、当時RIDEブランドを知ってもらうための一番いい方法だったんです。実際、チームがそのリゾートを離れるとすぐに、その近辺から『RIDEのスノーボードがほしい』と、オフィスに電話がかかっていたそうです」

こう語ってくれたのは、RIDEのUSブランドマネージャーであるジム・リンバーグ氏。このイベントに参加するためアメリカから来日していた彼に、なぜこのイベントが日本で開催されたのか、話を聞いた。

「このイベントを復活させることこそが、パンデミックやデジタルの世界から抜け出して、みんなで実際にスノーボードを楽しむためのいいキッカケになると思っていたんです。日本のRIDEチームも同じ考えを持っていたことも重なり、『RIDE WITH THE PEOPLEと名づけたイベントを、今一度開催しよう』ということになりました」
 

1993年当時のイベントポスター。RIDEが歩んできた30年間を振り返るドキュメンタリー作品『ROUGH AROUND THE EDGES』制作のため、ジム氏が過去のアーカイブを探っているときに見つけたそう

 
スノーボードブランドらしい“プロダクト”と“デザイン”という軸に加えて、創業当初から“チーム”と“コミュニケーション”という概念も大切に、30年間歩み続けてきたRIDE。パンデミックや暖冬などネガティブなニュースの多い昨今のスノー業界だが、こんなときだからこそ、実際にライダーとRIDEファンたちで顔を合わせて滑る機会を設けたのは、実にRIDEらしい取り組みと言える。
 

イベント会場にはもちろん、RIDEの来季モデルのプロダクトがところ狭しと並べられていた。事前予約制だったことも手伝い、参加者たちはゆっくり乗り比べを楽しんだようだ

 


RIDEが白馬五竜をジャックした一日

「日本のスノーボードシーンの形はすごく理想的だと思ったね。言葉は通じないけど、一緒に滑ってハイファイブを交わしたりしていると、彼らがどれだけこのカルチャーに熱狂しているかが伝わってきたんだ。GORYU WAVESみたいなコアなイベントにも様々なスノーボーダーが集まって、積極的にライダーたちとコミュニケーションをとっていた。シーンとしてとても健全で、素敵だね」

こう語ってくれたのは、バックカントリーからストリートまで、フリースタイルスノーボーディングを余すことなく楽しむことで知られているブランドン・デイビス。RIDEのグローバルチームに在籍する彼もこのイベントの前に来日し、当日も会場に足を運んでいた。世界中からトップライダーが集まる米カリフォルニア州ベアマウンテンのローカルでもあるブランドンも、RIDEの世界観を作り上げているライダーのひとりだ。この日関西からご夫婦で来場していたRIDEユーザーの女性は、実際にライダーたちとコミュニケーションをとり、よりその世界観に触れることができたようだ。

「もともとRIDEに乗っていたので、海外から来てくれたライダーの滑りを間近で見れたのはとても刺激的でした! 速くて着いていけなかったですが(笑)、ゲレンデライディングからすべてがカッコよかったです。ほかにも今回のイベントで、初めてアンディさんや加藤彩也香さんとお話することもできました。おふたりともすごく気さくで、しかも彩也香さんからはオススメのボードやバインのセッティングまで教えてもらうことができて……。すごくうれしかったです」
 
同じくこの日を楽しみにしていた、と教えてくれたRIDEユーザーの男性は、普段はひとりで滑ることが多いという。しかし、同じブランドを愛する者が集う今日は、いつもと少し違ったらしい。

「いろいろな人と一緒に滑るのはやっぱり楽しいですね。みんなRIDEが好きで集まっているので、すごい一体感がありました!」
 

リフト上は絶好のコミュニケーションチャンス。松浦広樹(写真左)や須藤恵美(写真右)も積極的に参加者とリフトに乗車し、ファンとの時間を大切にしていた

 
午前と午後に各1回ずつ用意されていたライダーセッションでは、RIDEライダーたちがそれぞれスタイル溢れる滑りで参加者たちを楽しませていた。
 

最近は白馬を拠点としてビッグマウンテンフリースタイルに興ずる18歳、柿本優空のスタイリッシュなレイバック

 

ライダーたちと同じ来季モデルのボードを試乗しながらセッションを楽しむ者も

 
今シーズンの序盤に公開されていたRIDE作の秀作ストリートムービー『RATED R』にも出演しているグローバルライダー、ジェイコブ・クルッグマイア。彼もブランドンと同じく来日し、当日も集ったファンたちとの交流を楽しんでいた。

「日本のスノーボードシーンの盛り上がりはすごいね! 熱狂的なファンがたくさんいるように感じたよ。言葉は通じなくても、オレたちが好きなスノーボードはみんなをひとつにしてくれる。日本のファンたちには今日みたいに、スノーボードを楽しみ続けてほしいね」
 

ブランドン(写真左)とジェイコブ(写真中)、ふたりを含むRIDEライダーたちとのジャンケン大会はおおいに盛り上がった

 
ジャンケン大会を楽しみ、本記事のトップ画像になっている集合写真を撮ってイベントは終了……とはならないのがRIDEチーム。会場のエイブル白馬五竜・とおみゲレンデに常設されている地形パーク「GORYU WAVES」にて、この日のナイター営業時に開催された「NIGHT RIDERS」へも出陣した。そこにはもちろん、日中のイベントの参加者たちの姿も。RIDEが白馬五竜で作り出した世界観を余すことなく楽しんでいた。
 

NIGHT RIDERSにてハイスピードなライディングを魅せた北江正輝

 
「どんなコンディションでも、まずは楽しんで滑ること。今日来てくれたファンの方たちには、それを感じてほしいと思っていました。『一緒に滑ってください!』と言ってくれる人も来てくれて、本当にありがたいことです。オレはRIDEのプロダクトを使ってスノーボードを死ぬほど楽しんでいるわけですが、ファンの方にとっても、RIDEがスノーボードを楽しむためのマスターピースであればうれしいですね。こういうイベントでは一緒に滑ることで、この気持ちを直接伝えることができるんです」

マイキー・ルブランやラッセル・ウィンフィールドとともに、RIDEのレガシープロに名を連ねている“アンディ”こと安藤健次は、イベント後のインタビューにこう答えてくれた。ライダーセッションや写真撮影、サインなど、誰よりも気さくにファンたちと交流していたアンディ。彼とコミュニケーションをとったファンたちはもれなく、RIDEが醸し出す世界観のさらなる虜になったことだろう。
 

アンディ(写真右)の顔からは常に笑顔が溢れていた。彼のシグネチャーモデル「ANDY × DAYZE WARPIG」を手に来場した参加者と記念撮影

 
大盛況のうちに幕を閉じた RIDE WITH THE PEOPLE JAPAN TOUR 2024。リンバーグ氏は次のようにコメントを残してくれた。どうやらこのイベントは今後、拡大の一途を辿る予定のようだ。RIDEファンの諸君、パワーアップを経て開催されるであろう次回を震えて待て。

「僕たちはスノーボードの会社だから、計画を立てることは上手くないんだけど(笑)、今後2、3年で、このイベントを世界規模のものにしていきたいと思っています。日本ではアンディのいる北海道はもちろん、本州で2、3箇所、そのあとはアメリカやヨーロッパの各地にも広げていきたい。スケートボードのブランドがこういうイベントを開く場合、大抵プロダクトのテストはメインではないんです。ライダーのライディングを観ることや、アフターパーティーこそが盛り上がる。ライダーやスタッフ、メディアを巻き込んで、そういう楽しいイベントを世界中で開いていきたいですね」

text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: Junichiro Watanabe

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