BACKSIDE (バックサイド)

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REVIEW

平昌五輪ビッグエアの楽しみ方

2018.02.17

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平昌五輪からオリンピックの正式種目として採用されることになったビッグエア。一発の大きなジャンプで繰り出されるトリックで争われるため迫力があり、かつ、スノーボードに精通していない人にも比較的わかりやすい種目であることから人気を集めるだろう。ここでは、幅広い層に理解いただくための見どころをお届けする。

 

スケジュール

2月19日(月)女子予選 9:30~12:30(9:05〜11:53 NHK総合1、11:53〜12:20 NHK総合2、12:20〜12:45 NHK総合1)
2月21日(水)男子予選 9:30~12:45(9:30〜13:15 フジテレビ)
2月23日(金)女子決勝 9:30~11:00(9:05〜11:53 NHK総合1)
2月24日(土)男子決勝 10:00~11:30(10:00〜 テレビ朝日)
 

競技説明

ビッグエアとは一発の大きなジャンプで競われる採点競技。主にスピントリックが繰り出されることになるのだが、腹を進行方向へ向ける回転がフロントサイドスピン、背を進行方向へ向ける回転がバックサイドスピン、通常のスタンスとは反対向きに滑るスイッチの場合は、腹を進行方向へ向ける回転がキャブスピン、背を進行方向へ向ける回転がスイッチバックサイドスピンとなる。
予選はひとり2本の中からベストポイントが採用され、決勝では3本のジャンプを行い、この4方向のスピンから異なった回転方向の上位2トリックの合計点で争われる。スピントリックは最小単位にあたる半回転が180(ワン・エイティ)、1回転は360(スリー・シックスティ)となり、3回転半であれば1260(トゥエルブ・シックスティ)、4回転であれば1440(フォーティーン・フォーティ)となる。
回転には横方向、縦方向、斜め方向などがあり、それぞれでトリック名はもちろん、難易度が異なる。トリプルコーク1440とは縦方向と横方向へのスピンが融合した斜め回転のことを指し、縦方向に3回転しながら横方向への4回転を同時に行った技のこと。
エアの高さ、難易度、完成度、多様性などの視点から採点。回転方向や回転軸、グラブと呼ばれるボードをつかむ位置などで各選手は個性を放つ。
 

コース紹介

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photo: FIS SNOWBOARD

 
世界最高峰とされるX GAMESアスペン大会のビッグエアは安全面を最大限に考慮しているため、ジャンプ台は巨大なのだがキックと呼ばれる飛び出し口とナックルと称されるテーブル部分の角(着地面の始まり)の高低差が大きくない。これは滞空時間を生み出せるエアの軌道を確保しながらも、落ちていくのではなく“受ける”ような形状にすることで、着地時の衝撃を緩和しているのだ。
さらに、今年開催された同大会では過去最大斜度の40°の傾斜をランディングに用意した。より、着地時の衝撃を逃がすためだ。こうして万全を期すことで、ライダーたちはクワッドコークといった高難度トリックを繰り出せるということ。世界最高峰のジャンプ台はこのように設計されているわけだが、果たして平昌五輪ではどのようなジャンプ台が用意されるのだろうか。
※画像は昨シーズンのワールドカップで使用されたジャンプ台
 

見どころ

予選、決勝ともにオーバーオールジャッジングと呼ばれる全体の印象により採点される。総合印象、エアの高さ、難易度、完成度、着地の精度、などから総合的に判断。6名のジャッジがひとり100点の持ち点で採点した点数の最上位と最下位をカットした4名による得点の平均が各ライダーのポイントとなる。
先述したように予選はひとり2本のランからベストポイントで争われるため、大技をひとつ持っていれば勝ち上がることができるのだが、決勝では異なる回転方向の2トリックの合算で勝敗を決するため、フロントサイド、バックサイド、キャブ、スイッチバックサイドの中から選択することになる。
先行動作を大きくとれることと、通常のスタンスから踏み切る720や1080、1440などは同スタンスで着地でき、かつ、その際にランディングポイントに正対する回転になることから着地しやすいため、バックサイド方向への高回転スピンを放つライダーが多い。しかし、同じバックサイドスピンでも半回転加えることで背中側から着地点に落ちていくことになるため、900や1260、1620スピンは難易度が一気に上がる。
また、フロントサイドスピンはバックサイドよりも先行動作の振り幅が小さく、同様に通常のスタンスで着地するにはランディングポイントに背中側から向かっていく格好になるため、得手不得手はあれど高回転スピンという前提で考えるとバックサイドスピンよりも難しいというライダーが多いだろう。スイッチスタンス時も同様だが、着地を通常のスタンスにする900や1260などのスピンが主流となり、キャブはバックサイドスピンと同じ回転方向になり、スイッチ・バックサイドはフロントサイドスピンと同じ回転方向になることから、4方向ある回転ではスイッチ・バックサイドスピンがもっとも難しいとされている。
さらに、グラブの位置にも注目してほしい。バックサイドスピンの場合は背を進行方向へ向けるように回すため、前手でつま先側のボードの両足間をつかみ、回転方向へ後ろ手をリードすることで回しやすくなるため、ミュートグラブがやりやすい。反対に、後ろ手でつま先側のボードの両足間をつかむインディグラブをすると流れに逆らったアクションになるため、回しづらい反面スタイリッシュとされる。
これはダブルコークやトリプルコークといった3Dスピンが加わっても同じことが言えるので、こうしたポイントに着目して観ることで10倍以上楽しめるはずだ。
 

注目ライダー

大久保有利
 

YuriOkubo

 
生年月日: 2000年7月27日(17歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1440、スイッチ・バックサイド1260
近年はアプローチに人工芝、着地部にエアバッグを敷き詰めた通年滑走できるジャンプ施設で技に磨きをかける若手ライダーが多く台頭してくる中、小学3年でスノーボードを始め、北海道の恵まれた山と雪を滑り込むことで上達してきた。独特の回転軸で放たれるスタイリッシュなスピンが特徴。
 
 
國武大晃
 

HiroakiKunitake

 
生年月日: 2002年2月10日(16歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1440、フロントサイド・トリプルコーク1440
平昌五輪開催中に16歳の誕生日を迎えた高校1年生ライダー。ビッグエア伝統の一戦、AIR+STYLE北京大会で強豪が出揃う中、堂々の4位につけた。難度の高いフロントサイド・トリプルコーク1440を操るだけに、バックサイド・ダブルコーク1620の成功率が勝敗のカギを握る。
 
 
マックス・パロット
 

MaxParrot

 
カナダ代表
生年月日: 1994年6月6日(23歳)
得意技: キャブ・トリプルコーク1800、フロントサイド・トリプルコーク1440
カナダ・ケベック州に位置するライダー養成所から輩出されたトップコンペティター。精密機械のように正確無比なスピントリックを操る。X GAMESアスペン大会では、2014年と2016年から3年連続でビッグエアの金メダルを獲得。平昌五輪でも金メダルの筆頭候補である。
 
 
マーカス・クリーブランド
 

MarcusKleveland

 
ノルウェー代表
生年月日: 1999年4月25日(18歳)
得意技: バックサイド・クワッドコーク1800、キャブ・トリプルコーク1620
2017年のX GAMESアスペン大会において、コンテスト史上初のクワッドコークとなる、バックサイド・クワッドコーク1800を成功させた。トランポリンにより培った身軽さと卓越したボードコントロールで、あらゆる回転を操るスピンマスター。スロープスタイルの雪辱を狙う。
 
 
マーク・マクモリス
 

MarkMcMorris

 
カナダ代表
生年月日: 1993年12月9日(24歳)
得意技: バックサイド・トリプルコーク1620、スイッチバックサイド・トリプルコーク1620
2016年2月にAIR+STYLEロサンゼルス大会で大腿骨骨折、2017年3月にバックカントリーの事故で複数箇所の骨折などの重傷を経て復活。2017年のX GAMESアスペン大会ビッグエアで3位、同ノルウェー大会では同種目で優勝を飾るなど、スロープスタイルに続くメダルなるか。
 
 
鬼塚 雅
 

MiyabiOnitsuka

 
生年月日: 1998年10月12日(19歳)
得意技: キャブ900、バックサイド720
歴史あるビッグエア大会として知られるAIR+STYLE北京大会で2位、ドイツで行われたW杯ビッグエアでも2位に輝くなど、コンスタントに上位に食い込む活躍。五輪直前に福島・アルツ磐梯の特設キッカーで放たれたバックサイド・ダブルコーク1080を大舞台で成功させることができるか。
 
 
藤森由香
 

Yuka Fujimori 2017Mar

 
生年月日: 1986年6月11日(31歳)
得意技: フロントサイド・ダブルアンダーフリップ900、バックサイド720
トリノ、バンクーバー、ソチと3大会連続スノーボードクロスでオリンピック出場を果たしていたのだが、その傍らでフリースタイルの撮影活動も行っていたことからスロープスタイル&ビッグエアに競技転向。非凡なるフリースタイルスキルと大舞台での豊富な経験が彼女の武器だ。
 
 
岩渕麗楽
 

ReiraIwabuchi

 
生年月日: 2001年12月14日(16歳)
得意技: バックサイド・ダブルコーク1080、キャブ900
昨年12月に米コロラド州カッパーマウンテンで行われたW杯ビッグエアでバックサイド・ダブルコーク1080を手をつきながらも成功させて優勝したわけだが、今年1月のX GAMESアスペン大会では完璧に同トリックをメイクして銀メダル獲得。一気に平昌五輪のメダル候補に名乗りを上げた。
 
 
広野あさみ
 

AsamiHirono

 
生年月日: 1990年11月8日(27歳)
得意技: フロントサイド720、バックサイド720
ビッグエアでは特筆すべき成績を残すことはできていないが、昨年11月の時点で自身のSNSにフロントサイド900やスイッチバックサイド900を成功させた動画を投稿。その完成度次第では上位を狙うことも夢ではない。勢いある滑りで一発逆転を狙いたいところ。
 
 
アンナ・ガッサー
 

AnnaGasser

 
オーストリア代表
生年月日: 1991年8月16日(26歳)
得意技: バックサイド・ダブルコーク1080、キャブ・ダブルコーク1080
昨シーズンのFIS世界選手権からビッグエア種目には4大会出場しているのだが、すべてで優勝を飾っている。今年1月に行われたX GAMESアスペン大会では、得意技とされている上記2トリックに加えて、フロントサイド・ダブルアンダーフリップ900も成功。もはや敵なしか。
 
 
ヘイリー・ラングランド
 

HaileyLangland

 
アメリカ代表
生年月日: 2000年8月2日(17歳)
得意技: キャブ・ダブルコーク1080、フロントサイド720
2017年のX GAMESアスペン大会ビッグエアでキャブ・ダブルコーク1080を繰り出して金メダルを獲得。高回転よりも低回転で男顔負けのスタイリッシュなスピンを繰り出すことに定評のある、唯一無二のライダーだ。高難度化が急がれる昨今、彼女が繰り出すクールなスピンにも注目したい。

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