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北京五輪パイプで冨田せなが女子フリースタイル種目初のメダル獲得。女王クロエの滑りは異次元
2022.02.11
北京五輪ハーフパイプで歴史が動いた。日本スノーボード界にとって女子では初となるフリースタイル種目のメダリストが誕生したのだ。冨田せなが銅メダルを獲得した。
女子ハーフパイプの歴史を振り返ってみると、古くは筆者と同世代の朝妻純子が日本人として世界に通用するハイエアを示し、山岡聡子がX GAMESに招待されるなどコンテストシーンで活躍。その後、岡田良菜がソチ五輪で5位入賞を果たすと、その後輩たちがX GAMESなどプロ最高峰の国際大会で表彰台を射止めるなど、加速度的にレベルが上がっていった。そしてついに、オリンピックでのメダル獲得に至ったわけだ。
ひとり3本のランを行いベストランで争われるおなじみのルール。せなは1本目から全開だった。FS900メロン→BS540ウェドル→FS720インディ→CAB720ウェドル→FS1080テールという先月のX GAMESで優勝を決めたルーティンを成功させて86ポイントを獲得。1本目を終えて2位につけた。
2本目はドロップイン直後に雪面にエッジをとられながらもバランスを立て直し、FS900メロングラブから入る1本目と同ルーティンに成功。FS720のエアの高さやFS1080の着地の精度が上がり、1本目のポイントを上書きする88.25ポイントを叩き出した。
その直後に滑走するベテランのケラルト・カステリェト(スペイン)は1本目からルーティンを変更してきた。スイッチBS540インディ→CAB720メロン→FSインディ→BS900ウェドル→FS900メロンと、1本目は3ヒット目にFS540を入れていたのだが、そこをインディグラブに差し替え。1本目のランを見ていたとき、3ヒット目のトランジションとバーチカルのつなぎ目部分がスムースではないよう映ったので、もしかするとそれを懸念してトリックを代えたのかもしれない。結果的に高さのあるFSインディを繰り出したことで後半のバック・トゥ・バック(連続)900の高さも増していた。90.25ポイントでせなを上回り、2位に食い込んだ。
ケラルトに続くツァイ・シュートン(中国)は1本目で81.25ポイントを獲得すると、2本目はさらに攻めた。メソッド→FS900インディ→BS540ウェドル→FS1080インディとつなぎ、最後に大技CAB900を繰り出すもグラブを入れることはできずに着地時に両手を雪面についてしまった。しかし、このルーティンが成功すれば間違いなくメダル圏内に届く内容だ。
それを受けたせなの3本目。ラストヒットに放っていたFS1080テールをファーストヒットに変更してきた。当然ながら次につなげるためには着地の完成度が高くないと難しいため、そうしたリスクをともなう分、ポイントアップを見込めるのだが、惜しくも着地に嫌われてしまった。
せなのメダルの行方はツァイに委ねられる格好に。3本目も2本目同様のルーティンでラストヒットまで迎えると、抑えてCAB720にしたのか、それともCAB900を狙ったが体勢を崩してしまいリカバリーで720で止めたのか、なんとも判断しづらい中途半端なスピンになってしまった。転倒はしなかったものの、その点を厳しくジャッジングされたのだろう。ポイントは75ポイントと伸びなかった。
予選を2位通過していた小野光希は1本目、FS900テール→BS540ウェドル→FS720インディ→CAB720ウェドル→FS540テールというルーティンを決め、2、3本目は前日の予選後に語っていたように4ヒット目をCAB1080にアップグレードすることを目論んだ。しかし、2本ともメイクすることができなかった。
せなの妹・るきは1、2本目ともに転倒。1本目はCABスピンを狙うもバーチカル付近で逆エッジになってしまい、2本目はFS720を繰り出す際、トランジションとバーチカルのつなぎ目に詰まっているような印象を受けた。ハーフパイプの形状に苦戦している様子だったが3本目、高さあるルックバックのFSインディから入ると、BS900ウェドル→FS720インディ→CAB720ウェドル→FS900メロン→BSメロンと6ヒット組み込み、5ヒット目までは今年1月に行われたUS GRAND PRIXでW杯初優勝を飾ったルーティンを決めた。1ヒット目から勢いそのままに平均的に高さを出しており、80.5ポイントと5位でフィニッシュした。
そして金メダルに輝いたのは、女王クロエ・キム(アメリカ)。ひとりだけ異次元の滑りを魅せていた。1本目にメソッド→FS1080テール→CAB900ステイルフィッシュ→スイッチBS540インディ→CAB1080ステイルフィッシュという超高難度なルーティンをノーミスで決めて94ポイントをマーク。
特筆すべきは2、3本目の3ヒット目をCAB900からCAB1260に難易度を上げてきたことだ。スイッチのブラインド着地になるこの技は、メンズライダーでも操れるライダーは限られるだろう。メイクには至らなかったが、独走状態のクロエにはまだなおトリックの引き出しがあるという恐ろしい事実を世界中に知らしめ、北京五輪の女子ハーフパイプは幕を下ろした。
女子ハーフパイプ結果
1位 クロエ・キム(アメリカ)
2位 ケラルト・カステリェト(スペイン)
3位 冨田せな(日本)
5位 冨田るき(日本)
9位 小野光希(日本)
全結果はこちら
photo: FIS SNOWBOARDING
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