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スケートボードから乗り換え半年足らずで平野歩夢が頂点に。W杯ハーフパイプ速報
2022.01.09
昨年8月5日の東京五輪スケートボード・パークを終えてスノーボードに乗り換え、わずか5ヶ月あまり。米カリフォルニア州マンモスマウンテンで開催されていたW杯ハーフパイプで平野歩夢が頂点に返り咲いた。現ハーフパイプ王者の戸塚優斗、今季開幕戦となったW杯を制した平野流佳を従えての勝利は、スコッティ・ジェームス(オーストラリア)がいまだ大会に顔を出していない不気味な展開ではあるものの、事実上の頂点を意味する。
先立って行われる予定だった男子予選が中止となり予選と決勝が同日開催となったハードスケジュールの中、本来であれば3本滑れるところを2本に変更され、それらのベストポイントで争われた。マンモスマウンテンを拠点に活動しているプロスノーボーダー・上田ユキエが観戦しており、彼女からの情報によると、決勝前のハーフパイプは予選で荒れた状態のまま冷えて固まった厳しいコンディションだったようだ。歩夢の滑走力をもってしても「硬すぎてヤバイ」と漏らしていたとのこと。
筆者はいつもどおりW杯を全戦放送しているJ SPORTSの解説を務めながら見ていたのだが、1本目は転倒者が続出。そうした中、安定した滑りで流佳がトップに立った。
勝負となる2本目、アンドレ・ヘフリッヒ(ドイツ)が流れを変えた。1本目からエアの高さあるルーティンを披露していたのだが、2本目も同様にスイッチメソッド→CABダブルコーク1080→FSダブルコーク1260→BS900を決めて、ラストヒットを1本目で転倒した1080から720に抑えて成功。トリックの難易度は全体的にそれほど高くなかったが、パイプのコンディションを鑑みると圧倒的なエアの高さが評価されたのだろう。予想を上回る90ポイントを叩き出した。
決勝進出を果たしていたショーン・ホワイト(アメリカ)が欠場となっていたため、滑走順としてはアンドレの直後が流佳となる。目の前で自身のポイントを塗り替えられたわけだが、大会直後のインタビューで「あれでスイッチが入った」と力強く語っていたように、1本目のランを上回るルーティンを繰り出した。スイッチBSダブルコーク1080→BSダブルコーク1260→FS1440→CABダブルコーク1080→BSアーリーウープ540と、3ヒット目の難易度を上げてアンドレのポイントをすぐさま逆転する93.4ポイントをマーク。たった数分の間に首位を奪還した。
そして流佳の次に控えるのが歩夢だった。1本目はパイプに合わせることができず2ヒット目のCABダブルコーク1440で“らしくない”転倒をしていたのだが、後がなくなった2本目。筆者は解説で「スケートボードで東京五輪に挑戦したことで培った精神力は想像を超えるほど強い」といったニュアンスのことを述べたものの、それをはるかに超える勝負強さを発揮した見事な滑りを表現してくれた。
コンクリートのように硬いパイプにもかかわず、圧倒的な高さを誇ったうえでFSダブルコーク1440→CABダブルコーク1440→FSダブルコーク1260→BS900を完璧にメイク。「本当はもう1ヒット入れたかった」と大会を終えた直後にインタビューで答えてくれたが、想定していたルーティンは完成できなかったものの95.8ポイントを叩き出してトップに躍り出たのだ。
最終走者は予選をトップ通過していた優斗。1本目はスイッチ・トゥ・スイッチとなる超大技、スイッチBSダブルコーク1260をファーストヒットに組み込むという攻めのルーティンで勝負に出るも失速してしまい次に繋げることができず、2本目を迎えていた。
ここまでの大会の流れを踏まえれば明らかにエアの高さが評価されており、それは優斗の真骨頂でもあるため異なるルーティンであれば違う結果も期待できたことだろう。しかし、北京五輪を想定してなのか自身の新しいルーティンにこだわり、1本目同様にスイッチBSダブルコーク1260から入ると、4ヒット目のBS900で転倒。W杯だけでなくプロ大会や世界選手権も含めて昨シーズンは全勝を飾っていた優斗だったが、今季は2大会連続でW杯の表彰台を逃してしまった。
いっぽう女子は、冨田るきが堂々のW杯初優勝を飾った。姉のせなが1本目でハイエアを連発するルーティンを組み立ててトップにつけていたのだが、妹のるきはルックバックのFSインディから入ると、BS900→FS720→CAB720→FS900をすべてしっかりとグラブを入れてスムースに決めた。両サイドで900を入れたのは彼女だけだったこともあり、技の完成度や表現力も加味されてか89.4ポイントを記録。せなを逆転した。
予選を1位通過していたツァイ・シュートン(中国)が最終出走となり、1本目でミスしていたFS900をタックニーでインディグラブをしながら見事に決めて2位に。冨田姉妹のワンツーフィニッシュを阻止する格好となった。
今大会は出場した日本人ライダーが男女全員、決勝へ駒を進めるというSNOW JAPANの強さが非常に際立ったW杯となった。22時頃に今大会は幕を下ろしたわけだが、全ライダーたちは来週に控えたW杯に向けて明朝の便でスイスに移動する。北京五輪開幕まで1ヶ月を切っていることもあり、日本人ライダーたちのスケジュールは多忙を極めている。彼らのさらなる飛躍を期待しながら、熱きエールを送っていただきたい。
男子結果
1位 平野歩夢(日本)
2位 平野流佳(日本)
3位 アンドレ・ヘフリッヒ(ドイツ)
4位 平野海祝(日本)
6位 穴井一光(日本)
9位 戸塚優斗(日本)
10位 片山來夢(日本)
全結果はこちら
女子結果
1位 冨田るき(日本)
2位 ツァイ・シュートン(中国)
3位 冨田せな(日本)
4位 小野光希(日本)
7位 松本遥奈(日本)
9位 今井胡桃(日本)
10位 鍛冶茉音(日本)
全結果はこちら
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