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ついに開幕したW杯ビッグエアで村瀬心椛が堂々の2位。大塚健は復帰戦4位
2021.01.10
新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミックにより開幕が年をまたぐという異例のシーズンとなったわけだが、オーストリア・クライシュベルクの主催者やスタッフの尽力により開催にこぎつけたFISワールドカップ。まずはビッグエア競技が行われ、現地時間の1月7日に女子予選、決勝当日の9日に男子予選を実施。女子は鬼塚雅、村瀬心椛、岩渕麗楽のX GAMESアスペン表彰台トリオが同順位で予選を通過しており大いなる期待が寄せられていたわけだが、1260(3回転半)が連発するハイレベルの戦いの中、村瀬が2位と表彰台を射止めた。
その1260時代の口火を切ったのが、何を隠そうこの村瀬。現在16歳の彼女は13歳時にX GAMESノルウェー大会ビッグエアで史上最年少優勝を果たし、そのときに決めたウイニングトリックがBSダブルコーク1260だった。
そして今大会で、アップグレードさせた同トリックを1本目から決め、92ポイントと男女を通じて最高ポイントをマーク。しかし、3本目に決めたFSダブルアンダーフリップ900のスコアが思うように伸びず、回転方向の異なるそれぞれ2ランの合計が161.8ポイントと、トップにわずか0.6ポイント及ばなかった。
筆者はJ SPORTSの生放送で解説を務めていたため放送内で大会直後の村瀬と言葉を交わすことができたのだが、彼女は嬉しさよりも悔しさを滲ませていた。FSダブルコーク1080を繰り出すことができなかったからだ。2本目でFSダブルアンダーフリップ900を決めたうえで、3本目に勝負に出る算段だったのだろう。
3年前の平昌五輪には実力はあれど年齢が条件を満たしていなかったため出場は叶わなかったが、この間、度重なるごとに村瀬を取材してきた。そのうえで、技術面だけでなく精神的にも大きく成長していることを彼女の言葉から感じることができた。まだまだ伸びしろは大きいだけに、今後の躍進に期待したい。
予選1位通過の鬼塚は、1本目で女子としては超高難度なFS1080で転倒するも2本目にはしっかりと決め、3本目で勝負に出た。BSダブルコーク1260にトライしたのだ。昨シーズン優勝を飾ったX GAMESアスペン大会で初挑戦して成功させており、村瀬の十八番を奪いにいく格好となったが、転倒こそなかったものの回転が若干足りず、トウエッジに乗りながら両手を雪面についてしまい万事休す。5位に終わった。
岩渕は、1本目で後傾になりながらもFSダブルコーク1080を成功し、2本目では安定感のあるBSダブルコーク1080を完璧にメイク。2本目を終えた時点で3位につけていたため、村瀬、鬼塚を見届けてからドロップインした3本目は、負けじと大技BSダブルコーク1260に挑戦。鬼塚とは対照的に回転が余ってしまいヒールサイドから着地してボードが回りすぎた。惜しくも4位に。
優勝はゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)。1本目はBS900の飛距離が足りずにナックルに落ちるというミスもあったが、2本目は修正を加えたうえでBS1080をしっかりと決め、3本目で女子としてはFSスピン以上に高難度とされるスイッチBS方向へ2回転半の900に成功。エアの高さ・飛距離ともに申し分なく、他ライダーのトリックよりも回転数は劣るものの、その技の迫力や表現力が評価された結果だったのだろう。
平昌五輪ビッグエア女王のアンナ・ガッサー(オーストリア)は、BSダブルコーク1080とCABダブルアンダーフリップ900を揃えて3位に。優勝したゾーイとはわずか1ポイント差という、上位3名が拮抗した戦いは見応え十分だった。
男子優勝は予選もトップ通過していた常勝ライダー、マックス・パロット(カナダ)。CABトリプルコーク1620とFSトリプルコーク1620をメイクしての結果だった。2本目には精密機械と称される彼らしからぬミスもあったが、その修正力はやはり本物。ガンとの闘病生活に打ち克ち完全復活を遂げた昨シーズンに引き続き、王者の貫禄を見せつけた。
2位にはBS1620でステイルフィッシュをグラブするというオリジナリティが光るスヴェン・ソーグレン(スウェーデン)が、FSトリプルコーク1440との合算で2位に。
3位は予選を2位で通過していたモンス・ロイズランド(ノルウェー)がスイッチBS1620を決めるなど、逆転で食い込んだ。
わずか1.8ポイント差で勝敗を決した上位3名にややポイントは離されてしまう形で、大塚健が4位に。彼の輝かしい成績からすると少し物足りなく感じてしまうかもしれないが、大ケガからの復帰戦という意味では上々の滑り出しだ。
FSトリプルコーク1440とCABトリプルコーク1620を決め、ラストジャンプではFSトリプルコーク1800に果敢にトライ。一昨年にX GAMESで優勝した際に繰り出したFS1800を進化させて臨んだ一本は、惜しくも回転が少し足りずにクリーンな着地とはいかずに高ポイントを叩き出すことはできなかった。
予選を2位通過していた國武大晃は、ラストランで昨秋に足掛け3年で完成させた話題のBS1800、しかもテールからノーズに持ち替えるという2グラブで勝負に出るもポイントを塗り替えることはできず6位でフィニッシュ。
5位のレネ・リンネカンガス(フィンランド)を含めて5回転という大技に開幕戦から挑んだことは、大塚と國武にとって成績以上に意味のあったことだろう。
コロナ禍においてW杯ビッグエアの次戦はまだ未定となっているが、スロープスタイルとハーフパイプの開幕戦がスイス・ラークスで今月19日から開催される。X GAMESなどのプロ大会も含め、日本勢のさらなる飛躍に期待したい。
女子結果
1位 ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)
2位 村瀬心椛(日本)
3位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
4位 岩渕麗楽(日本)
5位 鬼塚 雅(日本)
6位 アニカ・モーガン(ドイツ)
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男子結果
1位 マックス・パロット(カナダ)
2位 スヴェン・ソーグレン(スウェーデン)
3位 モンス・ロイズランド(ノルウェー)
4位 大塚 健(日本)
5位 レネ・リンネカンガス(フィンランド)
6位 國武大晃(日本)
7位 リアム・ブレアリー(カナダ)
8位 ヨナス・ベージガー(スイス)
9位 クレメンス・ミラウアー(オーストリア)
10位 エミル・ズリアン(イタリア)
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photos: FIS SNOWBOARDING
※上位3名のライディング動画は公開され次第追加します