BACKSIDE (バックサイド)

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技術力+創造力が求められるUS OPEN改造パイプが面白い。戸塚優斗は3位で決勝へ

2020.02.28

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朝から晩まで生真面目にハーフパイプばかり練習していても勝てなくなってしまう。そんな時代がすぐそこにまで来ているのかもしれない。
米コロラド州ベイルマウンテンリゾートで行われている39回目を数える伝統の一戦、BURTON US OPENのハーフパイプ種目は1988年から続いているのだが、初となるモディファイド(改造)ハーフパイプが決戦の舞台となった。女子セミファイナルの記事でもそのコースについて紹介しているので重複してしまうが、改めて説明しておきたい。
前半が高さ4mのミニパイプ、後半が高さ6.7m・長さ110mのスーパーパイプとなっている。ミニパイプにはリップから飛び出したアイテムが両サイドに用意されており、高さ1.8m、幅が3.7mあるため、当て込むなど雪のボックスのように利用できる。また、スーパーパイプへのつなぎ部分にランディングが用意されているので、ヒップのように飛ぶこともできるし、後半のスーパーパイプへドロップインする際のリップも用意されているため、スピンやグラブしながらスーパーパイプへ入ることも可能だ。
前半のミニパイプが今大会の勝敗を分けたといっても過言ではない。ハンドプラントや地形を活かした小技など、“遊び上手”でないとポイントが出ないのだ。そんななか14歳の伏兵、初出場の重野秀一郎がメジャー大会で鮮烈なデビューを飾ることになる。
昨シーズンのWORLD ROOKIE FINALS 2019のグロム部門でFS1440テールを決めて優勝を飾るなど高難度スピントリックの腕前はすでに知られているが、ミニパイプではBSアーリーウープ・ロデオからハーフキャブ・メソッドという玄人ウケ間違いなしのルーティンを披露し、しかもスタイリッシュに決めて75.6ポイントというハイスコアをマーク。並み居る強豪を押しのけて8位でファイナル進出を果たした。
 

ShuichiroShigeno

2本目にスーパーパイプでFS1260テールを繰り出した重野秀一郎

 
こうしたなか、FIS(国際スキー連盟)大会では必ずや上位にいるはずの戸塚優斗と平野流佳が苦戦を強いられることに。ひとり2本のランでベストポイントが採用され、上位10名が決勝進出となるのだが、流佳は2本目出走直前の時点で10位、その次の出走となる優斗が13位という状況。1本目のランはともに転倒していないにも関わらず、である。残すライダーは1本目でトップのスコアを叩き出し首位をキープしていた王者スコッティ・ジェームス(オーストラリア)のみだったので、同ブランドに所属する仲間同士が決勝進出のイスを争うことになった。先行の流佳は全体的にリズムに乗り切れず、ラストヒットのFSダブルコーク1080インディで転倒してしまい順位を上げることはできず。流佳の先輩にあたる優斗のライディングにすべてが委ねられた。
表彰台の常連ライダーがファイナル進出枠の圏外でセミファイナルのラストランを迎えるという大きなプレッシャーがかかるなか、ミニパイプではトゥームストンと称される雪上ボックスを利用したBSアーリーウープ・ステイルフィッシュから始まり、2ヒット目はマックツイストのような回転軸でプラットホームの延長線上に用意されたランディングへ向かってアウトするBS360フリップを繰り出し後半へ。十八番のスーパーパイプではBSインディをしながらドロップインすると、FSダブルコーク1260インディ→BS900ミュート→FS1080テールをハイエアかつリップ・トゥ・リップで完璧な滑りを披露して84.5ポイントというハイスコアを叩き出した。3位と大逆転劇を見せると同時に、流佳は11位に押し出されてセミファイナルで涙をのむ結果となった。
 

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圧倒的な滑りでスーパーパイプを攻略する戸塚優斗

 

王者スコッティはミニパイプも上手かった。FSハンドプラント・トゥ・フェイキーから入ると、ヒップのようなアクションでスイッチBS540テールを決めてプラットホーム側へアウトすると、FS180でスーパーパイプへ飛び込み、スイッチBS900インディ→CABダブルコーク1080ミュート→FSダブルコーク1260ステイルフィッシュをクリーンに成功。89.66ポイントを獲得して、そのままトップで逃げ切った。
 

ScottyJames

技術力も創造力も兼ね備えたスコッティ・ジェームスは強かった

 

2位にはスイスのパット・バーグナー。ミニパイプでハンドプラントやアーリーウープ・ロデオ、プラットホームのギャップでノーリー・フロントフリップを繰り出すなどクリエイティブな滑りで魅せ、スーパーパイプではFS180インすると、スイッチBS900インディ→CABダブルコーク1080ミュートとここまではスコッティとまったくの同トリック。そしてラストヒットには回転数こそ同じだが、フラットスピンのFS1260テールで勝負に挑み、こちらも大逆転で2位に食い込んだ。

平野海祝はスーパーパイプで巨大なBSエアを放ち会場を沸かせると、FS1080テール→CABダブルコーク1080ミュートへとつなぎ善戦するも、62.66ポイントで15位。2本目では回転数を上げてFS1440テールで決勝進出を狙ったのだが転倒してしまい万事休す。15歳の中川海秀はFS1440や1260といった高回転スピンを決めるも、エアの高さが足りなかったこととミニパイプでのBSティンディ(通常インディグラブは後ろ手で両足間のトウサイドをグラブするのだが、後ろ足よりもテール寄りをつかんでしまうことからこう呼ばれる)が響いたのか。転倒しなかったにも関わらず2本とも40点台と得点が伸びず、19位という結果に終わった。
男子ハーフパイプ決勝は29日(土)、日本時間の3月1日(日)6時からスタートする予定となっている。高回転スピンや高難度トリックだけでは個性が薄まってしまい物足りない。そんな主催者側の意図が強烈に伝わってくる今大会。地形を利用したオシャレな動きやトリックを繰り出すことができる、山全体を使って遊べるようなクリエイティビティやスキルがハーフパイプ競技にも求められるようになってきた。ライブキャストのスケジュールをチェックのうえ、世紀の一戦の目撃者になってほしい。
 
男子ハーフパイプ・セミファイナル結果
1位 スコッティ・ジェームス(オーストラリア)
2位 パット・バーグナー(スイス)
3位 戸塚優斗(日本)
4位 ジェイク・ペイツ(アメリカ)
5位 ヤン・シェラー(スイス)
6位 ラカイ・テイト(ニュージーランド)
7位 ジョーイ・オケソン(アメリカ)
8位 重野秀一郎(日本)
9位 チェイス・ブラックウェル(アメリカ)
10位 ダニー・デイビス(アメリカ)
11位 平野流佳(日本)
15位 平野海祝(日本)
19位 中川海秀(日本)
全結果はこちら

rider: Danny Davis photos: BURTON

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