BACKSIDE (バックサイド)

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世界最古を誇る大会 US OPENハーフパイプで片山來夢2位、戸塚優斗3位の快挙

2019.03.03

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37周年を迎えた伝統の一戦、米コロラド州ベイルで開催されているBURTON US OPENのファイナルイベント、男子ハーフパイプ決勝が幕を下ろし、日本人ライダーのふたりが表彰台に上がるという快挙を成し遂げた。片山來夢は2年連続の準優勝となり、初出場の戸塚優斗が3位に入った。もうひとりのファイナリスト、平野流佳も5位と大健闘。優勝はオーストラリアのスコッティ・ジェームスとなった。
 

MensHalfPipeFinals_USO2019_PeterCirilli-2

(左から)2位の片山來夢、優勝のスコッティ・ジェームス、3位の戸塚優斗 photo: BURTON

 
スタートから降っていた雪が徐々に強くなるという悪条件だったにも関わらず、各ライダーたちはハイパフォーマンスを魅せてくれた。ひとり3本のランを行いベストポイントが採用されて順位を決する、世界ナンバーワンのハーフパイプライダー決定戦だ。
1本目から熾烈なるバトルが繰り広げられた。まずは片山が魅せる。巨大なメソッドから入ると、FS1080テール→CABダブルコーク1080テール→FS900ミュート→BS1260ミュート→FSダブルコーク1260テールと、バック・トゥ・バック1260を含むすべてのエアで高さのある滑りを完璧に決め、90.49ポイントといきなり大台に乗せてきた。
 

RaibuKatayama

会心の滑りを披露して納得のポイントが出ると、片山は喜びを爆発させた

 
 

RaibuKatayama_MensHalfPipeFinals_USO2019_Blotto_7064-2

rider: Raibu Katayama photo: BURTON

 

そして王者スコッティは、來夢の滑りに強すぎる刺激を受けたのだろう。1本目から、スイッチBS1080インディ→BSダブルコーク1260ミュート→FS1080ノーズ→CABダブルコーク1080ミュート→FSダブルコーク1260ステイルフィッシュと、ラストヒットはフィニッシュラインのギリギリで執念の着地。スコッティも高さのあるエアを連発し、着地後は勢い余って観客エリアに突っ込むほどだった。片山のスコアを上回る92ポイントを叩き出し、この時点でトップに立つ。
 

ScottyJames

片山を上回るポイントを叩き出し、オーディエンスの声援に応えるスコッティ

 
 

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rider: Scotty James photo: BURTON

 

セミファイナルをトップ通過していたため最終出走となった戸塚。そのセミファイナルと同様のルーティンを披露して84.49ポイント。スコッティと片山の滑りがジャッジ基準を引き上げたのだろう。セミファイナルでは89.37ポイントだったが、トップ2のふたりに一歩譲る格好となった。
 
スコッティを倒すべく、片山と戸塚が狙うは1440スピンということになる。片山の2本目、2ヒット目をFS1440テールに引き上げて勝負に挑むもルーティンを成功させることはできず。
戸塚は2本目にFSダブルコーク1440インディを組み込むもミスしてしまい、3位のまま迎えた3本目のランは片山とスコッティの順に控えた状況で挑む展開になった。FS540インディ→BS900ミュート→FSダブルコーク1440インディを完璧に決めて、CAB1080ノーズは少しグラブが甘かったがテールへのダブルグラブをトリプルヘッドの高さで決め、ラストヒットはFSダブルコーク1260インディをパーフェクトストンプ。素晴らしいランを披露するも、ポイントは87.12と上位2名のスコアを塗り替えるはできなかった。
 

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初出場ながら5位と大健闘した16歳の平野流佳が、チームメイトであり先輩の戸塚を見守る

 
 

YutoTotsuka_MensHalfPipeFinals_USO2019_GabeLHeureux_9881-2

rider: Yuto Totsuka photo: BURTON

 

「公開(練習)の最後の1本でヤラれてしまって、2本目で1440をやったときも頭が揺れてる感じだったんです。2ヒット目でBS1260を入れる選択肢もあったんですけど、それをやっちゃうと多分身体がついていかないような状態で……。(自分の持っている力を)全然出しきれませんでしたね。去年のUS OPENは公開でケガしてしまったので今回が初出場だったんですが、これからの自分に必要なものがいろいろと見えた大会でした。前から思っていますが、エアの高さとか1440とか高難度な技をつなぐだけじゃ勝てないことを改めて痛感したので、マックツイストなどスタイルを表現できる技をやりたいですね。X GAMESから取り入れてるFS540のステイルフィッシュは、今の時点では一番スタイルが出せる技。教科書というか型にハマったような滑りはしたくないので、これからも自分のスタイルを磨いていきたいと思っています」
ファイナル直前の公式練習中にクラッシュした映像を見せてもらったのだが、FSダブルコーク1440のテイクオフでミスしてしまい、絶望的な転倒をしたうえでファイナルに挑んでいた戸塚。その直後だったにも関わらず、17歳とは思えない落ち着いた表情で語ってくれた。
 
そして片山の運命の3本目。2ヒット目のFS1440テールは見事成功させるも、5ヒット目に繰り出したBS1260ミュートの着地に嫌われてしまい万事休す。この瞬間、スコッティのUS OPEN初優勝が決まった。
 

ScottyJames_WinningRun

スコッティの3本目はウイニングランとなり、プラットホームに乗り上げてファンサービス

 
ちなみに今大会の男子スロープスタイルはレッド・ジェラード(アメリカ)が、女子はゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)が、女子ハーフパイプはマディ・マストロ(アメリカ)が制し、全種目を通じて初のUS OPENチャンピオンが誕生したことになる。
 
表彰式を終えた直後の片山に話を聞いた。
「公トレ(公式トレーニング)では1440を出してなかったのでフラットでいくかダブルコークでいくか迷ったんですけど、パイプの状態的にフラットのほうがいいと思い勝負に出ました。3本目は1440がいい感じで立てたんですけど、1本目のルーティンに比べると気持ち的に焦ってしまいました。そういうところが今後の改善点ですね。US OPEN前までは調子が悪かったので、ギリギリ間に合わせた感じでした。今シーズンは小さい頃からの憧れだった、コンペティションとシューティングを両立させることが実現できていて、カズくん(國母和宏)もやってきたことだから、そこに一歩踏み出せた新たなシーズンでした。全然まだまだなんですけど、カズくんたちの撮影に参加させてもらえて熱くさせられるものがあります。スノーボードに対する考え方がストイックになったし、そういうメンタル面で今回のUS OPENに向けての気持ちはものすごくプッシュされました。回すだけがスノーボードじゃないから、1発目のメソッドだったり、CABダブルでもミュートじゃなくてテールをつかむとか、クリエイティブな滑りにこだわるようになりました。大会でも遊び心が生まれて、スノーボードがこれまで以上に楽しくなってますね」
魅せて勝つ。片山の滑りは多くのオーディエンスを熱狂させ、会場が興奮の坩堝と化していた。エアの高さや回転数の多さ、複雑な回転軸だけでは推し計ることができない彼のスタイルがあってこその結果なのだ。
 
戸塚は最後にこう言っていた。片山の存在があるからこそ、これまで以上にスタイルにこだわっているのだと。世界一のスノーボーダーとして君臨している“Kazu”こと國母和宏の教えが片山に受け継がれ、それに若手コンペティターが刺激を受けて成長していく。
日本のスノーボードは強いだけではない。フリースタイルスノーボーディングの本質である個性や表現力を重視したうえで勝っているのだ。これからの日本のフリースタイルシーンが楽しみでならない。

男子ハーフパイプ・ファイナル結果
1位 スコッティ・ジェームス(オーストラリア)
2位 片山來夢(日本)
3位 戸塚優斗(日本)
4位 ダニー・デイビス(アメリカ)
5位 平野流佳(日本)
6位 パット・バーグナー(スイス)
7位 デレック・リビングストン(カナダ)
8位 イ・カンキ(韓国)
9位 ケント・カリスター(オーストラリア)
10位 ジェイク・ペイツ(アメリカ)

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