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自由を求める山根俊樹が地元・福岡で企てたスノーボーダーの夜『即爆』潜入ルポ
2018.10.19
福岡の繁華街・天神エリアに位置する九州最大規模のクラブにて、何やらほにゃららなイベントを企てているという話を、夏に都内で会ったときに山根俊樹本人から聞いていた。スケジュールは空けていたものの、非常に巨大な台風24号が日本列島に迫るという絶妙すぎるタイミングと重なった、イベント当日の9月29日。「福岡まで飛べるのか? 飛べたとしても帰ってこれないだろうな……」という不安な状況で、台風に向かって福岡へ飛び立った。
本イベントのタイトルは『即爆』。「いろんな欲望に縛られながら過ごす毎日のなか、その束縛された欲望をこちらが用意する刺激で即行爆破させてあげる」という想いがタイトルに込められているそうだ。その“刺激”とは、スノーボードビデオに楽曲を提供するなど福岡を代表するパンクバンド・REVOLVEや、1984年に結成された長崎出身のパンク・ロックバンドであり、「この出会いは僕にとって大切で、宝物のような出来事です」と俊樹がSNSで憧れの存在だったことを明かしている横道坊主によるライブ。そして、俊樹率いるクルー・FIGHT FOR LIBERTY(以下FFL)の最新ムービー『CONTINEW』の上映だ。

FFLクルーが福岡に集結。(右から時計回りに)秋山耀亮、渡辺大介、松田健太郎、そして本イベントを企画した山根俊樹
嵐の前の静けさか、無事に福岡空港に到着すると一路会場へ。開演前で準備も慌ただしいなか、物販ブースを眺めていると、FFLのTシャツやステッカーは販売するようだが、肝心の新作DVDは用意されていなかった。気になったので俊樹に尋ねてみると、次のような答えが。
「販売は今のところ考えてなくて、各ショップやメーカーがイベントによって近しい関係を築けたり、ショップごとにお客さんを囲い込んだりするような部分をブチ壊して、一般の人たちがもっと純粋にスノーボードを好きになれるような環境を作ることが狙いなんですよ」
なるほど。DVDやダウンロードで販売する自分たちの作品をプロモーションするための、いわゆる試写会じゃないのね。俊樹の地元である福岡にFFLクルーである秋山耀亮、渡辺大介、フォトグラファーの松田健太郎らを招集し、彼らとともに福岡からシーンを盛り上げるべく立ち上げたイベント、それが即爆ということなのだ。
さらに、俊樹はこう続けた。
「プロショップにはDVDを置かせてもらいます。ショップのほうから“うちに来たら観れますよ!”ってアナウンスして広めてもらい、そしてお客さんを集めてもらうんです。そうすることで、お互いにいいスノーボード関係を築くことができるんじゃないかな、って」
高級消費財であるスノーボードでさえもネット販売が増加している昨今。自然を相手に遊ぶのだから、ネット上では拾いきれない情報が不可欠であり、プロショップにはそうした情報がある。さらに言えば、仲間を増やしたり、その仲間同士で価値観を共有したり、その価値観から刺激を受けてモチベーションを高めたりと、フリースタイルスノーボーディングを楽しむうえで貴重な場なのである。そうした機会を提供しようとしているのだ。

俊樹が本イベントに込められた想いを言葉にすると同時に、『即爆』のスイッチオン!
迫りくる台風による強風が吹き荒れる天神エリアだったが、REVOLVEのライブが終わる頃には多くのスノーボーダーが集結。FFL最新作『CONTINEW』の上映に合わせた格好だろうか。会場のボルテージは一気に高まっていた。クルーがステージに上がって挨拶を済ませると、テキーラらしきボトルを手渡された俊樹は豪快に口に運んでいた。あれ、俊樹って酒飲めないんじゃなかったっけ? なんて疑問が頭をよぎりながらも、ムービーが始まるとFFLクルーのライディング映像に酔いしれるオーディエンスたちを目の当たりにしながら、少しだけニヤついている自分に気がついた。
ひと昔前にはBIGAIR福岡という室内ゲレンデを有し、大手ブランドによるイベントなどが数々行われていた10年以上前に訪れて以来の福岡だったのだが、現在では福岡KINGSを中心としてライディングレベルも高まり続けており、近隣には本格的なプロショップがひしめき合う九州のスノーボードカルチャーに触れたことで、雪に恵まれているとは決して言えないエリアにも関わらずその熱量を以前と変わらずに肌で感じることができたからだ。
こうして横道坊主のライブに突入すると、踊り狂うスノーボーダーたちがステージ前を占拠していた。その中心にいたのは、シルバーグレーの髪をなびかせる俊樹。REVOLVEのライブの時点からヘッドバンギングしまくっていた彼の上下動は、この頃には絶頂に達していた。

横道坊主のライブ中に俊樹はステージに駆け上がり、マジでダイブする5秒前
横道坊主のライブが幕を下ろすと、最後にはボードやら何やら大量のプレゼントが宙を舞っていた。興奮冷めやらぬまま、同じビル内のバーで2次会が用意されていたので流れ込むと、気がついた頃には俊樹は不在。電話しても出ない。アルコールが弱いうえにテキーラを喰らい、そしてヘッドバンギング、さらに達成感なのかもしれない。彼自身が“即爆”してしまったようだ(笑)

横道坊主でヒートアップした直後だったからか、プレゼントコーナーはかなりの大盤振る舞い
こうして、FIGHT FOR LIBERTYの名づけ親であり自由のために戦い続けている山根俊樹が、地元・福岡からシーンを盛り上げるべくひと肌脱いだスノーボーダーの夜は最高潮に達し、みなの心に深く刻み込まれたに違いない。ちなみに余談だが、俊樹不在のまま朝までローカルスノーボーダーと盛り上がり、その勢いのまま福岡空港へ向かって午後の便を午前中に繰り上げてもらったおかげで、台風をかわして無事に羽田空港へのランディングをメイクすることができた。
この勢いのまま、九州のシーンが熱く盛り上がることを願う!
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief) photos: Yohei Yamaguchi
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