BACKSIDE (バックサイド)

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「この技、なんて呼ぶ?」──イ・チェウンの“名もない”超絶トリックに注目。その背景に広がるサースフェー氷河の現在

2026.09.26

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「この技、なんて呼ぶ?」

韓国のイ・チェウンが自身のInstagramに投稿した一本のトリックが、世界のスノーボードシーンをざわつかせている。舞台はスイス・サースフェー。世界中からトップライダーが集まる秋の風物詩「STOMPING GROUNDS」で、ハーフパイプから飛び出したチェウンは、身体を動きの流れに逆らわせながらフロントフリップのように空中を舞い、そのままクリーンに着地した。

問題は、このトリックをなんと呼べばいいのか。

本人が「What should we call this(この技、なんて呼ぶ?)」と問いかけると、コメント欄には世界のトップライダーたちが続々と反応した。

マーク・マクモリスは「Unbelievable!」と驚きながら「Fs mctaki?」とコメント。トッド・リチャーズは「マックツイストを逆にしたように見える」と評し、チャド・オッターストロムは「An Inward Davis」、ニコラス・ミューラーは「Front flip」と、それぞれ異なる見解を示している。

さらに、エーロ・エッタラは「Chicken teriTaki」と命名。ちなみに、マクモリスの「Fs mctaki?」を含め、彼らが用いている「taki」は、チェウンがアメリカの人気ラッパー、リル・ウェイン(Lil Wayne)から着想したという自身のInstagramアカウント名「@lilkeytaki」にちなんだもの。ハーカンフリップやチャックフリップのように、メイクした本人の名が冠されるシグネチャートリックはスノーボードの歴史に存在する。世界のトッププロたちがこぞって「taki」を用いていることは、この一発をチェウンのシグネチャートリックとして認めている証とも言えるだろう。

さらに、THE SNOW LEAGUEも「STOMPING GROUNDS PARKでNBDが出始めるまで、わずか2日ほどだった」と反応している。NBDとは「Never Been Done」の略。文字どおり、これまで誰もやったことがないトリックを意味する。

現時点で、このトリックの正式名称を決めること自体にあまり意味はないのかもしれない。それよりも興味深いのは、世界のトップライダーたちでさえ「これは何だ?」と議論するような動きが、2026年になった今も生まれていることだ。

そして、この映像にはもうひとつ目を奪われるものがある。雪が、あまりにも少ない。ハーフパイプの周囲に目を向けると、白い雪面のすぐ外側には氷河や岩肌が大きく露出している。

実はサースフェーでは今夏、高温により雪と氷河のコンディションが悪化したことを受け、8月10日から夏スキー営業を休止している。現地はコースや氷河上のインフラを維持するための作業を続けたものの、求められる品質と安全性を確保することが難しくなったためだ。

サースフェーだけではない。2026年夏のアルプスでは、ツェルマットやステルヴィオなどでも夏スキー営業が相次いで休止。一時はアルプスから営業中の夏スキーエリアがなくなる異例の状況となった。

そうしたなか、サースフェーには今、再び世界のトップライダーたちが集まり始めている。STOMPING GROUNDSは、毎秋サースフェーに世界各国のスノーボーダーやスキーヤーが集結するトレーニングの舞台だ。公式情報では今秋も200人以上のトップライダーたちが参加する予定で、ハーフパイプやスロープスタイルのセッションが行われる。

雪と氷河を取り巻く環境は変わり続けている。しかし、その限られた雪の上では、これまで存在しなかったかもしれない新しいトリックが生まれている。

チェウンが放った“名もない”一本と、その背景に広がるむき出しの氷河。そのコントラストは、2026年秋のサースフェーの現在を象徴しているようにも映る。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

 

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