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平野歩夢が“過去最高レベル”のパイプ決戦を制す。日本勢が再び表彰台を独占した「THE SNOW LEAGUE」第2戦ルポ
2025.12.05
2026年2月に開幕するミラノ・コルティナ五輪を控え、今シーズンは各国のトップライダーが代表選考のかかったFIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップに照準を合わせている。そんな状況下で行われるショーン・ホワイト主宰のハーフパイプ・プロリーグ「THE SNOW LEAGUE」は、オリンピックとは直接関係しない。それでも今日、“命を削り合う”パイプバトルが繰り広げられた。
第2戦の舞台は、中国・シークレットガーデン。平野歩夢が初の金メダルを獲得した北京五輪と同じ会場で、米コロラド州アスペンで行われた第1戦に続き、日本勢が表彰台を独占した。優勝は平野歩夢、2位に戸塚優斗、3位には山田琉聖という、再び歴史的な快挙。その内容は、ただのワンツースリーではない。過去のコンテストを大きく更新するレベルの、常軌を逸した戦いだった。
ファイナルズ・デイは、予選を勝ち上がった8名によるヘッド・トゥ・ヘッド(トーナメント)方式。準々決勝、準決勝、決勝ともに3本のランが行われ、ベストポイントを採用するルール。しかも3本のうち、必ずフロントサイドとバックサイドの両サイドからドロップインしなければならない。
歩夢は重野秀一郎、アメリカのアレッサンドロ・バルビエリを破り決勝へ。戸塚優斗は韓国のイ・チェウン、山田琉聖を撃破して歩夢と対峙することになった。
先行の優斗が放った1本目。世界中のスノーボーダーが凍りついたであろう。スイッチBSダブルコーク1260→CABトリプルコーク1440→FSダブルコーク1620→BSダブルコーク1260とつなぎ、ラストヒットのFSダブルコーク1440へ向かう。しかし、パイプエンドに近づくにつれ壁が低くなるため、ランディングを合わせるのは極めて難しい。頭を叩きつけるような形で着地に嫌われた。歩夢はミスのないランで1本目を先取。
2本目、歩夢が先行。このランを取れば優勝が決まる。ファーストヒットは、今シーズンから投入したスイッチバックサイドスピン。予選の900から一段階引き上げ、1260で入る。その勢いのままCABダブルコーク1440、そして北京五輪から隠し持ってきたFSダブルコーク1620を繰り出すも転倒。優斗が取り返し、勝負は振り出しに戻った。
そして迎えた運命の3本目。優斗は1本目と同じ究極のルーティンを再び試みたが、やはりラストヒットで壁が足りず。スイッチBSダブルコーク1260からCABトリプルコーク1440を繰り出し、さらにFSダブルコーク1620へつなぐという現時点で公式大会における“世界最高難度”と言って差し支えない演技構成である。しかし放物線が大きくなることに加え、超高難度なトリックを連発するだけに着地時のわずかな谷側へのズレが致命傷となった。全長170~180mの世界最高規格のハーフパイプですら受け止めきれない。もはや運営側の想定を超えた滑りだったと言える。
その様子を見届けてから歩夢がドロップインした。優勝を決めた直後のインタビューで「攻めきれなかった」と語ったように、大技は封じることに。それでも爆発的なエアの高さとクリーンな滑りでまとめ、SNOW LEAGUE初優勝をつかんだ。歩夢は壁がほとんど見えないほどの状況だったこと、そして優斗とともに身体を痛めており、3本目は正直滑りたくない状況だったと明かした。通常の大会ではファイナルで2本、もしくは3本のランで勝敗を決する。ミスしたら致命傷を負うかもしれないハイレベルなランを、いつもの倍以上滑っているのだからなおさらだ。また、ショーン主宰の大会で第1回は結果が出せなかったこともあり、今回の勝利を素直に喜んでいた。
3位決定戦は琉聖とアレッサンドロ。1本ずつ取り合い迎えた3本目、琉聖はダブルマックツイスト1080→スイッチマックツイスト→CABダブルコーク1440→FSダブルコーク1080とつなぎ、最後はスイッチBSアーリーウープ・ダブルロデオ1080の着地で耐えきった。アレッサンドロはラストヒットでミスし、琉聖が3位に輝いた。決勝ラウンドと3位決定戦は同時進行で行われていたため、この時点で日本人ライダーの表彰台独占が確定した。
女子は小野光希と中国の14歳、パティ・ジョウが決勝ラウンドへ。光希はFS900→BS900→FS720→CAB720→FS1080と高難度トリックを並べたが、FS1080でわずかに回転が足りず。対するパティは、FS1080→CAB540→スイッチBS900→FS720→CAB720を安定してメイクし、圧巻の勝利。FIS大会にまだ出られない年齢ながら、その完成度は世界トップレベルだった。
3位決定戦では、第1回大会の女王・冨田せなを工藤璃星が破った。BS540→FS900→BS900→FS720→CAB720とつなぎ、連続900を軸に高得点をマークした。
こうしてSNOW LEAGUE第2戦は幕を下ろした。翌週にはワールドカップ開幕戦が控えている。この厳しい条件のなかで、“世界最高レベルのパイプバトル”を魅せてくれた全ライダーに敬意を表したい。
男子結果
1位 平野歩夢(日本)
2位 戸塚優斗(日本)
3位 山田琉聖(日本)
4位 アレッサンドロ・バルビエリ(アメリカ)
女子結果
1位 パティ・ジョウ(中国)
2位 小野光希(日本)
3位 工藤璃星(日本)
4位 冨田せな(日本)
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




