BACKSIDE (バックサイド)

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「滑り続ける理由」を問うた2年間。BURTON × RED BULL『PAVED』が描くスノーボードの本質

2025.11.05

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11月7日(金)の一般公開が目前となった『PAVED』。BURTON(バートン)とRED BULL MEDIA HOUSE(レッドブル・メディアハウス)が2年を費やして制作したムービーであり、BURTONからリリースされる長編作品としては実に4年ぶりとなる話題作だ。
さる10月11日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催されたワールドプレミアには、代表的な出演ライダーであるベン・ファーガソン、ダニー・デイビス、ミッケル・バングに加え、日本の若き才能・大塚健と、グローバルで活躍する片山來夢のふたりが登場。世界を舞台に自己表現を続けるライダーたちが、それぞれの2年を振り返る貴重な時間となった。
 

上映後に設けられたトークセッション。5人のサイン入りボードのプレゼント会も行われ、ワールドプレミアは大盛況のうちに幕を閉じた

 
本作のテーマは「仲間とともに雪山で過ごす時間」。ライディングだけでなく、スノーボーディングを通して紡がれるライダーたちの人間模様にもフォーカスが当てられている。トークセッションや弊メディアのインタビューで見せた彼らのリラックスしたやり取りは、この2年間の旅が彼らにとって単なる「撮影」ではなく、かけがえのない「セッション」であったことを如実に物語っていた。
この2年間、ライダーたちはどんな時間を過ごしたのか。ベンは振り返りながら、こう語ってくれた。
「スノーボードって、“仲間と一緒に雪上にいること”そのものだと思うんだ。今回も本当に最高のクルーに恵まれて、撮影がとにかく楽しかった。自然と最高の空気が生まれていった感じだったね」
 

カナダでの撮影の際にベン(左)とともに過ごした健。コンテストシーンを離れ、本格的な撮影は1年目だったはずだが、「憧れのライダーたちとバックカントリーで滑るのは刺激的で、学びの連続でした」と頼もしいコメントを残してくれた
photo: So Hasegawa / Red Bull Content Pool

 
 

『PAVED』をひと言で説明すると?という問いかけに対して、「オレたちクルーがやりたいことをすべて実現させてくれたムービー。まさにクルー全員で作り上げた、理想のムービーだよ」とまとめたダニー

 
本作は、BURTONのチームライダーが14名出演している。大所帯でありながら、いずれもシーンを牽引する立場にある個性派揃いのトッププロばかりだ。それだけに、どのようにしてチーム間に「最高の空気」が生まれたのか。
ダニーは次のように語った。
「それぞれの役割が撮影ごとに変わっていったと思う。レイクタホにいたときは、オレがキャプテンみたいな感じだった。でもカナダでの撮影のときは“パッセンジャー(乗客)”だったし、本当に場所によるんだ。もし日本にいたら、たぶん來夢や健を頼りにしただろうしね」
ベンもライダーたちが共通して持つマインドセットについて、こう続ける。
「みんなチームの一員という意識だった。ときには一歩引いて盛り上げ役に徹することもある。そのスポットを一番やりたがっているライダーがストンプするべきだから」
『FLEETING TIME』にて主演兼監督を務めたベンの言葉だからこそ、そのチーム論には重みがある。スポットをもっとも知る者がイニシアチブを取り、もっとも燃えている者がストンプする。決してひとりでは成し遂げられないバックカントリーでの撮影だからこそ、ライダーたちの人間模様が浮き彫りになるのだ。
 

左からベン、健、ミッケル、ダニー、來夢。彼らを含む出演ライダーたちの2年間の軌跡が、背後のボードにも描かれていた

 
世界最高峰のライダーたちと肩を並べて出演を果たした來夢と健。ムービースターたちと過ごした2年の時間は、彼らに何をもたらしたのだろうか。
來夢は「自分の中でストレスが溜まる撮影も多かった」と悔しさを吐露しつつも、「ベンは世界で最高のライダーのひとりだと思っています。そんなベンに近づきたい、追い越したいっていう想いがオレの中に大きくあって。ライバルとは言わないですけど、越えてやりたいひとりではあります」と、最大級のリスペクトを込めて語った。
さらに、今作でもっとも印象的だったライダーとしてダニーの名を挙げ、次のように本音を漏らした。
「(ダニーにとって)ひさびさのシューティングだったと思うんですけど、正直『ARK』(ダニーが監督・主演を務める2022年にリリースされた映像作品。來夢も出演)よりもいいライディングをしていて、すごく鳥肌が立ちました」
來夢は健を含む仲間とともに新クルー「SKETCHY SUNCA」を立ち上げ、この秋にはデビュー作『IGNITE』をリリースした。ベンやダニーに強烈なリスペクトがあるからこそ、彼らに喰らいついていくため、自身の経験を積むため、日本のレベルを底上げするため、こうした道を選んだ。その決断に至る物語が、この2年の間に巻き起こっていたのだ。
いっぽうの健は、表現者としてスタート地点に立ったばかり。「まだ山のことを理解しきっているわけではないから、コンテストとは違う、何が起こるかわからないっていう怖さが常にあった」としながらも、「ライダーとして、今後は自分がメインで動いて作っていくムービーがほしいです」と、意欲的な姿勢を見せてくれた。
 

健(左)と來夢は昨シーズン、高橋龍正、今井郁海、宮澤悠太朗ら「SKETCHY SUNCA」のメンバーたちとバックカントリーで格闘した。競技者を経て表現者へ。彼らの成長が楽しみだ

 
2年の制作過程に様々なドラマが秘められている『PAVED』。2002年からBURTONライダーとして活動し続けてきたチームの柱、ミッケルは本作を観てくれた人へのメッセージとしてこう語った。
「僕らが滑り続けるのは、スノーボードを愛しているから。これからもこういったムービーを通して、みんなにスノーボードの可能性を示し続ける。もしスノーボードを愛していて、やりたいことのビジョンがあるなら、その夢を追いかけてほしい。とにかくそれを追いかけ続けるんだ」
 

ミッケルは自身のキャリアを振り返りながら、「僕はスノーボードを常に面白いものにしてきた。進化し、新しいことに挑戦し続ける。だからいつも新鮮で楽しい。スノーボードが大好きなんだ」と語った

 
この言葉を受けてダニーも、アラスカでの体験をもとにメッセージを残してくれた。
「バルディーズにいたとき、雪が全部終わったように思えた瞬間があった。それでもフィールドは広大だから雪を追い求め続けて、エンディングにも出てくるジャンプセクションを見つけたんだ。コンディションが最悪に思えても、探し続ければきっと何か見つかる」
フレッシュパウダーが降り積もったセクションで、見渡す限りの雪面がボードで踏まれて平らになるまで、隅々まで遊び尽くされた状態。それが本作のタイトル『PAVED』(「舗装された」の意)の意味だ。
一枚の板に跨って自己表現を続ける彼らが世界中の雪山を“PAVED”する様子は、11月7日(金)よりRed Bull TVにて全世界で無料配信がスタートする。お見逃しなく。

text + photos: Yuto Nishimura
eye-catching photo: So Hasegawa / Red Bull Content Pool

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